食品通販3%拡大 ショッピングサイト増 消費者「生活圏にないもの購入」
2019年07月19日

食品を通信販売で購入する人が増えている。2018年度の市場規模(見込み)は前年度比3・3%増の3兆7138億円だったことが、民間調査会社の矢野経済研究所の調べで分かった。個人の食品に対するニーズが多様化しており、同社は「生活圏内に欲しいもの、必要なものがない場合は通販で買うという消費マインドが強まっている」と分析する。
食品通販の分野では、インターネット上のショッピングサイトが年々、増加。さらに、ショッピングサイトやネットスーパーの各社が、物流基盤を強みとする事業者と連携して販売体制を強化するなど、消費者の利用を促す動きが進んでいる。
市場を業種別に見ると、トップは班配や個配で対応する生協で、38・7%のシェアだった。ショッピングサイトでの購入は38・4%とほほ横並びだ。従来、食品は店頭で確認して購入する消費者が多かったが、近年は通販の需要が拡大した。「19年度にはショッピングサイトが生協を上回りそう」(同)と予測する。
また、食品メーカーからのダイレクト販売(直販)は16・2%、ネットスーパーは3・8%、自然派食品宅配は2・2%だった。
同社は、各社の競争が激化する中、各種サービスの導入で顧客の奪い合い囲い込みが続いていると分析。「19年度以降も2、3%前後の伸長率で緩やかに拡大する」とし、22年度の国内市場は小売金額ベースで4兆円を超えると予測する。
食品通販の分野では、インターネット上のショッピングサイトが年々、増加。さらに、ショッピングサイトやネットスーパーの各社が、物流基盤を強みとする事業者と連携して販売体制を強化するなど、消費者の利用を促す動きが進んでいる。
市場を業種別に見ると、トップは班配や個配で対応する生協で、38・7%のシェアだった。ショッピングサイトでの購入は38・4%とほほ横並びだ。従来、食品は店頭で確認して購入する消費者が多かったが、近年は通販の需要が拡大した。「19年度にはショッピングサイトが生協を上回りそう」(同)と予測する。
また、食品メーカーからのダイレクト販売(直販)は16・2%、ネットスーパーは3・8%、自然派食品宅配は2・2%だった。
同社は、各社の競争が激化する中、各種サービスの導入で顧客の奪い合い囲い込みが続いていると分析。「19年度以降も2、3%前後の伸長率で緩やかに拡大する」とし、22年度の国内市場は小売金額ベースで4兆円を超えると予測する。
おすすめ記事

[岡山・JA岡山西移動編集局] 豪雨被災から1年5カ月 営農再開へ一歩 果樹産地の総社市
2018年7月の西日本豪雨でブドウ園などの農地や農業用施設に甚大な被害を受けた果樹産地・JA岡山西管内の岡山県総社市福谷地区。6日で1年5カ月となる中、営農再開の動きが始まった。県と市の連携で氾濫した高梁川の堤防を整備し、浸水被害を受けた約3ヘクタールの園地をかさ上げする。100年続く農業に向け、地域の話し合いが進み、近く工事が始まる。JAは営農や融資相談で復興を後押しする。異常気象のリスクが高まる中、災害に強い地域農業のモデルとして注目が集まる。(鈴木薫子)
次代に継に向け 堤防整備、園地かさ上げ
同地区は県内有数のブドウの早期加温栽培産地。しかし、園地には、ビニールが剥がれ、骨組みがあらわのハウスや、川から流れてきた大きな岩が目立つ。堤防の決壊で農地の浸水や施設が倒壊。今も園地は豪雨被害発生時のままだ。
県は同地区で約2キロにわたる高梁川の堤防整備に乗り出した。道路から1、2メートル上げる計画で下流側から用地取得を進めている。同地区の他、高梁川に隣接する4地区で計約5キロの堤防を整備。近く工事に着手し、22年度内の完了を目指す。
園地整備は同市が担当する。堤防から下の園地を3、4メートルかさ上げし、堤防と同じ高さにする方針。整備範囲は上流約600メートルで園地は約3ヘクタール。河川などの残土で埋め立て、栽培用に上層60センチはきれいな土で埋め立てを計画する。復旧には、JA担当者も営農再開に向け密に情報交換をする。
ブドウや桃の生産者22人でつくる福谷果樹組合は、被災した18年産売上高は前年産比2割減の6500万円。19年産は上向いたが、被災前水準には達していない。
ブドウ「マスカット・オブ・アレキサンドリア」などを栽培する同組合の温室ブドウ部会の仮谷昌典部会長は、経営面積の半分の10アールでハウス3棟が倒壊。被害を免れたハウスとの距離は30メートル。半分の土地で収益を高めようと栽培に励む。54歳の仮谷部会長は「80代まで農業を続けたい。今が踏ん張り時。復旧に時間がかかるのは覚悟の上で、次世代のために災害に強い農業を復活させたい」と強調する。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月03日
街を歩けば、掲示板の何と多いことか
街を歩けば、掲示板の何と多いことか。標識、標語、宣伝。つい見てしまうのが、お寺の掲示板である▼近くの寺は、ほぼ毎月、更新する。「自分が変われば相手も変わっていく」「実践こそ現状を変える」。説教臭くもあるが、妙にしみる時もある。気になる存在だと思っていたら、なんと「輝け!お寺の掲示板大賞」なるものがあった▼仕掛け人は、仏教伝道協会の江田智昭さん。聞けば、昨年7月、お寺の掲示板の写真の投稿を呼び掛けたのが始まり。4カ月で約700作品が集まった。2018年の大賞は「おまえも死ぬぞ」。お釈迦(しゃか)様こと釈尊の教えだとされる。生と死の本質に迫り、インパクトは絶大。これで認知度が高まった▼掲示板の言葉は、仏の教えから人生訓、著名人の名言までさまざま。寺の個性がにじみ出る。「掲示板はお寺と一般の人の境目にあり、双方をつなぐ存在」と江田さん。今年は925作品が寄せられた。5日に発表された大賞は「衆生は不安よな。阿弥陀動きます」。松本人志さんの「後輩芸人たちは不安よな。松本動きます」をもじったもの。全ての生き物の身を案じた阿弥陀仏の教えを伝えた▼衝撃を受けたのは、大分の寺に掲げてあった一言。「ばれているぜ」。深くて怖い。官邸前に張り出したい。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月06日

マルシェで復興PR 台風被害のかんきつ販売 千葉・JA安房
千葉県の館山市、鴨川市、南房総市、鋸南町を管内に持つJA安房は5日、東京・大手町のJAビルで、台風や大雨の被害を受けながらも頑張る農家を応援するため「安房みかん復興支援マルシェ」を開いた。同県の支援を受け、JAグループも協力。打撃を受けた産地の農産物をPRして、復興を後押しした。
台風の影響で傷ついたミカン17ケース(1ケース10キロ)やレモン400個、ユズ300個を用意。管内の生産者やJA職員が産地の情報を説明しながら販売した。被災した園地の現状や復興の取り組み、農産物の魅力を伝える動画を消費者が見ながら農産物を購入。用意したミカンなどは、販売開始から約2時間で完売した。
南房総市のミカン農家、井上栄一さん(70)は「応援を受けると、また頑張ろうという気持ちになる」と農産物や地域の魅力を消費者に話した。
JA管内は9、10月と相次ぐ台風と大雨の影響でハウスが倒壊し、果樹の落下や倒木など、大きな被害を受けた。JA調べでは、管内の農業施設や農産物の被害額は約50億円(11月30日現在)。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月06日

柿じまん 富山県朝日町、入善町
富山県朝日町と入善町の農家女性でつくるグループ「美の里じまん」が製造するドレッシングタイプの調味料。朝日町産の柿「刀根早生」を熟成させて造った柿酢にしょうゆをブレンドし、ユズ果汁などを加えた。おひたしや豆腐料理に掛けて食べるのがお勧め。
朝日町の南保柿出荷組合の女性らから、2013年に同グループが製造を引き継いだ。地元の宿泊施設や学校給食などにも使われている。
1瓶(180ミリリットル)411円。入善町にあるJAみな穂の農産物販売加工施設「みな穂あいさい広場」や両町のスーパーで販売している。甘さを抑えたタイプもある。
問い合わせはみな穂あいさい広場、(電)0765(72)1192。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月04日

中小規模に配慮を 畜酪対策で決議 衆参農水委
衆参農林水産委員会は5日、畜産・酪農対策を中心に一般質疑をした。対策取りまとめに向けて、関連補給金は中小規模や家族経営の意欲喚起も考慮して決定することなどを政府に求める決議を全会一致で採択した。江藤拓農相は、関連対策の畜産クラスター事業の要件緩和に前向きな考えを示した。豚コレラ(CSF)の殺処分に伴う手当金の非課税化については、過去の事例を踏まえて議員立法を提起した。
決議では加工原料乳生産者補給金・集送乳調整金の単価や総交付対象数量、肉用子牛生産者補給金の保証基準価格は、中小・家族経営を含む酪農家の意欲喚起を考慮して決定するよう要望。畜産クラスター事業などは、中小・家族経営にも配慮しつつ、地域一体の機械導入などを強力に支援するよう求めた。
畜産クラスター事業の規模拡大要件について、江藤農相は中小規模、家族経営にとって「大きなハードル。重要な政策課題だ」と指摘。地理条件などで規模拡大が難しい農家らへの支援を検討する方針を示した。
加工原料乳生産者補給金の単価決定に向け、江藤農相は環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)、日米貿易協定を踏まえ、「農家の不安に寄り添わなくてはならない」と強調。「財務(省)と、しっかり交渉をやらせていただく」と単価水準確保に力を入れる考えを示した。共産党の紙智子氏への答弁。
豚コレラ発生農家には家畜伝染病予防法(家伝法)に基づき、全頭殺処分を求め、殺処分した豚の評価額と同等の手当金を支払う。ただ手当金は所得税の対象。経営再開の財源確保のため、非課税化を求める声は多い。
口蹄(こうてい)疫の発生時は、議員立法による措置で非課税となった。江藤農相は、現在の法的状況下で非課税にするのは不可能としつつ、「もう一回議員立法でやっていただければ法的には可能」と述べ、与野党議員に検討を提起した。国民民主党の関健一郎氏への答弁。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月06日
経済の新着記事
担い手サミット開幕 きょうまで静岡
第22回全国農業担い手サミットinしずおかが5日、静岡市で始まった。認定農業者ら2000人が参加し、先端技術の導入や、食料自給率の向上、農業の持続的発展などに取り組むとしたサミット宣言を採択した。6日まで。
県、JA静岡中央会などで組織する実行委員会と全国農業会議所が主催。寛仁親王妃信子さまが「農業に携われる方々が絆を深め、活力ある農業の実現に向けて力強く発展することを願います」とあいさつされた。
大会会長を務める静岡県の川勝平太知事は「農業を担う人材不足は全国的な課題になっている」と述べ、スマート農業の開発や普及を進めていくことを伝えた。
県内の担い手4人がメッセージを発表。直接販売に取り組み、経営改善したり、豚の人工授精液生産を続けたりする今後の経営や農業振興への思いを訴えた。事例発表では担い手らが、6次産業化や農産物の海外輸出について議論を交わした。
全国優良経営体の表彰があり、加藤寛治農水副大臣が農林水産大臣賞を受賞した12経営体に賞状を贈った。
6日は、県内7地域の38会場で現地視察と情報交換会を開く。次回の開催は茨城県。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月06日

豚肉在庫が最多水準 9月時点3割増に 輸入多く国産苦戦
豚肉の在庫量(輸入含む)が過去5年の最多水準に積み上がり、国産相場の不安材料になっている。中国でまん延するアフリカ豚コレラ(ASF)の影響で国際相場に不透明感が増していることや、大型貿易協定で関税が下がったことで、食肉メーカーや商社が輸入品の調達を強めているためだ。国産は加工向けの下位等級を中心に需要を奪われ、苦戦を強いられている。
農畜産業振興機構のまとめによると、9月時点の推定期末在庫量は、前年同期比3割増の21万8205トン(国産品が同13%増の2万351トン、輸入品は同32%増の19万7854トン)。近年の在庫量は約17万トン前後で推移しており、過去5年で最多水準だ。
豚肉の国際相場は、世界最大の豚肉消費国である中国でのアフリカ豚コレラの拡大で、引き合いが強まった欧州産を中心に高値基調が続いている。大手食肉メーカーは「これからもう一段上げる可能性があり、高騰する前に調達を強めている」と明かす。
在庫過多の輸入品に押され、国産品にも影響が出ている。「国産、輸入ともに、裾物の在庫が多く、国産は加工筋などで需要を奪われている」(大手メーカー)という。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入品の関税が下がったことも、国産品の価格面での競争力に影を落とす。
国内生産量(と畜頭数)は、今年度上半期の累計が約788万頭で前年同期比ほぼ横ばい。しかし消費は鈍く、在庫が積み上がる状況だ。
全国指標となる東京食肉市場の29日の豚枝肉価格は1キロ459円(上物平均)で前年並み。一方、格付けで最も低い「等外」は300円台半ばで6月以降、前年を下回る取引が目立つ。
「10月以降、出荷量が例年以上に多くなっている」(市場関係者)など、この先は不安材料が多い。豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通も始まった。現状、目立った混乱は見られないが、取引動向には注視が必要だ。
大手食肉メーカーは「安価な輸入品に押され国産が苦戦する状況は長期的に続くだろう」と見通す。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月02日

特産エダマメビールに加工 秋田・大館市 観光地域づくり法人発案
秋田県大館市特産のエダマメを副原料に使ったクラフトビール「秋田枝豆ビール」が登場した。地元の日本版観光地域づくり法人(DMO)秋田犬ツーリズムが発案し、同市産のエダマメを原料に供給。委託醸造を経て、酒類販売業のルーチェ(東京都大田区)が地元スーパーや首都圏のデパートなどで11月から販売している。同法人は同市産エダマメの知名度のアップと消費拡大を狙う。
同法人は市内の農家が朝に収穫したエダマメを仕入れ、ペースト状に加工し「田沢湖ビール」(秋田県仙北市)に供給し、ビールに醸造してもらう。後味にエダマメの風味が残るのが特徴だ。ラベルには、秋田犬がエダマメを食べているイラストを採用した。
同法人の大須賀信事務局長は「大館のエダマメは知名度がまだ低く、取引価格が伸び悩んでいる。ビールを通してブランド力を高めたい」と期待する。イベントで先行発売した際には、用意した500杯が完売するなど関心を集めた。
1瓶(330ミリリットル)700円(税別)。大館駅前の観光施設「秋田犬の里」や市内のスーパーで販売している他、東京・新宿のデパートでも扱う。今年度は5700本を販売する予定。飲食店向けに、たる詰めでの出荷も検討している。
秋田県では近年、転作作物としてエダマメの生産が盛ん。8~10月には、東京都中央卸売市場で1位の取扱量を誇る。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月01日

世界都市農業サミット開幕 体験農園の魅力実感 5カ国が参加 東京都練馬区
東京都練馬区が主催する世界都市農業サミットが29日、同区で始まり、参加する5カ国(米国、英国、カナダ、韓国、インドネシア)の都市の行政関係者や専門家ら15人が区内の農業体験農園や観光農園、直売所を視察した。サミットは12月1日まで。
参加都市はニューヨーク、ロンドン、トロント、ソウル、ジャカルタ。都市農業の魅力と可能性を学び合い、発展の場にしようと区が初めて開いた。
参加者は区内でキャベツやネギを栽培する高橋正悦さん(68)の畑を訪問。高橋さんは「近隣の人とは直売所で新鮮な野菜を買ってもらい、良好な関係だ」と話した。
加藤義松さん(65)が運営する体験農園「緑と農の体験塾」も訪れた。加藤さんは「野菜の栽培方法を示すことで、初心者でもプロ並みの野菜が作れる」と説明した。
視察した韓国・ソウル特別市の都市農業課長は「体験農園の活性化について知見を深めたい」と述べた。インドネシア企業の植物防疫研究所長も「日本の都市で市民主体の農業が営めているのは興味深い」と、農園をカメラで撮影していた。
区の毛塚久都市農業課長は「都市の中に農地が必要という方向性は各国共通だと思う。サミットを機に世界の都市農業の発展につながれば」と期待する。
30日と12月1日に国際会議を開き、「サミット宣言」をまとめる予定だ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月30日
無洗米 SDGsに貢献 国連会議で東洋ライス
米の総合メーカー・東洋ライス(東京都中央区)は27日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人権などに関する国際会議に参加し、同社の米の加工技術による環境や健康への貢献と、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)との関わりについて報告した。同社によると、日本の企業がSDGsについて国連で報告するのは今回が初めて。
会議は25~27日までの日程で開かれ、世界約190の国と地域から3日間で約2000人が参加した。
同社が独自に開発した「BG無洗米」の普及で、下水処理などで発生していた二酸化炭素(CO2)の排出量をこれまでに50万トン以上削減したことなどを紹介。加工過程で取り除いた米のとぎ汁成分を有機質資材として活用し、循環型農業を実現していることなども説明した。日本の主食である米に関する多様な事業を通じ、「気候変動に具体的な対策を」など、17項目を掲げるSDGsの目標のうち、14項目に寄与していることを報告した。
雑賀慶二社長は「(今回の報告を)日本の農業や米の文化が、SDGsの取り組みとつながっていることを国際社会に発信するきっかけにしたい」と話した。(ジュネーブ斯波希)
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月29日

汚泥肥料、ハウスの熱源、農業用水… “下水パワー”発揮 国交省と公共団体が推進チーム
全国各地で、下水道から発生する汚泥やメタンガス、再生水を農作物の栽培に有効活用し、ブランド化する自治体が増えてきた。国土交通省などは下水道を生かした農作物を「じゅんかん育ち」と名付け、地域と共に安全性や効果の分析、周知を行う。タマネギやニンニクなど“下水道パワー”で多様な農作物が育ち、食に大きく貢献している。
安全実証、広がる活用
汚泥や再生水の中には農業に欠かせないリンなどが含まれ、肥料にしたり、処理水を農業用水に活用したり、発生する熱や二酸化炭素(CO2)をハウス栽培の熱源として活用したりできる。下水道由来の肥料は、葉の成長を促す窒素の含有量が高いことが特徴だ。
同省は2013年から地方公共団体と「BISTRO下水道推進戦略チーム」を結成し、“下水道×農業”の普及を進めてきた。科学的に安全であることも実証されており、下水道法では現在、下水汚泥再生の努力義務が課せられる。
ただ、課題は下水道のイメージの悪さだ。そこで同省では名称を公募。現在は、人が排出した下水を作物の栽培に利用して再び生かすなど、食の循環に貢献することから「じゅんかん育ち」としてPRする。
同省によると、下水道から発生する汚泥は18年度で242万トン。そのうち肥料や土壌改良材に生かされる「緑農地利用」は14%に上る。処理水は18年度で155億立方メートル。全国各地で「じゅんかん育ち」食材が生まれている。
土壌改善、食味向上も
酪農が盛んな北海道標津町。役場は乾燥させた汚泥を農家に配布している。受け取った農家は窒素の含有量が比較的少ない牛ふんを混ぜた混合肥料を作り、牧草地の肥料にしている。同町汚泥肥料研究会によると、汚泥肥料の方が従来の化学肥料に比べて牧草の生育が良好で、窒素化学肥料の使用量も従来の3分の2まで減らすことができた。土壌中の栄養成分も増え、搾乳量の増加や肉質向上にもつながったという。
秋田県大仙市の上野台堆肥生産協同組合は、下水道由来の汚泥を発酵させた肥料「アキポスト」を製造・販売する。15年度の販売量は475トンで、全量を県内で売る。稲作を中心にそば、エダマメ、ホウレンソウなどの肥料として使われている。
アキポストを使う水稲農家の中には「米・食味鑑定コンクール」で米の味や色つやなどが評価され、5年連続で「ベストファーマー認定」を受けた農家もいるほどだ。一方で、安全性や効果の周知はさらに必要で、下水道の汚泥と聞くだけで否定的な反応をする人も少なくないという。
同組合の山岡和男専務は「適切な処理を施せば、汚泥は素晴らしい肥料になる。何より行政の後押しが必要だ」と訴える。
5ヘクタールの農地で枝豆を作る大仙市の農家、鈴木辰美さん(72)はアキポストを10年ほど利用する。「エダマメの味が良くなった気がする。糖度も上がり、甘くておいしいと評判だ」とうれしそうだ。
印象の改善や 管理周知必要
下水道資源による特産品の栽培や、循環型農業を学ぶ体験授業なども広がっている。一方で、製造方法によっては特有の臭気が気になる他、牛鶏ふんとの混合や攪拌(かくはん)する作業の手間、イメージの悪さなどの課題も残る。
東京農業大学の後藤逸男名誉教授は「国や地方自治体が農家に向けてガイドラインの作成や、効果や適切な管理方法の周知に力を入れていくべきだ」と指摘。また、再生エネルギーや下水道資源の活用に詳しい長岡技術科学大学の姫野修司准教授は「農業分野にとって下水道資源の活用は可能性のある分野。自治体やJAによる普及推進活動が必要だ」と説明する。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月29日

SNS料理コン 知恵絞って“カボス映え” 大分県振興協議会
あなたなら何に絞る?──。大分県カボス振興協議会は27日、カボスを使った料理の投稿をインターネット交流サイト(SNS)のインスタグラムで募った「マイカボ選手権」の入賞作品を発表した。グランプリは、アカウント名「kiirokabosu」さんの「カボスバーガー」。ハンバーグ種にカボスを絞り、さらに皮もトッピングするなどカボス満載の一品だ。
選手権は、カボスの消費拡大を目指して初めて開いた。8、9月に募集し、756件の投稿があった。審査基準は、画期的なアイデアや、プロが見ても納得し“カボス映え”することなど。
カボスバーガーは、ハンバーガーと、カボスを餌に与えて育てた「かぼすブリ」のフィッシュバーガーの2種類。ハンバーグ種に果汁を絞ったことで、ふっくらジューシーでさっぱり仕上がったという。大人用はカボスのスライスも挟む。
特別審査員を務めた料理家の栗原心平さんは「カボス満載のハンバーガーだ。パティの肉汁にカボスが寄り添い、絶妙なうま味を引き出しそう」と講評した。協議会は「カボスの使い方が分からないと言われることが課題だ。受賞作品を紹介して消費拡大につなげたい」と意気込む。
準グランプリは、アカウント名「sakurazusa」さんの「桃とカボスのレアチーズケーキ」を選んだ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月28日

有機食品 週1回以上飲食 3割超 増やしたい1位は生鮮野菜 農水省調査
有機(オーガニック)食品が消費者に注目されている。過去1年以内に有機食品を飲食した経験のある人を対象にした農水省の調査では、「週に1回以上食べる」と答えた人が3割以上を占めた。「購入を増やしたい」品目は生鮮野菜が最多で、国産を求める割合も7割近くに上る。高い頻度で有機食品を購入する消費者がいるため、小売りは取り扱い拡充の動きを強める。
同省は8月下旬~9月上旬、1年以内に有機食品の飲食経験がある20歳以上の男女1099人を対象に、購入意向を調査した。
有機食品を食べる頻度が「ほとんど毎日」と答えた割合は5・9%。「週に2、3回」(12・1%)、「週に1回」(16・7%)と合わせ、週に1回以上食べる人の割合は34・7%に上った。年代別では「ほとんど毎日」と答えた割合が最も高かったのは40代(7・6%)だった。
家庭消費用に購入を増やしたい有機食品の品目では、生鮮野菜が59・5%と最多。続いて生鮮果実(25・8%)、パン(25・3%)、米(22・6%)だった。同省は「生鮮野菜は購入経験が多く、売り場が広がったこともあり、消費者に浸透している」(農業環境対策課)と分析する。
また、有機食品は「国産しか購入しない」「割高でもできるだけ国産を購入する」と答えた割合は米が86・2%と最多で、豆腐・納豆(77%)が続いた。生鮮野菜(67・4%)、冷凍野菜(56・6%)、生鮮果実(54・7%)と青果物に国産を求める声も強い。
有機食品のニーズに応えようと、小売りは供給体制を強化。イオングループで有機食品などの専門店を展開するビオセボン・ジャポンのスーパー「ビオセボン」は今年、6店舗を新たに構え、首都圏の総出店数を14店舗に拡充。「安全・安心な食品を求める子育て世代をターゲットに出店を増やしている」と同社。
イオンは10月、生産者の有機JAS認証取得や物流、販売を支援する提携制度「イオン オーガニック アライアンス(AOA)」を始めた。生産者の負担軽減と、青果物の安定供給を図る。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月26日

銘柄ネギ“競演” 14府県22産地PR 千葉で全国サミット
全国各地のネギが一堂に会する「全国ねぎサミット」が23日、千葉県松戸市で開幕した。14府県22産地からブランドネギが集まり、魅力を伝えるPR合戦や直売、試食などを実施。家族連れなど大勢の人でにぎわった。安全・安心なネギの供給を続けることなどをまとめた「ねぎサミット宣言」を発表した。24日まで。
同市や千葉県のJAとうかつ中央などでつくる実行委員会が主催。同JA経営管理委員会の秋元篤司会長は「大雨後の播種(はしゅ)で芽が出にくくなるなど困難があったが、生産者の努力で出荷物がそろってきた」と強調した。
「産地PR合戦」では、各地のブランドネギの由来や味の特徴をアピール。ネギの直売の他、芋煮などの試食販売も用意した。
開催地の同市からは3種類のネギが出品された。特に矢切地域で栽培する白ネギ「矢切ねぎ」を丸ごと炭焼きにした料理に人気が集まった。上矢切●出荷組合の川村博文組合長は「台風や大雨の被害も出たが、鍋物需要の高まる時期に向け安定した出荷を続けたい」と意気込んだ。
市内から訪れた中村友一さん(32)は「青森や山形など普段手にしない産地のネギを購入した。レシピももらえたので食べるのが楽しみ」と笑顔を見せた。
同サミットは2010年から各地で開催しており、今年で10回目。次回は山形県新庄市で開催する。
編注=●は○に矢
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月24日
店頭表示 国が監視強化 市場価格 影響なし ワクチン接種豚流通
豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通が始まっていることを受け、江藤拓農相は22日の閣議後会見で、不適切表示の監視を強める考えを示した。今後、小売り段階での流通が本格化することを見据え、「店頭の動向はこれから。しっかりサーベイランス(監視)する」と強調した。
監視については、不適切な表示の防止に向け「出だしが肝心」と指摘。「ワクチンを接種していない」「接種地域の中のものではない」などの不適切な表示がないか「しっかり監視する」とし、週末にかけて徹底的に店頭を見ていくよう同省職員らに指示した。消費者庁とも連携しながらチェックする方針を示した。
18日以降、各地の市場でワクチンを接種した豚の取引が始まる中、「卸売段階での取引価格は先週を上回っている。これまでのところ、ワクチン接種豚と非接種豚で価格差は見られない」と指摘。現時点で価格に影響は出ていないとの認識を示した。
各食肉卸売市場では、安定した取引となり、相場に大きな動きは出ていない。
群馬県食肉卸売市場では19日から、ワクチンを接種した豚の取引を開始。県によると、21日までの上物平均価格は471円で、前週の464円からほぼもちあいだ。「価格が下がることがあっては問題だが、今のところ大きな変動も風評もない」(畜産課)と胸をなでおろす。
18、19日に取引のあった岐阜市食肉地方卸売市場でも、価格に大きな動きは見られなかった。大手食肉メーカーは「昨年9月の初発の際に比べると、取引先からの問い合わせなどもなく落ち着いている」と冷静に受け止める。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月23日