地方参事官をよろしく 生産現場の悩み解決 元農水省官房長 荒川隆氏

 今年度、制度発足後5年となるものに、農水省の地方組織である地方参事官制度がある。農水省の地方組織といえば食糧事務所や統計事務所が有名だが、どちらも今はない。幾度かの変遷の後、2015年10月に国の農政と生産現場の農業者を直結する機関として、各都道府県に地方参事官が設置された。

 世論を二分した環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受けて政府は、合意内容を農業者に説明し、その不安に応えるべく国内対策を取りまとめようとしていた頃だ。設置直後の地方参事官は、この大仕事に駆り出されたのだが、「国会決議違反の合意内容」と世論が沸騰する中で、さぞ荷が重かったろう。その後、関係者の努力もあり認知度は上がってきているが、この地方参事官の設置から、今年で5年になる。

 食糧事務所の頃も、その後の地域センターの時代も、首長や農協長そして農業者が地方組織の長と顔を合わせる機会は乏しく、さほどありがたみのある組織とは思ってもらえなかったようだ。そんな反省もあり、地方参事官新設の際には、徹頭徹尾現場に軸足を置き、「現場に伝える」「現場の声をくみ上げる」「現場とともに解決する」を合言葉にしてきた。毎年の予算の説明はもとより、地域特性に応じた営農展開の提案や各地の優良事例の横展開など、現場に役立つさまざな活動が行われている。

 「本当か?」と疑われるむきは、まずは本省や地方農政局のホームページをご覧いただきたい。各地の地方参事官の活動内容が紹介されている。現下の新型コロナ対応でも各県の地方参事官組織に対策本部が設置されている。

 外出自粛や県をまたぐ移動自粛が求められる中で、例年のように霞が関や永田町に大挙して要請・陳情に出掛けるのはやめ、最寄りの地方参事官とじっくり意見交換してみてはどうか。他県の優良事例も参考にしつつ、迅速・的確なコロナ対策の導入のためにも、地方参事官を大いに活用してほしい。この組織が生産現場の悩み解決の一助となり、5年後見直しの試練を経て長く愛されるよう、ぜひとも「われらが支局」として大いに使い育てていただきたい。

 市町村行政が疲弊する中、新基本計画でも「現場と農政を結ぶ機能の充実」がうたわれている。4月着任組も含めて地方参事官諸兄におかれては、「現場とともに解決する」のは容易ではなかろうが、ゆめゆめ一方通行の国の宣伝機関になることなく、制度発足時の理念を忘れず、「現場に寄り添い現場とともに悩む」姿勢を大切にしていただきたい。

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