1人区で野党健闘 共通農政の議論深化を

 先の参院選で、農村部を中心とした改選議席数1の「1人区」で野党が健闘した。安倍農政への不満が根強い中、野党共闘が一定の効果を発揮した格好だ。だが、野党が政権批判票の受け皿になったとは言えない。野党は農村部での存在感を高めるべく、共通の農業政策の議論を深め、明確な対抗軸を打ち出すべきだ。

 今回の参院選では、自民、公明両党の与党が改選過半数を上回る71議席を獲得。非改選の70議席を含めて全体(245議席)の過半数(123議席)を確保した。安倍晋三首相は「安定した政治基盤の下に、しっかりと政策を進めていけという判断を(有権者に)していただいた」と強調した。

 だが、全国32ある1人区に限ると、与党完勝とは言い切れない。立憲民主や国民民主、共産などは全32選挙区で野党統一候補を擁立。10選挙区で競り勝ち、3年前の前回参院選(11勝)並みの議席を確保した。特に東北6選挙区で、野党は4勝2敗と勝ち越した。

 野党統一候補の調整は6月中旬までずれ込んだ。しかも32人の立候補者のうち現職は1人だけで、知名度が低いという課題もあった。これを考えれば、野党共闘が一定の効果を上げたと言えるだろう。

 野党健闘の背景には、農政改革や貿易自由化を進めた安倍政権への不満がある。日本農業新聞の農政モニター調査では、安倍内閣の農業政策を「評価しない」人が6割を超えた。

 とはいえ、野党が政権批判票の受け皿になり得たかと言えば、力不足というのが現実だ。今回参院選の自民の比例得票数は約1771万票。前回参院選で回復した2000万票を割り込んだ。得票率も35・4%と0・5ポイント減った。

 一方、野党の比例得票数は立憲民主が791万票、国民民主は348万票。合計1139万票で、民進党として戦った前回の1175万票に迫った。得票率合計も20・98%から22・76%に上昇した。だが、旧民主党時代の09年衆院選(42・4%)と比べると半分程度の水準で、自民一強の構図に変わりはない。

 野党が農村部で受け皿となるために必要なことは何か。まずはしっかりとした共通の農業政策を示すことだろう。戸別所得補償制度の復活という共通点はある。だが、それ以外の政策については、必ずしも明確ではない。農家が頼りないと感じても無理はない。

 もう一つ気になるのは、野党第1党の立憲民主が依然、都市型政党という印象が拭えないことだ。今回の参院選でも、他党より熱心に農村部を回る姿は見られなかった。

 野党は農村部で存在感を高めるべく、農政でもっと汗をかくべきだ。強い野党がいてこそ、国会の農政論議にも緊張感が生まれる。ひいてはそれが生産現場の声に即した、丁寧な農政運営にもつながる。
 

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