捕獲通知で巡回省力 200台設置、豚熱対策に 岐阜県
2020年11月24日

子機は木などに巻き付けて設置する。わなに掛かった個体が暴れるなどするとワイヤが外れて、通知する(岐阜県美濃加茂市で)
岐阜県は、豚熱対策で野生イノシシの調査捕獲の効率を高めるため、センサーで個体がわなに掛かったかを知らせる情報通信技術(ICT)機器を県内に200台導入した。わなに掛かるとメールが届き、猟友会員がわなを巡回する手間を省き、処理や運搬をスムーズにできるようにする。個体数削減につなげ、豚熱終息を目指す。
県は野生イノシシの個体数削減に向け、2020年度予算に約10億円を計上。その方策の一つがICTを活用した調査捕獲推進で、アイエスイー製の捕獲通知システム「ほかパト」を200台導入、7市町に配布した。
美濃加茂市では15台を導入。市猟友会の5人が3台ずつ活用する。おりわなやくくりわなを20機ほど管理する横家幸也副会長は「わなに掛かっても時間がたつと逃げてしまうことがある。通知が届いたわなをまず見に行くという優先順位が付けられ、計画が立てやすい」と話す。
システムには親機と子機があり、親機はソーラー駆動で、対象地域に広く電波が届くような高台などに設置する。子機は乾電池駆動で、樹木などに巻き付けて固定し、下部にある金属製のワイヤと、わな周辺の草木などをひもなどで結んでおく。個体がわなに掛かって暴れるなどして、ひもが引っ張られてワイヤが外れると、メールが届く仕組みだ。
捕獲した個体は検査のため、処理後に家畜保健衛生所に持ち込む必要があった。発見が遅れると翌日に回していた。横家副会長は「わなを巡回するだけで3、4時間かかる。掛かったか分かればすぐに処理できる」と話す。
県は現在、血液検査に切り替えているところで、血液採取後の個体は埋設や処分施設に持ち込んでもらっている。
県は経口ワクチン埋設を順次進めており、7月調査での抗体獲得率は337頭を調べて65・6%。欧州のガイドラインでは、抗体獲得率が60%を超えると豚熱が終息に向かうとしている。
県は野生イノシシの個体数削減に向け、2020年度予算に約10億円を計上。その方策の一つがICTを活用した調査捕獲推進で、アイエスイー製の捕獲通知システム「ほかパト」を200台導入、7市町に配布した。
美濃加茂市では15台を導入。市猟友会の5人が3台ずつ活用する。おりわなやくくりわなを20機ほど管理する横家幸也副会長は「わなに掛かっても時間がたつと逃げてしまうことがある。通知が届いたわなをまず見に行くという優先順位が付けられ、計画が立てやすい」と話す。
システムには親機と子機があり、親機はソーラー駆動で、対象地域に広く電波が届くような高台などに設置する。子機は乾電池駆動で、樹木などに巻き付けて固定し、下部にある金属製のワイヤと、わな周辺の草木などをひもなどで結んでおく。個体がわなに掛かって暴れるなどして、ひもが引っ張られてワイヤが外れると、メールが届く仕組みだ。
捕獲した個体は検査のため、処理後に家畜保健衛生所に持ち込む必要があった。発見が遅れると翌日に回していた。横家副会長は「わなを巡回するだけで3、4時間かかる。掛かったか分かればすぐに処理できる」と話す。
県は現在、血液検査に切り替えているところで、血液採取後の個体は埋設や処分施設に持ち込んでもらっている。
県は経口ワクチン埋設を順次進めており、7月調査での抗体獲得率は337頭を調べて65・6%。欧州のガイドラインでは、抗体獲得率が60%を超えると豚熱が終息に向かうとしている。
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メロン・大葉 相場低迷 再発令 時短営業響く
緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業や休業を受け、一部青果物の相場低迷が加速している。メロン「アールス」の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は平年の3割安を付け、前回発令された4月上旬と同水準に落ち込む。刺し身のつま物に欠かせない大葉も、業務需要が減って平年の3割安に低迷。小売りでの販売にも勢いがなく、相場を下支えできていない。
小売りも勢い欠く
メロン「アールス」は12月、「GoToキャンペーン」の活況により、上位等級を中心に引き合いが強まり、歳暮需要も加わり高値で推移。だが、年が明けて環境は一変した。中旬(19日まで)の日農平均価格は1キロ799円と平年の32%安で、同4割安を付けた日もある。東京都中央卸売市場大田市場では、初市以降、静岡産の高値が1キロ4320円と止め市の半値に急落し、一時は同3240円まで下げた。
卸売会社は「正月に百貨店や果実専門店に客足が向かず弱含みとなる中、再発令が重なった。ホテルやレストランが営業縮小し、売り先がない。低価格帯を中心にスーパーに売り込むが、上位等級と下位等級の価格差が縮まっていく」と厳しい展開を見通す。
加温にコストがかさむ厳寒期の軟調相場に、産地からは嘆息が漏れる。主産地の静岡県温室農業協同組合によると、交配から収穫までは、 50日程度。収穫時期をずらすことができず、供給の調整は難しい。「コストをかけ、丹精したものに値段が付かないのはつらい。スーパーなどへの販売を通し、家庭での消費拡大に期待したい」と話す。
小物商材も厳しい販売を強いられている。大葉は、1月中旬の日農平均価格が1キロ1690円。元々需要が減る時期ではあるものの、平年の28%安と低迷が顕著だ。
産地は前回の宣言時、巣ごもり需要で好調だったスーパーに販路を切り替えた。ただ、「今回はスーパーからの注文は勢いを欠き、相場を下支えし切れない」(卸売会社)情勢だ。
主産地を抱えるJAあいち経済連は「業務筋が大半を占める契約取引分の販路を新たに確保しないといけない」と説明。春の需要期の販売も見据え、コロナの早期収束を望んでいる。
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2021年01月20日

本格芋焼酎「百菜」 津市
津市栗真町屋町で耕作放棄地の復活に取り組む「町屋百菜」が、16アールの畑で栽培したサツマイモで製造・販売する。
2020年4月に栽培を復活させ、「町屋芋」としてブランド化。「町屋芋」は繊維質が少なく、甘味が強い。果肉は淡黄色で粉質、ホクホクした食感が特徴。
製品には「町屋芋」を100%使用。長崎県の酒造会社の全面協力で、甘くフルーティーな香りが際立つ焼酎にした。アルコール度数25度で、1本(720ミリリットル)1980円。JA津安芸購買課などで限定2000本を販売する。問い合わせはJA津安芸購買課、(電)059(229)3519、または中村酒店、(電)059(232)4024。
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2021年01月19日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(中) 国際協力から転身 「まず農家に」 地に足着け精進
吹き抜ける風が肌寒さを増した2020年11月下旬、水戸市にある日本農業実践学園の講義用あずまやで、多品目の野菜農家を目指す吉田誠也さん(30)が、パソコンに野菜の生育データを打ち込んでいた。背後には自身で種から育てた10品目の畑が広がる。
東京大学大学院で植物のバイオテクノロジーや分子生物学を修め、昨春から海外で農業の国際協力に携わるつもりだった。「半年前まではここにいるとは想像できなかった。でも、本当はこれが本来の順序。急がば回れで、新型コロナウイルス禍で僕は農家への道に踏み出す決断ができた」
入校者数が右肩下がりを続けていた実践学園は、研修生がゼロとなった19年度と打って変わり、20年度は18人が入校した。
2021年01月20日
地域内外の知恵生かす 関係人口創出モデル報告会
鳥取県と長野県塩尻市は23日、「関係人口」の創出に向けた事業の報告会をオンラインで開いた。地域の住民や企業だけでなく外部の専門家らを巻き込みながら、関係人口を呼び込む企画を立案、実践する同市独自の手法を紹介。同市を参考に、農業分野の関係人口づくりを目指す鳥取県内の事例なども報告した。自治体職員や関係事業者ら約90人が参加した。
塩尻市は関係人口を呼び込む活動を企画立案し、実行するまでのプロセスを紹介。住民や企業が専門家の助言を受けて課題を整理し、活動の内容をまとめた「仕様書」を作成。実践に当たっては外部人材を募り、地域外の視点も入れながら進めているとした。
具体例として地場産ワインの消費拡大に向けて、広報の専門家の協力を受けてファン組織を設立。オンラインイベントも開いたことを報告した。
塩尻市の手法に注目した鳥取県は、関係人口の創出を目指す県内の自治体に情報を提供。実践に移している地域が内容を報告した。このうち大山町は、農業の担い手と労働力不足の解決を目指し、関係人口を呼び込む計画を発表した。鳥取県主催で「まちづくりワーケーションフォーラム」も開いた。休暇で訪問した先で働くワーケーションの将来像と関係人口の創出について、有識者らが意見を交わした。
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2021年01月24日

キャラクターでグループ討議 コロナ下も情報交換密に 中金ローン担当者会合
新型コロナウイルス下でも、参加者同士が気軽に会話できる情報交換会を──。農林中央金庫は26、27の両日、デジタル技術を活用したローン専任担当者情報交換会をオンラインで開く。映像配信ではなく、参加者それぞれが画面上で人型のキャラクターとなって動ける機能を用意。交流したい他の参加者に近づき話し掛けるなど、集合開催に近い体験を追求する。
JAグループではコロナ対策として、多くの会議をオンライン化。……
2021年01月25日
営農の新着記事

リンゴ枝折れ前にドローンで空から発見 優先度判断し雪害減 長野
長野県中野市で果樹を栽培する三井透さん(34)は、大雪が降った後の園地をドローン(小型無人飛行機)で上空から確認し、除雪する場所の優先順位を決めている。徒歩で片道30分かかっていた確認作業が5、6分に短縮できた。枝が折れそうな園地を優先して除雪し、被害の軽減に役立てている。
三井さんは就農6年目で、桃やリンゴ、プラムなどを約2ヘクタールで栽培する。規模を拡大する中、園地の見回りを効率化しようと、3年前からドローンの活用を始めた。冬は雪が積もると河川敷の園地に車で近づけず、かんじきなどを履いて歩く必要があった。
12月や2月など気温が高い時期に大雪が降ると、雪が水分を多く含み重くなる。果樹に積もった雪が解けて、既に積もっている地上の雪にくっつくと、枝が引っ張られて折れやすい。
2020年12月中旬の大雪では、10本の木で主枝が折れた。三井さんは「ほんの数十分でも対処が遅れたら、ばきばきと折れてしまう」と説明。折れてしまった枝は戻らないが、折れそうな木から優先的に除雪すれば、被害を減らせる。
ドローンは撮影用のものを使った。雪がやんだら上空から動画を撮り、枝折れの程度を確認する。木の生産性などを考慮し、作業する園地の優先順位を決めた。
三井さんは「助けられる木が増えた」と効果を実感する。確認にかかる労力も削減できた。改植が必要な木も把握でき、苗木の注文もスムーズになる。今後は大きなドローンを使い、枝に積もった雪を風圧で落とす方法も考えているという。
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2021年01月25日
鳴き声で牛個体特定 健康状態把握に応用 愛知県立大と県農試
愛知県立大学と愛知県農業総合試験場は、複数の牛の鳴き声のデータを分析し、どの牛が鳴いているか特定することに成功した。成牛と育成牛の鳴き声を混ぜた状態でも90%以上の精度で識別できたという。人の声を分析して感情や健康状態を読み取る技術の開発が進んでいるが、将来は牛の鳴き声のデータを基に健康状態の把握や、繁殖管理への応用も検討していきたい考えだ。
同試験場のホルスタイン種の成牛4頭と育成牛6頭の計10頭を鳴き声を収集した。成牛と育成牛の群に分けて録音し、識別に使った発声データ数は、成牛は251、育成牛は446。集めた音声データを編集して混ぜて、改めて分析をすると、声の違いを聞き分けて識別することができたという。
人が子どもから大人にかけて声が変わるのは牛も同じだ。識別の結果、声帯の筋肉の付き方が成牛と育成牛で違い、牛も人と同じく成長に伴って声道が伸びることを確認した。成牛は声の高さや低さを表す基本周波数の値が育成牛より大きいことも確かめた。
愛知県立大学情報科学部の入部百合絵准教授は「牛も発声方法や声質が一頭一頭違った。声そのものの分析だけでなく、発声するタイミングや頻度なども分析していきたい」と見据える。
同試験場は「牛がどういう欲求を表現しているか分かるようになれば、病気の兆候や発情の早期発見にも役立つだろう」と期待する。
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2021年01月23日

広島県基幹種雄牛 「花勝百合」を選抜 能力と希少血統 両立 BMS 県歴代トップ
広島県は黒毛和種種雄牛「花勝百合」を県基幹種雄牛に選抜した。同牛は、現場後代検定で枝肉成績の脂肪交雑基準(BMS)ナンバーが8・8と、県基幹種雄牛で歴代1位を記録。枝肉重量も県内トップ級でBMS、産肉能力を兼ね備えた牛として、県は活躍を期待。高い能力と、和牛のルーツといわれる広島血統の濃い牛としてアピールする。(鈴木薫子)
「花勝百合」は、2015年11月17日生まれ。……
2021年01月22日

筋肉スーツ 続々販売 各社農業向け意識 腕上げる動作補助 都内でロボット展示会
京都江東区の東京ビッグサイトで22日まで開かれている産業ロボット関係の展示会「ロボデックス」で、梨の収穫など、腕を上げる作業を助けるアシストスーツの新製品を、各社が展示している。他産業に比べ安価にするなど、農業向けを意識した。今春の農作業シーズンに向けて販売を本格化させる。……
2021年01月22日

ベテランの技、JA出荷データ… クラウドへ集約し経営に“最適解” 高知で始動
高知県は20日、産官学で連携して構築を進めてきた「IoPクラウド(愛称=サワチ)」を始動させたと発表した。農家の栽培ハウスから得られる園芸作物データや環境データの他、JAからの出荷データなどを集約。人工知能(AI)を使って地域に最適な栽培モデルを示し、営農指導に役立てる。収穫量予測もでき、作物の販売にも活用する。
脱・経験依存、収穫予測も
IoPは、ナスやピーマン、キュウリなど園芸作物の生理・生育情報をAIで“見える化”するもの。2018年から構築を目指し、JAグループ高知や県内各大学、農研機構、東京大学大学院、九州大学、NTTドコモなどと連携している。
県は当面、①データ収集に協力する農家約30戸の作物の花数、実数、肥大日数などの作物データ②約200戸のハウスの温湿度、二酸化炭素濃度などの環境データ③園芸作物主要6品目の全農家約3000戸の過去3年の出荷データ──などを収集し活用する。
農家はスマホやパソコンから、クラウドに送られたハウスの環境データだけでなく、異常の監視と警報、ボイラーやかん水など機械類の稼働状況に加え、出荷状況などが確認できる。県やJAの指導員も、戸別の経営診断や産地全体の経営分析などに生かす。
22年からの本格運用を目指しており、最終的には、県内の園芸農家約6000戸のデータを連係させる。県は、「経験と勘の農業」からデータを活用した農業への転換を進めるとしている。
クラウドは県内の営農者、利活用を希望する企業などが利用できるが、まずはデータの収集に協力している約200戸の農家から利用を始める。3月末から、新規利用の申し込みができる予定だ。
農家がクラウドの機能を活用するのは無料。通信分野でシステム構築に協力したNTTドコモは希望者に対し、JAなどに出向いた「IoP教室」を開く。
JA高知県の竹吉功常務は「営農、販売でいかに活用できるかがポイント。技術の継承、出荷予測などにも使える。農家に還元できるよう、十分生かしていきたい」と強調する。
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2021年01月21日

かんきつの貯蔵病害対策 資材消毒剤が有効 静岡県
県農林技術研究所果樹研究センターは、温州ミカンなどかんきつの貯蔵中に発生し果実を腐敗させる貯蔵病害防止に、資材消毒剤による貯蔵箱の消毒効果が高いことを明らかにした。一方、エタノール噴霧は効果が安定せず、水洗浄と日光照射(天日干し)は効果がなかった。
普通温州ミカンは12月に収穫、年明けに出荷する。……
2021年01月21日

雪害ネギ農家 仲間が救う SNSで販促 完売 富山
降り続いた大雪でビニールハウスが全半壊した入善町吉原の農業法人「(株)Stay gold てらだファーム」の力になろうと、知り合いの飲食店・酒店店主らが、被害を免れたネギの販売を支援した。インターネット交流サイト(SNS)で支援の輪を広げネギは完売。寺田晴美社長は「被害は大きかったが、新たな出会いもあった。前を向いて歩んでいきたい」と話す。
7日からの大雪は、県全域でハウスや畜舎など500棟超の被害を出した。……
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2021年01月20日

高齢農家の梨運搬を支援 農業用にロボ改良へ 山口東京理科大や県など
東京貿易マシナリーと山口県農林総合技術センター、山陽小野田市立山口東京理科大学は、運搬支援ロボットによる梨栽培の効率化と軽労化に向けた共同研究契約を締結した。収穫した果実や肥料、剪定(せんてい)枝などをロボットに載せて運び、作業者の負担を軽減する。スマート農業の導入で、高齢化が進む地域の安定経営を目指す。……
2021年01月20日
農福連携の米作り ドローン着目 直播で省力、障害者の作業に幅 群馬県沼田市
群馬県沼田市で農福連携を進める稲姫ファームと、障害者の就労支援や生活訓練などに取り組む多機能型事業所coco―kara(ココカラ)が、ドローン(小型無人飛行機)を使った米作りを試験的に始める。1ヘクタールほどの水田で「コシヒカリ」の鉄コーティング種子を直播(ちょくは)する他、除草剤の散布などに使う予定だ。……
2021年01月19日

「発酵乳」作り方開発 子牛の下痢軽減 北海道大学大学院など 動画を公開
北海道大学大学院などの研究グループは18日、粉ミルクを発酵させた「発酵代用乳(FMR)」を安定して作る方法を開発したと発表した。子牛に与えたところ下痢症を軽減。“牛用のヨーグルト”である発酵乳は、子牛の下痢対策に有効といわれてきたが、原料に生乳や初乳を使うために発酵品質が安定しないのが課題だった。作り方を動画投稿サイトで公開し、健康な子牛の育成に役立ててほしいと期待する。
FMRの材料とする代用乳は脂肪分20%以上の製品を勧め、安定して発酵させるために湯で3・5倍に薄める。7リットル作る場合は、代用乳2キロをふた付きのバケツに入れて乳酸菌製剤を70グラム(全量の1%)、50度のお湯を5リットル投入。泡立て器で撹拌(かくはん)した後、ふたをして20~25度の室温に保てる場所に置く。1日1回撹拌し、1、2日で完成する。水素イオン指数(pH)5・3以下が目安だ。
完成したFMRは濃いため、さらに湯で倍に薄めて与える。1回の給与量の目安は体重の5%。体重40キロの子牛の場合は2リットル与えるため、代用乳を3・5倍に薄めて発酵させたFMR1リットルとお湯1リットルを混ぜ、40度に温めて与える。
研究グループは、開発したFMRを生後0~3日齢の子牛に毎日哺乳。実験的にロタウイルスに感染させたところ、下痢症は起きたが、重篤な水様性下痢はほとんどなく症状を抑えたという。
ロタウイルスやクリプトスポリジウムによる下痢が発生していた農場の子牛では、代用乳を与えた子牛よりも腸炎の発生数や死亡例が半分以下に減った。さらに、FMRを与えた子牛は、下痢を発症しても治療期間が短くなり診療回数や治療費が抑えられたという。
同大学院によると、子牛は免疫機能が未熟のため細菌やウイルス、寄生虫による感染性の下痢にかかりやすく、死ぬこともある。対策の一つとして、乳酸菌やビフィズス菌など有益な微生物を含む発酵乳が長年利用されてきたが、一部の農家に限られるという。生乳や初乳の発酵過程で雑菌が増えて安定しないことなどが課題だった。
FMRを子牛の哺乳に利用した報告はあったが、下痢の症状を軽減する効果は検証されていなかった。FMRの作り方は動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開している。今後は下痢症だけでなく、他の疾病に対する効果も検証していく。
研究は同大学院獣医学研究院とNOSAI道東、北海道立総合研究機構畜産試験場、雪印種苗が共同で研究した。
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2021年01月19日