強まる暴風雨に、船長はわれを失っただろう

 強まる暴風雨に、船長はわれを失っただろう。過ぎ去ったはずの台風がそこに▼66年前の秋、函館港を出発した青函連絡船・洞爺丸は、北海道地方を襲った猛烈な台風で沈没した。「天気図」とあだ名されるほどの船長が出港のタイミングを誤ったのは、閉塞(へいそく)前線の通過による晴れ間を、台風の目と勘違いしたためとされる。上前淳一郎さんは、自然が引き起こす「欺瞞(ぎまん)の罠(わな)に落ちた」と『洞爺丸はなぜ沈んだか』で書いた▼まだ気象衛星はなく、気象レーダーもようやく一部で運用に達したばかり。複雑な気象現象を正しく予想することは困難だった。客観的な情報の重要性を知らしめた事故でもあった。死者・行方不明者合わせ1100人を超える、日本海難史上最大の惨事である。水上勉はこの台風被害の凄惨(せいさん)を基に『飢餓海峡』を著した▼きょうは気象記念日。1875年に気象観測が始まった。9年後の初の予報は、「全国一般風ノ向キハ定マリナシ、天気ハ変リ易(やす)シ、但(ただ)シ雨天勝チ」。どのようにも解釈できる曖昧な内容で発信された。船舶の航行に役立ったかは定かでない。今はスパコンを駆使した精度の高い予報で、旅の安全を守る▼衣替えである。防災は日頃の心掛けが肝心。「自分だけは大丈夫」との思い込みも、脱ぎ捨てたい。
 

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