厄介者「カヤの実」 ナッツ、食用油 人気加工品に 伐採「待った」 奈良県曽爾村

カヤの実を使って開発したナッツや油などの商品(奈良県曽爾村で)

 奈良県曽爾村は、村に群生するカヤの実を資源として見直し、地域活性化につなげる。ナッツや食用油など全国から注文が集まる加工品を相次いで開発。実の回収や加工で村に新たな仕事を生み出し、食べ方などの伝承を通して村民の交流も促す。かつて道を油だらけにしていた厄介者の実を、地域振興の“潤滑油”として生まれ変わらせた。

 「いってカリカリのおやつにして食べるのが、子どもの時は大好きだった」。70アールでユズやホウレンソウなどを栽培する同村の井上治子さん(80)は、自宅すぐ近くのカヤの実を拾いながらこう振り返る。

 カヤは秋に緑色の楕円(だえん)形の実をつける常緑針葉樹で、現在、村内に40~50本が群生。実から油を搾ったり、いって食べたりしていたが、食文化が変化するにつれ、実を拾わなくなった。カヤは道に落ちている実を車がひくと油で滑りやすくなることや、材木が将棋盤などの高級材として利用できることから、全国的に伐採が進行。村でも伐採されようとしていた。

 そんな厄介者に着目し、伐採に待ったをかけたのが村農林業公社だ。2017年から実を集め始め、外皮の爽やかなかんきつ系の香りを生かした芳香蒸留水を開発。その後も「和製アーモンド」と呼ばれる香ばしさが特徴の焙煎(ばいせん)したローストナッツや食用油などを商品化した。

 村によると、カヤの実の商品開発は全国でも珍しく、加工品製造で新たな仕事も生んだ。村民に実を集めてもらうため、18年から公社が1キロ800円で買い取り、ユズの栽培や加工を手掛ける「曽爾高原ゆず生産組合たわわ」が焙煎を担当。村内の障害者施設にもあく抜きなどを任せる。

 公社では、昔からの食べ方などを伝えるワークショップも開催。井上さんら村民が講師となってカヤと村の関わりについて語り、焙煎体験などをした。公社は「農家にも農閑期などの仕事として収入にしてもらえる。地域ぐるみで取り組むことで、食に関する知恵や技も引き継いでいける」と利点を挙げる。

 年により収量は異なるが、毎年20~50キロを集め、ほぼ全量を商品化。通販サイトなどで全国から注文が集まり、毎年売り切れるほどの人気だという。地域おこし協力隊員で公社のメンバーとして活躍する浅田祐子さん(27)は「自家消費が当たり前で、売るという発想が今まで村になかった。曽爾の食べ方を村外の人にも知ってもらいたい」と意気込む。

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