独裁は民主主義を装う 問われる投票の意義 経済評論家 内橋克人

内橋克人氏

 「もり・かけ・さくら」と続いた政権の不祥事に、いま、さらなる続編が後を追っている。現職の経産相、法相と衝撃的な閣僚辞任劇から2カ月足らず、今度は「IR汚職」の突風である。IRとは「カジノ解禁を柱とする統合型リゾート施設」展開のことだ。
 

強権ぶりが露呈


 相次ぐ“事件”に共通して実感されるのは、現政権の統治手法のあまりの強権ぶりではないだろうか。収賄容疑で逮捕された秋元司容疑者は、2018年6月、衆院内閣委員会委員長として「統合型リゾート施設整備法案」を強行採決し、政権の目論見(もくろみ)通り、早期成立の道筋を付けた。

 同委員会の審議はわずか18時間。全251条の大型法案が異様なスピードで立法府を駆け抜けた。3カ月ほど前の世論調査ではカジノ解禁に反対65%、賛成は27%にすぎなかった(共同通信)。“天下ご免の賭博”が世論の反対など「どこ吹く風」。政権の掲げる「成長戦略」の大黒柱として打ち込まれた。秋元容疑者の“功績”が大きい。

 現職議員の逮捕に至る寸前、折しも安倍首相の通算在任日数は今年11月19日で歴代第1位と並び、翌20日からは記録更新の毎日となった。安倍氏の自民党総裁の任期は21年9月末まで。党内では4選論まで飛び交う。数々の“疑惑隠し”が野党、世論の糾弾を浴びる中、前代未聞の最長記録を歴史に刻む日々だ。なにゆえに可能なのか。
 

統治「三つのM」


 超長期の「安倍晋三首相」を可能にした秘訣(ひけつ)として、まずは狡知(こうち)に長(た)けた「3M・統治手法」を挙げておかねばならない。「マネー」のMに始まり、「メディア」「マインド」の2Mを加えた「3M」を自らの制御下に置く政治手法のことである。

 12年12月、衆院選に勝利してスタートした第2次安倍政権は、まずは日銀を“アンダーコントロール”に組み込む作業から手を付けた。デフレ脱却をうたう異次元金融緩和、すなわち例のマネージャブジャブ戦略である。真の狙いは「円安株高」実現の他にない。

 かくて日銀は政府・財政が垂れ流す国債の40%近くの購入を続ける。今年9月末、日銀の総資産は実に569兆円。国内総生産(GDP)550兆円を上回った。ちなみに法人税の引き下げと円安効果が相まって、大企業の内部留保は463兆円にも達した(いずれも19年9月末現在)。詳細は省くが、株式市場でも日銀マネーが存分に飛び交っている。禁じ手の「財政ファイナンス」とどこが違うのか。

 第二のメディアコントロール、第三のマインドコントロールは、もはや説明の要もない。NHK、その他少なからぬ大手メディアが有権者の一票を左右する。

 去年7月、カンボジアで下院総選挙が行われ、フン・セン首相率いる与党・人民党が定数125の議席全てを独占した。82%を超える高い投票率、うち76%の票が人民党に向けられた。

 選挙に20もの野党が参戦したが、総崩れに終わった。5カ月前に行われた上院選挙でもフン首相の人民党は全議席(国王指名の4人を除く)を掌中にした。上下両院を支配下に置く完璧な一党独裁の長期政権が投票を通じて実現する。カンボジアに厳しい視線を浴びせる世界世論に対して「われわれは有権者の投票行動によって選ばれた。多数決は民主主義の原理ではないか」とフン首相は嘯(うそぶ)く。

 「民主主義を装う独裁政権」の続出に世界は揺れている。改めて民主政治とは何か。問い糾(ただ)さねばならない。

 うちはし・かつと 1932年神戸市生まれ。新聞記者を経て経済評論家。日本放送協会・放送文化賞など受賞。2012年国際協同組合年全国実行委員会代表。『匠(たくみ)の時代』『共生の大地』『共生経済が始まる』など著書多数。

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