高齢者の医療負担 農村の生活実態反映を

 政府は、高齢者の医療費負担の増加につながる社会保障制度の見直しの方向を示した。少子高齢化への対応が目的。負担増は高齢者の生活に大きく影響する。特に農村では高齢者の所得の増加が見込みにくく、医療機関も少ない。今夏の最終報告には、農村の高齢者の生活実態を反映させるべきだ。

 一億総活躍社会を掲げる安倍内閣は、「全世代型社会保障改革」を最重要課題とし、中間報告を昨年12月にまとめた。高齢者だけではなく子どもや子育て世代、現役世代まで幅広く支えるため年金、労働、医療、介護など社会保障全体の改革の方向を検討。少子高齢化が急速に進むとともに、ライフスタイルが多様化する中で、横並び、画一的な社会システムを根本から見直す必要があるとした。

 具体的には、生涯現役で活躍できる社会に向けて、厚生年金を適用するパート労働者の範囲を拡大する。また、将来的に70歳雇用を義務化する法改正の検討も盛り込んだ。

 農村への影響が大きいのが医療だ。75歳以上の後期高齢者が医療機関で支払う負担について、現行制度は現役並み所得がある人(3割負担)を除き1割に抑えている。これを2022年度から、一定の所得がある人は2割とする方針を記した。

 また他の医療機関から文書による紹介のない患者が大病院を外来受診した場合、初診時に5000円、再診時に2500円以上の負担を求める制度がある。この負担額を増やし、対象も現在の病床数400床以上から200床以上の一般病院に拡大する。これにより、全国に105あるJA厚生連病院のうち7割が該当することになる。

 大病院への集中を防ぐには、身近なところで診療を受けられる「かかりつけ医」の普及が不可欠とする。ただ厚生労働省の直近の調査によると、無医地区に住む人は約12万4000人で大半は農村が多い道府県にある。無医地区を含め、身近に診療所などがない人にとって頼れるのが、厚生連病院をはじめとした地域の中核病院だ。農村では厚生連病院をかかりつけ医にしている人も多いという。

 このままでは、農業所得を含めて一定以上の所得があり、また、定期的に通院している農村の高齢者は窓口での自己負担額が増えかねず、社会保障改革への不安は尽きない。

 中間報告は、「近くに医者がいない」「一人で老いていく」など国民が感じる不安に寄り添うことの重要性を指摘する。農村の医師不足、孤独死、地域の消滅などへの不安も切実だ。厚労省が、再編・統合の議論が必要とする公立・公的病院を公表したことも不安をかきたてた。

 一層の負担を求める前に、社会に漂う不安を目に見える形で取り除く政策が必要ではないか。今夏の最終報告は、農村の高齢者の状況をしっかりと把握し、不安に寄り添う内容の社会保障改革案にすべきだ。
 

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