[新たなバトン 世襲ではない継承へ] 課題、展望 識者に聞く

柳村俊介氏          山本淳子氏  

 各地で後継者不足が深刻な中、世襲ではない継承の課題や展望について、農研機構企画戦略本部の山本淳子上級研究員と、北海道大学大学院農学研究院の柳村俊介教授に聞いた。
 

支える環境づくり鍵 農研機構上級研究員 山本淳子氏


 第三者継承は北海道の酪農が先行していたが、他の府県でも広がってきた。ただ、継承は簡単ではない。「引き継ぐ側の技術が伴わない」「当事者同士のコミュニケーションがうまくいかない」などの課題がある。資産評価でもめるケースは多く経済的な条件は大きなハードルだ。

 うまく継承できたケースを見ると、農家や地域側が継承に向け計画的にしている。引き継ぎたい人と引き継ぐ人が並走期間を設け信頼関係を築いている。

 しかし、人間関係なので正解はない。例えば「継承後も前の農家が技術指導で応援する」というと聞こえは良いが「監視されている」とプレッシャーに感じる人もいる。

 課題解消は当事者だけではなく、行政やJAなどが支える環境づくりが鍵。精神的なケアも含めチームでバトンリレーに関わってほしい。

 合意すれば セレモニーを催し、マスコミに“お披露目”するケースがあるが、心理的な負担にならないか心配だ。相性が悪ければ他の道を探すのも手なのに、必ず成功させなければならない状況をつくれば、誰かが追い込まれる。

 まずは 地域で話し合い、後継者がいない人を掘り起こしてほしい。その際、第三者継承は選択肢の一つで特効薬ではないことも念頭に置いてほしい。農家の後継者確保は、個人ではなく地域の問題だ。

 やまもと・じゅんこ 1973年兵庫県生まれ。専門は農業経営学、消費者行動論。著書は『農業経営の継承と管理』など。
 

信頼関係構築が前提 北海道大学大学院農学研究院教授 柳村俊介氏


 全国に広がる第三者への農業継承だが、失敗事例が多いのが事実だ。第三者継承では資産の取り引きを伴う。引き継ぐ側は、情報量や技術の習熟度などで、託す側よりも立場が弱い。「出し手の都合の良いように交渉されるのではないか」という不安が生じやすく、信頼関係の構築が大前提となる。特に北海道では、大規模化で継承する資産額も増える傾向にある。

 そこで、JAや市町村など外部の組織が介在し、情報提供や双方の相談に乗ることが必要だ。継承には大きなコストや手間がかかる。この負担を出し手と受け手、地域がどのように分担するか整理しないといけない。公的機関が取り引きを仲介し、当事者として受け手が円滑に継承できる方法を探るのも一案だ。

 第三者継承だけでなく、よりコストが低い親元就農や法人化して従業員として外部人材を雇う方法などを検討することも忘れてはならない。

 他の府県では集落営農など地域内の人を生かして農業を守る姿勢が強かった。ただ、高齢化で外部から人を呼び込む必要性は全国的に高まっており、他の府県でも外部から人を入れる施設野菜の産地や集落営農の動きが出てきている。政府などの支援策も重要だ。受け手だけでなく、出し手の生活を守るための支援策を手厚くすることも求められる。

 やなぎむら・しゅんすけ 1955年兵庫県生まれ。専門は農業経営学。著書は『北海道農村社会のゆくえ』など。

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは