自由化と基本計画 所得拡大への道筋示せ

 新たな食料・農業・農村基本計画の農水省の骨子案では、大型自由貿易協定(メガFTA)による大幅な市場開放への危機感が不十分だ。食料自給率の向上には農業者の確保が重要である。それには輸入品との競争激化を認識した上で、安心して経営を継続できるよう所得を増やす道筋を示す必要がある。

 新基本計画に求められるのは自給率を上げる処方箋だ。骨子案は、国内生産の維持・拡大と農業者の所得向上への官民挙げた取り組みを掲げた。中小・家族経営も産業政策と地域政策の両面から支援するとした。

 生産の維持・拡大に向けた基盤強化では農業者の確保が課題だ。基幹的農業従事者数は2019年が140万人で、5年で27万人減少。認定農業者も減り、65歳以上が4割近くで、後継者未決定が7割を占める。

 同省は新基本計画の原案作りに入った。新基本計画を議論する審議会では、所得が低いから子が継がないといった実情の報告があった。親子間を含め経営継承を進める観点からも、経営継続可能な所得を確保できる支援策の具体化を求める。

 約1年間に環太平洋連携協定(TPP)など三つのメガFTAが発効。輸入増加や価格低下の圧力が強まる恐れがある。現行基本計画策定時とは異なる大きな変化だ。しかし骨子案からは危機感が読み取れない。農業者の不安を受け止め、影響試算で示した所得の維持にとどまらず、向上するよう手厚い対策を行う姿勢を示すべきだ。

 骨子案は、具体的施策として食品産業や観光業との連携による高付加価値化や輸出促進、6次産業化、良質で安い生産資材の供給、流通の合理化、担い手への農地集積、スマート農業の加速化などを挙げた。小売りや実需者のバイイング・パワーが強い中で、所得向上には、再生産可能な適切な価格形成の在り方も課題とすべきだ。また所得向上の推進策として骨子案は輸出拡大を重視している。加工食品を含め輸出が所得にどう結び付くか明らかにする必要がある。

 農村の人口減少で、集落の維持と農業の多面的機能の発揮が危ぶまれる。骨子案は、地域資源を活用した所得と雇用機会の確保に取り組むとした。政府は、農業・農村所得を倍増させるとして、農村所得では加工・直売や輸出、都市との交流などで13年度の1・2兆円から25年度には4・5兆円に増やす目標を設定。17年度実績は2兆円で達成には増加幅の拡大が必要だ。どう増やすか明示すべきだ。

 所得向上には生産拡大が必要だ。ニーズに応じた生産と共に消費者に意識的に国産を選んでもらうことが大切だ。施策推進の財源確保にも国民の理解が不可欠である。多面的機能の発揮や温暖化防止への貢献を含め農業・農村への理解醸成、食育、地産地消など官民挙げた総合的な取り組みが求められる。同省は国民運動の展開を提起している。柱に据えるべきだ。
 

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