[未来人材] 32歳。昼間農家、夜に音楽活動 シンガー・ソングライター “野菜ソング”道開く 神戸市 谷井翔一さん

トマトなどを有機栽培する谷井さん(神戸市で)

 神戸市の谷井翔一さん(32)は、野菜農家とシンガー・ソングライターという「二つの顔」を持つ異色の人物だ。専業農家の実家を離れ、追い求めた音楽の夢。25歳を前に行き詰まる中、「自分にしかできない音楽は何か」とたどり着いたテーマは、常に人生のそばにあった「農業」だった。音楽を通じて農業と向き合う中、昨年には就農に踏み出した。野菜を作り、野菜を歌う。“二足のわらじ”で農業を盛り立てる。

 谷井さんが音楽に目覚めたのは中学生の時。音楽の授業でギターに触れたのが契機だった。「元々、人前に立つのが好きで性格に合っていた」。高校卒業後は地元を離れ、大阪府内の大学に進学。軽音楽サークルに入り、イベントや路上ライブに明け暮れた。

 転機が訪れたのは大学4年生の時。イベントで知り合った音楽事務所の担当者にスカウトされた。卒業後は就職せず、バイトをしながら音楽活動を続けた。

 だが、現実は厳しかった。音楽の仕事はほぼなかった。数年がたち、音楽を諦める寸前まで悩んだ。「自分にしかできない音楽は何か」。真剣に見つめ直し、たどり着いたのは「農業」だった。

 都市近郊ながら、専業農家で育った谷井さん。「小中高校と周囲に専業農家の友人はほとんどいなかった。『実家が農家』は自分だけの個性だった」

 初めて作ったのはピーマンが主人公の歌「Pマン」だ。子どもたちのヒーローを目指すが、子どもからは苦いと嫌われるジレンマに葛藤する姿を歌う。

 「向いてないから諦めろよって カボチャが僕に言ってくるけど 人気者には分からない 僕の気持ちなんて」

 音楽の夢に行き詰まる自身の姿を重ねた。だが、この“野菜ソング”で道が開けた。子どもから人気が出て、幼稚園や保育園からライブの依頼が入るようになった。生産者らと連携して伝統野菜のPR曲を作るなど、音楽活動が広がった。

 昨年4月に実家で就農。現在、約35品目の有機野菜を1・1ヘクタールで生産し、JA兵庫六甲の直売所などに出荷する。「音楽を通じて農業と向き合う中、実家の農業を受け継ぎたいという思いが強くなった。将来は、農作業とライブが両方楽しめる体験農園を開きたい」と夢を語る。
 

農のひととき


 日中は農作業で、夜に部屋で音楽活動をする。ただ単にギターを弾くだけの時もあれば、新曲を作る時もある。農作業中に新曲のテーマがひらめくこともあり、テーマに沿って歌詞を書き進めると、自然とメロディーが浮かぶ。現在までに20ほどの“野菜ソング”を作った。観客の前で歌い、楽しんでもらう瞬間が何よりも好きだ。

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