食育月間 体験通じ国産愛用促せ

 食を選ぶ力を持ち、健全な食生活を実践できる人を育てるのが「食育」だ。そこに農業の存在が欠かせないから、JAグループは「食農教育」と呼ぶ。明日から「食育月間」。コロナ禍で高まった食と農への関心を、体験を通じて地場産・国産愛用につなげたい。家庭での「食」を考える機会でもある。

 食育基本法は2005年に制定された。食育を生きる上での基本と位置付け、さまざまな経験を通して知識と「食」を選択する力を身に着けて、健全な食生活を実践できる人の育成を目指す。毎年6月の食育月間は、食育推進基本計画に基づき基本法成立の翌年から設けた。食育を進めるための広報や啓発活動を、国民運動として展開しようというものだ。

 新型コロナウイルス感染の拡大防止のため、今年は第15回食育推進全国大会をはじめ各地の関連イベントの多くが中止となった。各種メディアやインターネット交流サイト(SNS)の活用など、イベント以外の方法での啓発がより重要になる。

 20年度までの第3次食育推進基本計画に掲げた21の数値目標の中で、計画作成時より現状値が下がっているのが、「朝食を欠食する若い世代の割合」と「子どもの割合」だ。学校給食での「地場産物を使用する割合」と「国産食材を使用する割合」も下がっている。21年度から5年間の第4次基本計画の作成では、これらの数値を引き上げる対策が論点になる。

 食育の推進を国民運動とするのに欠かせないのが、基本法に盛り込まれた「様々な経験」だ。食と農との関わり、ひいては文化や地域とのつながりを理解し、自分の生活の中に“食の技術”を定着させるには経験に勝るものはない。

 農水省の食育推進会議専門委員を務める東京農業大学の上岡美保教授は「農業があるからこそ食がある。JAグループの『食農教育』という言葉がふさわしい」と話す。上岡教授が重要視するのが世代ごとの食農教育だ。東京農大の学生は2年次の農家研修を経て、知識を行動に変えられるようになるという。

 大人も含む各世代で、生産現場での経験、すなわち体験活動を広げることが日本農業を守る強い一手となる。コロナ禍により「農産物の輸入はいつストップするか分からない」ことが現実味を増した。今こそ消費者が体験や交流を通して関わる「参加型地域農業」の仕組みづくりが必要であり、急務である。JAグループや農家は、そのような場や仕組みをつくることに力を一層注いでほしい。

 家庭では、性別や年齢を問わず台所に入ろう。そして、自分の食事を用意できる力を身に付けよう。旬の食材を使うことが健康な体をつくり、地場産・国産の愛用運動は食料安全保障につながる。一人一人が「自分の食」を人任せにしない。そのことがコロナ禍の最中とその後を生き抜く力となるはずだ。
 

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