それは小さな港町の大きな誇りだろう

 それは小さな港町の大きな誇りだろう。徳島県の旧海部町(現海陽町)は、日本で最も自殺が少ないことで知られる▼自殺率最少の「なぜ」を探して同地区に通い詰めた研究者がいる。「情報・システム研究機構 統計数理研究所」特任准教授の岡檀さん。4年間で約200人にインタビューし、答えにたどり着いた。それは地域が育んできた「生き心地の良さ」だった▼先週都内であった国際協同組合デーの記念中央集会で、岡さんが研究成果を報告した。太平洋を臨む海部地区は、高齢化が進む人口3000人ほどの田舎町。一番の特徴は、緩やかな人間関係。近隣に目は配るが過度な干渉はしない。岡さんによると、「絆」が強く関係が緊密な地域ほど、悩みを打ち明けにくい傾向にある▼海部には「病は市(いち)に出せ」ということわざが伝わる。悩み事は1人で抱え込まず、周囲に打ち明け、早めに対処しろと先人は諭した。「一度目はこらえたれ」もよく使われるという。誰でも失敗する。また次に頑張ればいい。そんな周囲の寛容さがあれば、追い詰められることもない▼さらに勇気づける言葉が「おまいにもできることがある」。誰にも必ず何かしら出番と役割がある。生きづらい自殺大国にあって、海部の教えは生きる知恵を授けてくれる。 
 

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