[新型コロナ] 食品ロス「もったいない」寄付広がるが… 手も時間もない

タマネギを寄付した福祉施設などからの手紙を読む大平社長(右)ら。「本当は廃棄なんてしたくない」と話す(岡山県笠岡市で)

 新型コロナウイルスの影響で、業務用の出荷先を失ったことなどから発生した食品ロス。食材を寄付する機運も高まる一方、寄付にするには、出荷より手間や調整の負担が大きいなどハードルが高く、廃棄をせざるを得ない農家がいる。市況への影響もあり廃棄は苦渋の決断だが、消費者からの「廃棄するなら寄付するべきだ」との声に、農家自身も「もったいない」と強く感じながら、経営との狭間で悩む。
 

経営との狭間 苦しい決断


 岡山県笠岡市に広がるタマネギの畑。5月末、農業生産法人「エーアンドエス」は、業務用に出荷してきたタマネギ3ヘクタール分、180トンを畑にすき込んだ。市場に出荷することもできたが、大量のタマネギが市場で売買されると「価格の大暴落につながり、地域の農家に迷惑を掛ける」(大平貴之代表)と苦渋の選択で廃棄した。

 廃棄は社員にとって、この上なく悲しい農作業。900万円の損失以上に、精神的なショックが大きかったという。

 同社のタマネギ廃棄のニュースが多くのメディアに取り上げられると、同社には「なぜ廃棄するのか、寄付するべきだ」などといった声が多数、寄せられた。

 しかし同社は既に、こども食堂、福祉施設、高齢者施設などに多数のタマネギの寄付をしてきた。同市農業委員会が調整し、希望した30件以上の施設の人が畑に直接収穫に来るなどして、タマネギ4トン分を寄付。その礼状が現在、各地から届く。

 同社の従業員、田崎友梨さん(29)は「廃棄をしてつらい気持ちの時に、タマネギの寄付先から手紙がたくさん届いて、励まされた」と感謝する。

 しかし、4トン分以上の寄付は難しかった。寄付することは、出荷する以上の相当な労力を要するからだ。「3ヘクタールを収穫して、180トン分箱詰めして、各方面に配送する……。調整する手間や時間はない。畑も次の段取りが迫っている。支援を求める人に、畑に来て収穫してもらうには、さらなる調整もいる」(大平代表)。

 早生のタマネギは、梅雨時も畑に放置しておくと腐ってしまい、廃棄以外に、現実的な選択肢はなかった。同社では、これ以上の廃棄を出さないように、JAや笠岡市の支援を受けてふるさと納税の返納品にするなど、新たな販路確保に懸命だ。
 

調整役の不在 仕組み必要


 コロナ禍では、フードバンクやこども食堂に野菜や食料品など寄付件数は増え、通販サイトなどでの緊急販売なども増えた。しかしそれでも、やむを得ず廃棄した食品や農作物もある。

 農水省は、未利用食品のフードバンクへの寄付を推進するため、寄付できる食品に関する情報を集約し、全国のフードバンクに一斉に発信する事業に着手。農家や食品事業者に配送費の補助も行う。この他、国税庁と農水省は2018年、一定条件の下、廃棄する予定だった食品を寄付すれば全額損金算入として算入できることを明示もしている。

 法人が資産を寄付すれば一定の限度額までしか損金算入できないとの見方があったが、商品廃棄の一環として寄付すれば、全額損金算入でき、経営者にとっても廃棄より寄付が利益があることを整理した形だ。

 大平代表は、国の支援を評価しつつ「政府が廃棄してしまう農作物を買い上げるなど抜本的な対策や、地域ごとの調整者が困っている人たちに届ける仕組みが必要だ」と提起する。

 学校給食の休止に伴い、生乳を処分した東日本の乳業メーカーの代表も同じ思いだ。「賞味期限のある牛乳を冷蔵で郵送する準備の余裕はなかった。借金を背負ってまで寄付することはできない」と苦悩を話す。

 現状では、いくら国の助成があっても寄付の調整や段取りを農家だけがすることになれば、農家にしわ寄せがいってしまう。寄付の方が通常の出荷より手間が掛かるとした上で、「『廃棄ではなく寄付しろ』と簡単に言われるのは悲しい。もっと地域や社会ぐるみの解決策が必要。農家から見ると大量に無料で寄付すると需要が減り、市場価格がさらに厳しくなるという不安もある」と訴える。
 

 

政府主導で環境整備を

 

全国フードバンク推進協 米山広明事務局長


 全国のフードバンクは食品を保管する場所や冷蔵庫などの設備が整っていないところが多く、大量には食品を受け入れられない課題がある。一方、収入に結び付かない野菜などの寄付を農家に強いることはできない。こうした双方の課題に対し、米国では余剰農作物を政府が買い上げ、フードバンクへ提供もしている。農家の手取りも確保でき、日本でも同様の対策ができることを期待している。フードバンクの基盤の整備と並行して行うことが重要だ。
 

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