中山間農業の継承 多様な関わり方 支援を

 高齢化が進み、次代の農業の担い手確保が全国的な課題だ。特に、棚田に代表される中山間地域は平場よりも生産条件が不利で、継承が困難なケースが多い。農業への多様な携わり方を可能とする環境整備など、継承対策が一層重要になっている。

 中山間地域を対象に2000年度に国の直接支払いが始まり、制度を見直しながら20年間続いてきた。また19年には棚田地域振興法が成立し、棚田への支援も明確になった。しかし、さまざまな支援策があっても見通しは明るくはない。中山間地域等直接支払交付金の19年度の交付面積は66万5394ヘクタールで、ピークだった14年度から3・2%減った。急傾斜地での面積の落ち込みが響いている。

 岐阜県飛騨市の種蔵棚田は同支払制度開始の初年度から活用してきたが、当時13戸あった農家が今は3戸に減った。しかも全員が70代以上だ。離農した高齢者の農地を、残った同世代か少し若い世代が引き受けて維持してきたことを示す。こうした高齢者から高齢者への継承は、多くの中山間地域で見られる。

 高齢者間の農地の譲渡で地域農業を維持できた要因として、地元出身の若い世代が折々に帰省し、支えてきたことも挙げられる。静岡文化芸術大学の舩戸修一教授のゼミが静岡県西部の山間の集落で行った調査では、世帯主9人のうち5人の子どもらが集落から40キロ圏にある同県や愛知県の都市部に在住し、月1回は帰省。親の手伝いや生活支援に当たっていた。

 子どもらによる支援は、一方で世代交代の先送りを可能にした。しかし農地の受け手も高齢化している以上、既存の農業の継承はもはや限界に近い。抜本的な対策が求められている。

 対策の一つは、地域出身者のUターンや、都会から移住するIターンだろう。ただ、中山間地域は傾斜が急で、小規模な農地が分散していることなど、平たん地よりも作業効率が低く、農業主体の収入で生計を立てるには難しい場合がある。

 そこで、農業だけではなく、地域資源を生かして他の収入を確保する「小さな起業」や「半農半X」などの取り組みが全国的に広がっている。愛知県設楽町では、農業に携わることも含めて、町の9割を占める森林や水を生かした新たな産業を起こそうと、地域おこし協力隊員が模索している。

 こうした農業への多様な携わり方を進めるには、収入を得るための仕事や雇用の場の確保、生活環境の整備が必要だ。本人の努力だけでなく、地元住民や自治体の理解と協力、国による支援が求められる。

 新たな食料・農業・農村基本計画も中山間地域農業の振興策として、地域特性を生かした複合経営などの推進とともに、本格的な営農に限らない多様な農への関わりを支援する体制づくりを挙げる。現行施策を検証し、国と自治体を通じた農業の継承策を早期に構築すべきだ。

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