[あんぐる] 三角帽子 わらわらと人を呼ぶ わらぐろ(愛媛県西予市)

宇和盆地でわらを乾燥保存するために伝統的に作られる「わらぐろ」。高さが3メートルあり、4月下旬まで見ることができる(愛媛県西予市宇和町で)

 愛媛県西予市の宇和盆地では毎年、稲刈り後の水田に稲わらを巧みに積んだ「わらぐろ」が現れる。米産地ならではの秋から早春の風物詩として、農家が守り伝える。

 わらぐろは農耕牛に与えたり、牛舎に敷いたりするわらを保存する伝統的な手法で、「ぐろ」は「積む」「かたまり」といった意味。水田に立てた長さ5メートルほどのヒノキの棒を軸に、2週間ほど乾かしたわら束を積み重ねて築く。1個に水田10アール分を積める。

 高くなるほど束を増やしてしっかりと踏み固めるため強風にも耐える。家のような姿は、積んだわらが雨でぬれないように考えた先人の知恵だ。

 昨年11月にJR伊予石城駅前にできた14個のわらぐろは、地元農家らが結成した「笠置文化保存会」が作った。メンバーの米農家、井上勲さん(71)は「子どもの頃は、冬にわらぐろで風をしのいだり、登って怒られたりと身近な存在だった」と懐かしむ。

 宇和盆地は県内では数少ない平地で、古くからの米どころ。そのため、わらぐろも生まれたと伝わるが、機械化などを背景に1955年ごろを境に減り、ほとんど見かけなくなった。

 だが、「地域の稲作文化の象徴を守ろう」と考えた地元の農家らが2002年に保存活動を開始。地元の学生への作り方の継承活動などに取り組んだ。

 こうした活動を続けた結果、わらぐろは地域の顔として存在感を発揮するようになった。
 
わらぐろ保存の発起人の上甲さん。活動費を賄うために始めたわらクラフトやしめ縄作りは、県から表彰を受けるほどの腕前だ
 
 11年からは毎年、わらぐろやわらのオブジェが同駅前に登場。これが観光の目玉になり、地元菓子店はわらぐろ形のスイーツを発売。郵便局はわらぐろを描いた記念切手を発行するなど、地域が活気づいている。

 わらぐろ保存の発起人で元農家の上甲清さん(83)は「村じゅうにあった懐かしい風景は遠い昔だが、地域のシンボルとして将来に継承してほしい」と話す。(釜江紗英)

「あんぐる」の写真(全4枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます    

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