食育白書 知識の実践 楽しさから

 食育推進基本法の施行と栄養教諭制度の創設から今年度で15年。その頃、小学生だった世代が今の20代だ。2019年度の「食育白書」からは、「知識はあるが実践に結び付いてない」この世代の姿が浮かび上がる。背中を押すために「食の楽しさ」を伝え続けよう。

 今の20代の大半は「食育」が広がる時期に育った。白書によると、小学生の頃「食の生産に関わる体験活動をした」「学校で食に関する指導を受けた」という人が、20代ではそれぞれ8割、7割と他の世代を大きく上回る。また、食育に関心がある人は、30代も含めて男女ともに7割程度に上る。

 それなのに、朝食の欠食率が高い。また、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事は健康に良い」と知りつつも、朝食の内容が主食だけという人が30代も含めると半数以上を占める。知識が行動につながっていない。

 なぜか。体験がないからだ。自分一人では朝起きられず、食事を作ったこともなければ、1人暮らしになった時に知識を実践に移せないのは当然だ。起床から出掛けるまで1時間もないので朝食を抜くといった悪循環が垣間見える。暮らし方、働き方と日々の食は直結する。

 女性が働くことへの国民の意識は変化してきた。子育て世代である25~44歳の女性の就業率は78%(19年度)となり、「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」と考える人が、若い世代では男女ともに6割に増えている。

 一方で、家事にかける時間は、男女で差がある。1日当たりで女性の3時間に比べ、男性は40分。この点も意識に行動が追い付いていない。女性が働き続けるには、家族みんなで家事を分担し合うことが必要だ。夫も子どもも、家庭にある食材を見て献立を考え、買い物をし、料理し、家族で一緒に食べて、後片付けをするなど、日常の食に携わることで楽しさが実感できるだろう。その中で、食の技術も自然と身に付いていく。

 地域の食育では、農家やJAの女性組織・青年組織に期待したい。これまでも「食農教育」に取り組み、食と農の大切さを伝えてきた実績がある。「楽しさ」の視点も一層意識し、ファンづくりを続けてほしい。

 白書には、食や食育と新型コロナウイルスの関係についての記述はない。だが外出自粛などで家庭で食事をする機会が増え、健康への関心も高まった。コロナ後を見据えて一人一人が自分の「食」と暮らしを見直し、健康を守るすべを得なくてはならない。食育の知識を行動として定着させるのが近道だ。

 まず家庭で、妻や母親以外が食事を作る日を設けてみよう。毎月19日の「食育の日」から始めてみてはどうか。インターネット交流サイト(SNS)活用が増えている。農業界からはSNSでレシピを提供しよう。農畜産物がどう生まれ、食卓に届くかという物語と共に。

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