戦後75年の誓い 危うさ感じる力持とう

 新型コロナウイルス禍であらわになった同調圧力や相互監視。それらが「戦前・戦中のようだ」との指摘は多い。みんなが一つの方向を向き、一つの価値観の下で暮らし始めるとき、平和は脅かされる。今日で「終戦の日」から75年。戦争につながりかねない“危うさの微粒子”を感じ取る力を、自分の中に育てよう。

 コロナ禍の中で現れた「自粛警察」に対し、ちまたでは「(戦時中の)隣組みたい」という声が聞かれる。こうした行動は危うさを内包している。戦争が起こる際、国だけが道を付けるわけではない。日常の中で一人一人が同調圧力をかけたり、追従したり、自己規制したりすることが、無意識に戦争を肯定することにつながるからだ。

 日本農業新聞は、読者面「あぜみち文芸」選者4人によるウェブ座談会の記事を掲載した。戦前・戦中・戦後を振り返り、暮らしや文化の中で今後、「ことばと表現にどう向き合うか」を考えるという趣旨だ。

 皆が一様に指摘したのが「今の時代の危うさ」。同欄「俳壇」の選者で俳人の宮坂静生さんは“戦争の微粒子”と表現した。選者は、危うさの感知力を磨くのに必要なこととして、世代や価値観による分断を埋める対話、考えや立場の違う他者への想像力、世界の多様性を知ること──を挙げた。また、一方的な物の見方が広まりだしたときに、「疑いを持つこと」(宮坂さん)も極めて重要である。

 今の日本は世界からどう見られているのか。一つの指標となるのが、国際NGO・国境なき記者団が180の国と地域を対象に毎年行っている「報道の自由度ランキング」である。日本は2010年の11位から下がり始め、13年には53位に急落、以降、50~70位台と低迷を続けている。20年も66位だ。

 同記者団は「12年に安倍晋三首相が再就任して以降、メディアの自由が衰えてきている」と分析。要因として、安倍政権による報道への圧力や、政権を批判する記者に対して首相を支持する市民がインターネット交流サイト(SNS)上で攻撃したことを挙げている。戦時下の情報統制や言論統制がどんな惨劇を招いたか。あらためてそれを知るために、本紙くらし面で「渇くことば~戦争と情報統制」を連載中だ。歴史に学ぶ重要性を確認したい。

 異を唱えにくい“空気”を地域や職場、組織でつくっているのは、それを黙認しているその人自身でもある。「自己規制していないか」と自分に問い掛け、必要なときには勇気を持って声を上げ、対話を重ねよう。

 平和を保ち続けるには、8月にだけ戦争を考えるのでは不十分だ。一人一人が感性を磨き、人や社会との日々の関わりの中で、危うさの種や芽を感知し、戦争の教訓を生かして対処しなければならない。その努力を続けることが、「戦後」を終わりのないものにする。
 

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