協同ワンチーム 地域課題に向き合おう

 JAグループには「試練の時代」だった2010年代に、果敢な挑戦で活動領域を広げ、協同の価値を形にした組合は少なくない。持続可能性がキーワードになった今、地域や暮らしの課題と向き合う姿勢に学び、自己改革に生かしたい。

 10年代の後半は政府から農協改革を突き付けられ、JAグループには怒濤(どとう)の時期だった。一方で国連が協同組合の価値を評価し、国際協同組合年を設けたのは12年。これを契機に新たな取り組みを始め、成果を挙げた協同組合は多い。

 その一つはエネルギーだ。11年3月の東日本大震災・東京電力福島第1原子力発電所事故を機に、太陽光や風力などの再生可能エネルギー開発が急速に広がった。生協セクターも電力小売り事業に参入、中でも生活クラブ生協は産直先の生産者らと組んで発電所を建設、利益を地元の活性化に還元する。評論家・内橋克人氏のいう「FEC(食料、エネルギー、福祉)自給圏」を目指した試みである。

 協同労働(ワーカーズコープ)が本格化したのもこの時期だ。働きたい人が金を出し合って仕事を興し、運営にも参画する。病院の清掃を皮切りに現在、子育て、福祉、農業、困難を抱えた若者や困窮者の支援などさまざまな分野にわたる。日本労働者協同組合連合会によると、加盟組合で1万5000人の雇用と350億円の事業を生み出し、さらに拡大基調にある。

 カナダの協同組合人、アレクサンダー・レイドロ―は1980年、著名な報告書「2000年における協同組合」で、これから力を入れるべき領域として「生産的労働のための協同組合」を挙げた。それが日本では10年代に次々と具体化した。協同労働の根拠法となる労働者協同組合法の制定を目指す動きがある。各党は今国会での成立に協力するべきだ。

 生協セクターはこの数年が記念年に当たる。生協ブランドのCO・OP商品は今年で誕生60年、日本での生協の発祥、コープこうべは来年が設立100年。生活クラブ生協はおととし50年を迎えた。日本生活協同組合連合会によると、生協組合員は今年、3000万人に達する見込みだ。

 元気な森林組合も出てきた。昨年のラグビー・ワールドカップの開催地となった釜石市は、スタジアムの座席を地元の被災木でつくった。これに大きな役割を果たしたのが釜石地方森林組合である。地域の子どもと山との距離を縮める交流活動や、森林業を担う若い世代の育成などに尽くし、復興をけん引する力の一つになっている。

 こうした活動の底流にあるのは、地域の困り事に寄り添い、力を合わせて解決に尽くす協同精神だ。ラグビーの「ワンチーム」である。持続可能性が問われる時代だからこそ、地域と関わる姿勢はもっと再認識されていく。JA自己改革でもなくてはならない視点である。
 

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