目を患った大工さんが、粉の目薬を使うために裏の説明書きを見ると、仮名で「めじりへさせ」とある

 目を患った大工さんが、粉の目薬を使うために裏の説明書きを見ると、仮名で「めじりへさせ」とある▼字が苦手な彼は「め」を「女」のくずし書きと誤解し、奥さんの尻に薬をさすと、思わずブーッ。飛び散った粉薬は大工さんの目に。「この薬はこうやって付けるんだ」と納得する。有名な落語の「目薬」である▼言葉遊びは昔からあるが、パソコンを使うようになって思わぬ変換に吹き出す。昨今の政治にあきれながらキーボードを打つと、「法治国家」が「放置国家」になり、「謹賀新年」が「金が信念」に。以前、日本漢字能力検定協会の「変漢ミスコンテスト」に寄せられた“名文”があった。「うまくいかない画像サイズになった」が、「馬食い家内が象サイズになった」。意味は通じるから面白い▼きょう命日の作家三島由紀夫は、自決する前、日本学者のドナルド・キーンさんに、「小生たうとう名前どほり魅死魔幽鬼夫になりました」で始まる、別れの手紙を書いた。もともとはキーンさんが使った当て字。「初めから彼の死を予期していたかのような、忌まわしい含みを持ってしまった」と悔いた。『思い出の作家たち』(新潮文庫)にある▼落語は笑いに転換されるが、三島が憂いた国はどう変わったろう。50回目の憂国忌である。
 

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