戦時下の暮らしはひもじさとの闘いでもあった

 戦時下の暮らしはひもじさとの闘いでもあった。戦争の記憶は飢えと結び付いている▼『ボクラ少国民』の著者山中恒さんが、『暮らしの中の太平洋戦争』(岩波新書)で、当時の食事情を紹介している。要はいかに粗食に耐え忍ぶか。「戦時食生活指針」「決戦下の家庭生活」「決戦栄養学」など多くの指導書が、それを物語る。いまの「勝負メシ」とは訳が違う。ぜいたくは敵。「欲しがりません勝つまでは」の精神は、食卓にも及ぶ▼「おいしいものを少しでも多く食べようとする心の隙に(中略)敵が食い込む」(「戦時食生活指針」)。いま風ダイエット本の前書きではない。配給は細り、闇が横行。食品ロスとも無縁で、例えば魚のあらを使った調理例。頭骨と内臓を包丁で細かくたたいてコロッケにする。骨はつぼに入れ塩を加えて魚塩汁に。血液は小麦粉に吸い取らせみそ汁に入れる▼さらに窮乏すると、食用になる虫を紹介。米の代替で「うどんボール」や「興亜パン」なるものも登場する。「台所も戦場」で飽食は悪徳、粗食は美徳だった。戦後75年。いま飽食の時代にあって、皮肉なことに食料自給率は戦時中の半分に満たない▼戦争の記憶が遠ざかる時、戦争が近づくという。食の記憶もしかり。食料事情はすでに非常時に近い。
 

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