“人生の岐路”親身に 移住希望者支える相談員 ふるさと回帰支援センター

創意工夫しながら移住相談に応じる担当者たち。(右から)佐賀の矢野さん、広島の森上さん、新潟の本間さん(東京都千代田区で)

 移住相談で地方への移住をけん引してきたふるさと回帰支援センター。“田舎暮らし”を志向する都市住民は着実に増え、2019年の相談者は4万9000人を突破し、過去最多となった。各地の相談員たちは、試行錯誤しながら地域の魅力を発信し、移住希望者の人生の岐路に寄り添っている。
 

地域と農の魅力創意工夫し説明


 リンゴ、ミカン、レモン、米に和牛、キャベツ……。産地が一目で分かる地図を見せながら、同センターで相談員を務める広島県地域力創造課の森上陽子主査が笑顔で説明する。「海も山もあって、広島はいろいろな作物が栽培できるんですよ」

 森上主査は20年間、農業改良普及員など県の農業部門の現場を歩いてきた。2年前、センターに異動。現在は単身赴任で、来訪者に広島の魅力、働き方やライフスタイルの提案をしながら、仲間とセミナーを企画する。

 相談員について、森上主査は「人生の岐路に関わる仕事」と感じている。民間に委託する自治体が多い中、県庁から転勤して相談員を務めるのは異例。県と出先機関であるセンターが、すぐ連携できるのが強みという。

 相談者は30代が中心。森上主査は子育てを経験してきた人生の先輩として、相談者に寄り添った対応を心掛ける。同県への移住者は年々増加。センターが25日に発表した希望地ランキングでも初の2位になった。「移住した人が楽しく暮らしていると報告してくれるのが励み」と笑顔を見せる。

 佐賀県の相談員、矢野理恵子移住コーディネーターは「移住する人も受け入れた地域も元気になること」を目標にする。16年7月から同センターに常勤。セミナーに力を入れ、スマート農業や起業、婚活など多様な企画に携わってきた。

 相談件数は順調に増えるが、結果はすぐには出ない。「移住をサポートするだけではなく、佐賀を好きになってもらうきっかけをつくりたい」と話す。都会から同県白石町に移住し、就農した人たちを紹介するパンフレットが宝物だ。

 新潟県の本間知美相談員は、昨年夏に同センターに来た“新人”だ。同県柏崎市出身。幼い頃を暮らした古里は「何もない場所」だった。しかし、移住者を呼び込もうと奮闘する人々と出会い、考えが変わった。「自信を持って新潟の魅力を伝えられる。人との出会いを大切にできているのか、いつも自問している」と本間相談員。悩みながら、移住希望者の思いに耳を傾ける。

 同センターは02年、都市住民のI・Uターンを応援する「百万人のふるさと回帰・循環運動」を展開するためJAグループや日本生活協同組合連合会、日本労働組合総連合会(連合)などが設立した。移住相談や研修会などを開いている。
 

ふるさと回帰支援センターの高橋公理事長の話


 移住相談者が増えているのは、格差社会の中で東京で働くことに希望が持ちにくく、地方で自分らしい暮らしを志向する人が増えているからだ。モデルとなる移住の先輩が全国にいる社会背景と、15年から始まった政府のまち・ひと・しごと総合戦略による相乗効果がある。移住希望地ランキングの上位自治体は、市町村の受け入れがしっかりしていることが共通点だ。

 地方で農業をしたい移住希望者がかなりの割合でいる。ただ、JAや農業団体はしっかりと受け止めきれていない。JAにはもっと積極的に移住希望者に関わり、農業現場に夢を抱く若者を応援してほしい。
 

自治体担当集め 「特定地域」解説 東京でセミナー


 ふるさと回帰支援センターは25日、東京都内で「新しいステージに入った地方移住政策」をテーマに都市と農山漁村の交流・移住実務者セミナーを開いた。自治体担当者ら約50人が参加し、移住に関わる制度、政策について理解を深めた。26日まで開く。

 セミナーでは衆議院議員の細田博之氏が、6月に施行される「特定地域づくり事業推進法」と過疎地域の今後について基調講演。同法は、人口が急減する地域に特定地域づくり事業協同組合を設立し、給与や年金を保障して若者らを通年雇用するものと説明した。「どう働いてもらうかを市町村で相談し、ここで働きたいという人に道を開いてほしい」と強調した。

 その他、総務省、国土交通省、農水省、厚生労働省が地方移住に関わる施策について解説した。
 

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