災害支援の新形態 「農ボラ」に学び横展開

 信州農業再生復興ボランティアプロジェクト(農ボラ)実行委員会は、一般市民のボランティアを受け入れるセンター運営にJAが参画し、早期の農地復旧につながる成果を上げた支援組織だ。JAグループ間で情報共有し、新しい復旧支援の枠組みを横展開すべきだ。

 今は新型コロナウイルス感染防止対応で手いっぱいだが、あと1カ月ほどで日本列島に豪雨リスクの高い時季が来る。近年頻発する大規模災害の記憶が新しい。「明日はわが身」と恐れる農業者は多い。防災の備えと共に万が一、災害に見舞われた場合に一刻も早い復旧を支援する態勢づくりが重要だ。

 その点で学ぶべき事例は、東日本広域で猛威を振るった昨年10月の台風19号の後、長野市内で興った農ボラ実行委による復旧支援活動だ。JAながの、JAグリーン長野、県災害時支援ネットワークなどが関わった。千曲川の決壊で土砂、がれきが大量に流入した長沼地区で約1カ月間、延べ6500人のボランティアが果樹園120ヘクタール、水田50ヘクタールでごみ出しをした。

 東日本大震災でJAグループが「JA支援隊」を組み、3年間で被災地に派遣したのが1万5000人。その4割強に当たるボランティアが短期間に1地区に集まったことになる。人力に頼るしかない農地のごみ出しを早期に完了させ、本格的な復旧工事につなげた。当初、「3年かかる」とみられた復旧は、春の営農にほぼ間に合うまでに進んだ。

 農業被害の場合、JAの職員や青年部員が被災農家の支援に入ることが多い。だが、災害の規模が大きくなると、これでは手に負えない。一般ボランティアを大規模に活用する、もう一段大きな枠組みの構築が求められている。

 ボランティアセンターを開設する社会福祉協議会(社協)関係者によると、ボランティアの支援活動は個人の暮らしの再建が中心。農業を含む産業復旧は対象外のケースがほとんどだという。長野市の農ボラ実行委も一般のボランティアセンターと一線を画す形で運営され、社協やNPO、生協が協力。異例の対応を実現させたのは「農家の力になりたい」という参加したボランティアの声だった。

 運営の中心を担ったJAながのによると、初めは経験不足で戸惑う場面が多かったが、途中から軌道に乗った。終盤には逆に農ボラ実行委から一般のボランティアセンターに融通するケースもあった。農ボラは長野県の「信州協働大賞」の特別賞を3月に受賞した。貴重な経験であり、成果と課題を広くJA関係者で共有してほしい。

 JAグループ内でも新しい動きが起きている。JA福岡中央会は農業ボランティアセンターの設置・運営に向けたコーディネーター人材の育成に取り組む。災害による離農者を一人でも減らすために、全国規模でこの取り組みを広げるべきだ。
 

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