人手不足対策 法人の雇用力 高めよう

 人手不足が深刻だ。働き手が確保できずに会社がつぶれる「人手不足倒産」という言葉も出てきた。農業法人も例外ではない。過疎化が進む地域で経営するだけに、むしろ深刻といえる。どのように人材を集め、どのように育てるか。農業法人の雇用力を高めるような育成策が指導機関に求められている。

 民間の信用調査会社、東京商工リサーチの集計では、人手不足に関連した原因で倒産した会社数は、今年上半期で191件。上半期としては過去最高になったという。受注が伸びそうなので設備投資をする。予想通りに受注は伸びたものの労力が確保できないため、注文に応じ切れなくなる。その結果、投資分を回収できずに倒産する、という経緯が一つの典型だ。

 農業法人の中にも、農機や施設に巨額の投資をする例がある。金融機関が貸付先を躍起になって探していることもあり、投資をしやすい環境にはある。低利融資の制度資金があるとはいえ、返済計画を考えるとき、資金面だけでなく、労力面からも検討する必要が出てきた。

 岩手県畜産協会は昨年の農家の経営診断結果を受けて、規模拡大を計画する事例については今後、「生産性の向上による償還金確保の方策と併せて、労働力確保の方法についても事前に検討する必要がある」とした。設備投資などの資金を貸し付けるとき、指導機関は返済能力を吟味する。その際に、労力が確保できるのかもチェックしていこうという姿勢だ。

 労力不足は「規模拡大への大きな課題となっている」と同協会。労働力不足による賃金上昇が、生産原価の引き上げにも影響していると指摘する。東北地方の場合、震災復興事業との労力競合もあるが、他の地域でも事情は同じだ。

 全日本畜産経営者協会は今年度、全国3カ所で労働力確保に関する研究集会を開いた。「ハローワークは当てにならない」「インターネットで募集しても、最近は来なくなった」などの意見が、九州や関東地方の会場でも出ている。

 農業法人は労力を確保したいが、雇用に慣れていない。さらに、人を集める手段がない。せっかく確保できても、その人の習熟度を上げていくだけの技量を併せ持っていないと、定着しない。人材を集め、育てるノウハウの習得は、経営者自らが学んでいく必要があるが、指導機関の協力も欲しいところだ。

 最近の農業指導機関は、仕事が多岐にわたる。技術指導から経営指導に重点が移り、さらに労務管理の指導までとなると負担は大きい。そこで、まず考えてもらいたいのは、労働環境の改善だ。労働法規や職員教育の手法を経営者に教えることも大事だが、魅力的な職場をつくるところから働き掛ける方が、取り組みやすいだろう。職場環境が改善され、就職先として周囲から信頼されるようになれば、人材確保の機会が広がるはずだ。

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