群馬・養蚕農家群 文化財登録進むが… 観光期待も誘客できず

蚕の生育で通風を良くした天窓から望む景色を案内する田島さん。建物は今年度中に国の登録有形文化財への登録を目指す(群馬県伊勢崎市で)

 群馬県の養蚕農家住居群が残る地区で、歴史や景観を次の世代へ残そうと、文化財登録が進む。観光資源としての価値の高まりに機運が高まる一方、新型コロナウイルスの感染拡大で、思うように誘客できない状況が出てきた。観光資源に頼りがちな文化財をコロナ禍でどう守るのか。課題を探った。(木村泰之)
 

コロナ対策 悩みの種


 2014年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界文化遺産に登録された構成遺産のうち、同県伊勢崎市境島村地区には、住居兼蚕室に天窓を設けるなどして風通しを良くした「清涼育」を考案した、田島弥平旧宅がある。周辺の4戸(1戸は隣接する埼玉県本庄市内)が今年、登録有形文化財として申請した。

 申請した一人、田島一栄さん(64)の住居は、江戸時代末期に建てられ、50年ほど前まで蚕を育てていた。地元養蚕の歴史を知ってもらおうと7年ほど前から月に1度、住居内を無料で公開しており、一日に約70人が訪れる。文化財のお墨付きを得ることで、一層のPRを目指す。4戸の取り組みを受け、その他の所有者も登録を希望。田島さんは「地域全体で取り組めば発信力はより高まる。登録戸数を増やしたい」と意欲的だ。

 ただ、コロナ禍で新たな懸念が生まれた。養蚕農家住居に暮らす人は、高齢者が大半。観光客の増加による感染拡大に不安を抱き、住居の開放に消極的な人も出てきた。田島さんも90代の父と同居しており、集客増加を目指す半面、感染予防対策に頭を悩ませる。

 同県中之条町赤岩地区は、養蚕農家住居群が昔のまま残っていることから、06年に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に登録された。築年数がたった外観の修繕に1000万円以上かかる事例もあるが、国・自治体の支援や農泊の収入を充て、景観を守る。

 現在40戸。高齢化と過疎化は深刻だが、草津温泉などを訪れた観光客を呼び込み、地域を盛り上げてきた。それがコロナ禍で一転、誘客ができなくなっている。

 農家の関駒三郎さん(88)は、築360年の住居で養蚕道具などを観光客に紹介するガイドを務める。「高齢者が多い地域で、新しいことに挑戦しにくい。コロナ禍でどう客を集めたらいいものやら」と顔を曇らす。農泊を営む篠原辰夫さん(80)は「コロナで農泊も休業中。このままでは住む人がいなくなる」と、空き家の増加を心配する。
 

地元ファン増やそう


 登録有形文化財制度の創設に携わった工学院大学の後藤治理事長は「新型コロナ禍は、建物の維持や継承を見つめる機会」と指摘する。

 成功している地区は、遠方から多くの観光客を呼び込むより地元リピーターを重視しているという。後藤理事長は「地元ファンを増やすには、母屋以外にも、景観を損なうトタン製の納屋を周囲になじませるなどの改修も大事。行政支援が薄い場合は、所有者を中心にした組織がインターネットで募った資金を修繕費に充てる方法もある。できることから取り組んでほしい」と提起する。
 

<ことば> 登録有形文化財


 築50年がたった建造物のうち、外部の改修に対し、指導・助言といった緩やかな規制で保護する制度。内装改修や一部の外観変更に届け出が不要で、国が保存や修理の設計監理費の半分を補助する。
 

<ことば> 重要伝統的建造物群保存地区


 歴史的な集落などを、自治体の支援を受けながら保存するのが伝統的建造物群保存地区。国が認めた地区を重伝建地区にする。重伝建には国の支援も加わり、改修や保存費用9割が補助されたり、固定資産税が減免されたりする。
 

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