中山間直接支払い 集落守る人材育成急務

 中山間地域等直接支払制度は、2020年度から第5期対策に入る。少子高齢化、人口減が条件不利地などを直撃する中、中山間地域の集落や営農をどう支えていくのか。政府は、競争力強化に偏ることなく、多様な集落の実態を踏まえた幅広い制度とすべきだ。

 現行の第4期対策が始まった15年度、衝撃的な出来事が起きた。14年度の取り組み面積は68万7000ヘクタールあった。だが、これをピークに減少傾向に転じ、一気に65万4000ヘクタールに落ち込んだのだ。3万ヘクタール以上の減り方は制度創設以来、初めてのことだった。

 主な原因は農家の高齢化や中核となる人材の不足。このため営農を続けるのが難しいと判断し、活動を取りやめた集落も多かった。高知県は農水省の同制度に関する第三者委員会で、14年度から15年度の大幅減について、「第4期ショック」と表現し、関係者の間で衝撃が広がった。

 18年度時点の取り組み面積は66万4000ヘクタールで、回復傾向にはある。だが、4年前の過去最高水準には届かない。第5期対策で、どのような制度を設計するかによって、中山間地域農業の継続に大きな影響を与えることは間違いない。

 安倍政権は、規模拡大や生産性向上など競争力強化に軸足を置いた農政を展開してきた。だが、傾斜地などに農地が小さく点在する中山間地域での生産性向上には限界がある。競争力を高める産業政策と、中山間地域などを支える社会政策は農政の両輪であり、第5期対策では各集落が使いやすい仕組みへと思い切った改善を進めることが必要だ。

 同省は今後の課題として、最新技術を活用した「スマート農業」の普及を挙げる。最新技術による省力化を営農継続の支えとしたい考えで、人手不足が深刻な中山間地域からの期待もある。とはいえ、最新技術を使いこなせる人材が集落にいなければ、導入は宙に浮きかねない。人材育成を含めたきめ細かい支援が求められる。

 活動範囲を広域化する取り組みが増えている。単独の集落では活動が難しい場合、複数の集落で協力する。交付金の加算措置も、広域化を後押ししている。ただ、人や歴史的なつながりが薄い集落の広域化は容易ではない。各地の集落の実態や課題をしっかり検証し、さまざまな道筋を用意することも重要となる。

 幅広い意味で、人をどこまで確保できるかが最大の課題となる。後継者や集落の農業に関わる人の確保に加えて、外部人材やさまざまな形で地域と関わる「関係人口」を増やしていくことが、中山間地域の集落や農業を守るためには不可欠だ。

 安倍政権は地方創生を掲げている。第5期対策は、中山間地域の人口減を食い止め、地域農業の生産基盤を守る土台になるとの認識で進めるべきだ。

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