人口集中の是正 防災へ地方分散を急げ

 新型コロナウイルス感染の終息はまだ見通せない。新規感染者は減少傾向にあるとはいえ、大都市圏を中心に続いている。感染症を含め災害に強い国づくりのために、都市への人口集中を是正し、地方分散を促す社会基盤を早期に整備すべきだ。

 長期間にわたる新型コロナ禍で、日本の経済は大きな打撃を受けた。2020年4~6月の国内総生産(GDP)は前期比7・9%減。3四半期連続のマイナス成長となった。

 このため政府は、感染拡大防止と経済の立て直しの両立を掲げ、観光支援事業「Go To トラベル」を始め、除外していた東京都も来月追加する。「Go To イート」もこれから本格化し、飲食業者を支援。東京都も23区内の飲食店の営業時間短縮を撤廃するなど、経済回復にかじを切った。売り上げ回復を通じた国産農産物の需要確保にも期待がかかる。

 一方、19日からの「シルバーウイーク」では、高速道路で渋滞が発生し、空の国内線は満席の便も出るなど人の動きが活発になった。今後の感染状況を注視する必要がある。

 新型コロナは、日本の社会経済の在り方に多くの課題を突き付けた。一つが東京をはじめとした大都市圏への人口集中だ。感染拡大の要因となる「密」になりやすい。東京圏は、今年7月に転出超過になるまで、13年以降、転入超過が続いた。これを是正するため政府の「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」は、魅力的な地方大学の実現、地域の雇用創出・拡充による若者の地方定着、大企業などと連携したサテライトオフィスの開設による地方での新しい働き方──を進めるとした。

 企業は「密」を避ける取り組みを始めている。行政も推進する。政府の緊急事態宣言解除後もテレワークやリモートワークなどを継続し、在宅や郊外に設けた拠点で勤務する新たな働き方を模索。坂本哲志地方創生相も会見で、「東京圏への一極集中の是正」を課題に挙げた。政府は来年度、テレワークを推進していく自治体を支援する検討に入った。地方への移住が進めば地域の活力につながる。北海道北見市やニセコ町は、テレワークができる拠点を設け新たな働き方を後押しする。

 防災面からも一極集中の是正には意義がある。台風が大型化し、集中豪雨も多発している。大地震も脅威だ。人口と経済活動が集中したままでは、甚大な被害が生じる危険性がある。

 地方の基幹産業である農業は農家の高齢化、担い手・労働力不足が深刻化している。「田園回帰」の動きを、農業振興にどう結び付けるかが課題だ。都市住民の地方移住への関心はコロナ禍の前から高まっていたが、生活できる仕事に加え、医療機関や買い物、教育の場の確保などが課題に挙がっていた。生活インフラの整備も不可欠だ。コロナ禍が収まっても、地方分散の重要性は変わらない。
 

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