国産ウイスキー おいしさ超えた価値 特別編集委員 山田優

 日本産ウイスキーが世界で人気を集めている。ウイスキーの品質を競う国際品評会で高い評価を受け続けて受賞しているのが自慢だ。こうした品評会で最近話題を呼んでいるのが、台湾産ウイスキーである。最先端を行くK社の製品は、日本産をしのぐ高評価を得るものもある。半年前、台湾に行った時、同社の直営店を訪ね味見を楽しんだ。確かにおいしい。壁には居並ぶスコッチのブランドを押しのけて数々の最高賞を受賞したというポスターもあった。

 日本でこの話をすると、大半の人が「えー、台湾のウイスキーなんかおいしいの」と馬鹿にしたような顔をする。その表情を見て思い浮かべるのが、10年前にスコッチウイスキーの有名なM社の蒸留所を訪ねた時の反応だ。

 この蒸留所は日本の酒造企業が買収していて、売店では親会社のウイスキーも並んでいた。案内してくれた現地ジャーナリストに、お礼を兼ねて日本産を買って渡した時の顔が全く一緒だったのだ。

 「えー、日本のウイスキーなんかおいしいの」

 日本産は主原料となるモルト(発芽した大麦)のほとんどを欧州から輸入する。場合によっては、ウイスキーそのものを輸入して、ブレンドしながら「日本産」を名乗ることもある。原料を海外に依存しながら、製造過程や貯蔵場所の環境の素晴らしさなどを武器に、世界がうなるおいしさをつくり上げたのだろう。

 歴史の浅い日本で、苦労して本場に追いついたのは職人たちの努力と才能だった。素直に褒めたい。ただ台湾の人たちも同じように努力を重ね日本産に引けを取らないおいしいウイスキーを生み出した。さらに中国で昨年、日本円で160億円を投じウイスキー蒸留所の建設が始まっている。何年か後に、中国産が世界の品評会で上位に名を連ねる可能性だってある。

 食べるものにとっておいしさは確かに大切だ。しかし、おいしさだけに頼ると、果てしのない競争に追われてしまいがちだ。

 M社の蒸留所で取材した人の説明を思い出す。彼は蒸留工程よりも、主原料となる大麦の品種改良の歴史を熱心に話した。周辺農家と長年一緒に取り組んできた大麦以外は使わない。

 スコットランドの人たちが誇るのは、その土地でできたものを、その土地で加工することをひっくるめた伝統だ。単なるおいしさを超えた価値が、同社のウイスキーには溶け込んでいるように思えた。

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