台風、地震…怖い停電 太陽光発電 非常時に期待大だけど…

牛舎上に設置した太陽光パネルを指さす畠中代表(千葉県香取市で)

自立運転 切り替え必要 機器不備 蓄電できずに 千葉、北海道の農家


 台風や地震など災害で停電した際に、非常時の電源として太陽光発電を活用する動きが出てきた。停電時にパワーコンディショナー(変電機器)を自立運転に切り替え、酪農では搾乳機や扇風機などの動力源にする。ただ、太陽光パネルを設置する農家からは「自立運転への切り替え方が分からない」「蓄電器がなく夜間は使えない」などと、活用に向けた課題を指摘する声も多い。(関山大樹)

 千葉県香取市。乳牛約120頭を飼育する畠中牧場は、9月の台風15号で起きた停電時に自家発電機と、牛舎の屋根に設置した太陽光発電を非常電源として活用した。

 牧場は売電用として15年前に太陽光発電を導入。停電が起きた翌日、初めて自立運転に切り替えた。電力は子牛用の牛舎の扇風機に使った。ただ、電気をためる蓄電器がなかったため昼間しか使えなかったという。

 代表の畠中登さん(70)は「自立運転への切り替えは業者に依頼したが、普段から使い慣れていないと非常時に自分で切り替えるのは難しいと思う」と話す。

 2018年9月に発生した最大震度7の北海道地震では、全道が停電に見舞われた。JA浜中町管内では「自然エネルギーを使うエコな牛乳を作ろう」と、国の支援も活用し105戸の酪農家らが牛舎などへの太陽光発電を導入してきたが、停電時の非常電源にはならなかったという。

 自立運転機能はパワーコンディショナーに備わるが、コストがかかるため自立運転機能付きの変電機器や、蓄電器を導入した農家が少なかったためだ。

 元々JAは、通常時に牛舎などで使う電力を生み出す目的で太陽光発電を進め、余剰電力は電力会社に販売していた。JAの宮崎義幸営農課長は「蓄電器があっても、非常時に搾乳ポンプを起動する際は蓄電量が一気に減る恐れがあり、長時間、使えるのかなど不安がある」と訴える。
 

価格下げ、使用法周知を


 まとまった農地に支柱を立て、営農を継続しながら上部で太陽光発電をして売電する営農型太陽光発電も各地で広がっているが、災害時の活用には課題が多そうだ。

 日本電機工業会の統計によると、18年度に出荷した変電機器のうち住宅の屋根などに付ける「家庭用」では、ほとんどが自立運転機能を備えている。しかし、営農型発電など容量が10キロワット以上の「非家庭用」では、2割が自立運転機能を備えていなかったという。

 営農型太陽光発電普及協議会の小林昭夫事務局長は「自立運転への切り替え方法が分からなかったり、営農型では家から離れた所に太陽光パネルを設置していたりする場合が多く、非常電源として活用できていないのではないか」とみている。

 太陽光発電に詳しい元東京大学特任教授で、環境経営コンサルタントの村沢義久さんは、災害時の活用も含め太陽光発電は可能性のある分野だと指摘。「政府や関係機関は自立運転機能の災害時の活用方法を発信するなど啓発活動に力を入れていくべきだ。現在は高価な蓄電器を購入しやすい価格に下げていく必要もある」と話している。
 

<ことば> 自立運転機能


 停電時に、太陽光発電による電力だけで家庭などへの電力供給が可能になる機能のこと。一般的にパワーコンディショナーという専用の変電機器に備わっているが、機種によっては機能がないものがある。
 

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