国土の将来像 食料の安定生産を柱に

 2050年までの国土の将来像を検討する国土交通省の専門委員会が最終取りまとめの骨子案を示し、「真の豊かさを実感できる国土」を目標に掲げた。食料を安定供給できなければ豊かな国民生活は成り立たない。政府は地域の維持・振興を後押しし、食料の生産基盤を強化すべきだ。

 骨子案は、同省の国土の長期展望専門委員会が提示。「真の豊かさ」の一つに「水・食料などの確保」を挙げた。委員から「カロリーベース食料自給率の問題の具体的なプロジェクトの積み上げ」(寺島実郎日本総合研究所会長)を求める意見もあり、食料安全保障の確立が国土形成の観点からも提起された。

 カロリーベースの食料自給率は19年度が38%で、6割を海外に依存する。人口増加などで将来、世界的な食料需給の逼迫(ひっぱく)が懸念され、気候変動による自然災害のリスクも国内外で高まる。食料を国内で安定的に生産・供給し、自給率を引き上げ、国民の命と健康を支えることが「真の豊かさを実感できる国土」の基礎になる。

 同委の最終取りまとめは、政府の国土政策の根幹となる国土形成計画の検討に反映される。国土の一部でもある農地を十分に活用し食料生産を維持・拡大することを、国民の共通課題として、農政だけでなく国土政策でも前面に打ち出すよう求める。農地を使う農業者はもちろん、保全に協力する地域住民がいなければ食料生産の継続は難しい。地域のコミュニティーの維持が食料安全保障に直結する。

 農地を含む国土の管理に向け骨子案は「地域管理構想」という考え方を示した。人口減がさらに進んで農地や道路などの管理が行き届かず、地域や国全体に悪影響が出る事態を避けなければならない。そのため、まず地域住民自らが管理方法などを検討・策定し、その取り組みを支援する方向だ。地域に人がいてこそ成り立つ構想だ。農村の人口減を食い止め、新たに人を呼び込むことが欠かせない。

 地域に住み続けられる環境を整え、移住の動きを生み出すために骨子案は「地域生活圏」の形成を提示した。10万人前後を目安とした圏域で、生活の利便性や経済環境の向上、人材確保を推進する。

 しかし中山間地域などが外れる可能性がある。「小さな拠点」を通じて生活サービスを維持する方向を示したが、地域条件で政策支援に格差があってはならない。同地域の農家数、農地面積、農業産出額はいずれも全国の約4割を占め、食料生産にとって重要だ。集落機能が弱っている地域にこそ、てこ入れが求められる。住民や移住者にとって魅力ある環境をつくり、農山漁村の維持と食料生産の継続・拡大につなげる必要がある。
 

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