小さな黄色い花がかぐわしい芳香を放つ。花の少ないこの時期に、心が和む

 小さな黄色い花がかぐわしい芳香を放つ。花の少ないこの時期に、心が和む▼ロウバイである。日比谷公園の片隅で遠慮がちに春を告げるよう咲くのを見掛けた。中国原産の落葉低木で、葉の出る前のこずえに小さな黄色の花が数輪ずつ集まって咲き始めるとかわいらしく、ランに例える人もある。花色が蜜ろうに似ていることからこの名が付いた。鈍い光り方はろう細工のような趣がある▼著名な医学者の故山田正篤さんには「正月の花」だった。毎年暮れに近所の花屋から届けてもらう大枝を切り分けて大つぼに生けておくと、「座敷も玄関の間も明るい黄花と心地よい香りで満たされる」と、随筆で書いた。人の心にほんのりと明るい灯をともす▼各地から梅の便りが届く。気になるのは記録的な暖冬。秋に作られた固い越冬芽が目覚めて大きくなるには寒さが要る。専門家は「休眠打破」という。不十分だとうまく咲かない。桜も同じような仕組みでつぼみを膨らませるが、咲く時期がずれるのは、「“眠り”の深さの違い」(『植物のひみつ』田中修著)による。梅の方が眠りが浅い。今年のような暖冬が果樹の開花にどのような影響を与えるか。気になり始める▼七十二候では水沢腹堅。「みずさわあつくかたし」と読む。まだ、寒中である。
 

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