昔から人は花に思いを託してきた

 昔から人は花に思いを託してきた。60年前、イラク北東部の洞窟で5万年以上前のネアンデルタール人の遺骨が発掘され、周りの土から植物の花粉が見つかった▼学者は「だれかが花を集めてきて、死者にたむけたのではないか」と考えた。『花と人間のかかわり 花の文化史』(農文協)で知る。同書は岡倉天心の次の言葉を載せている。「原始時代の男が自分の恋人にはじめて花を贈ったとき、『けもの』から『にんげん』になった」▼花贈りは源氏物語にも描かれている。中年になった源氏が、彼の求愛を拒み続けてきた姫君に朝顔の花を添えて和歌を贈る。「私は歎(なげ)きながらも希望を持っております」(与謝野晶子訳)と文に記して▼古今和歌集に〈五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする〉という歌がある。橘(たちばな)の香りから、以前愛していた人のことを思い出したのだろうか。この歌は伊勢物語にも引用され、そこでの以前の愛の相手は元妻。仕事にかまけているうちに愛想を尽かされてしまった。この話にもし不安を感じたなら花を贈ろう。コロナ禍でストレスを感じている夫婦の癒やしにもなる▼今月は「母の月」でもあり、わが家は赤とピンクのカーネーションを飾っている。花言葉は愛や感謝だとされる。思いが伝わっているといいが。
 

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