日本農村医学会 健康長寿へ予防重視を

 第69回日本農村医学会が15日に始まる。メインテーマは「未来の地域医療を求めて」。新型コロナウイルス禍による医療機関の経営難は、予防重視へかじを切る必要性を浮き彫りにした。地域医療には、健康寿命延伸への予防プログラムの策定が求められる。地域包括ケアシステムの仕組み作りも必要だ。

 これからの地域医療を考える上で、コロナ禍の影響は外せない視点だ。

 日本農村医学会賞を受賞したJA愛知厚生連足助病院の早川富博名誉院長は、学会誌で「コロナ禍での患者数減少が医療サービス機関の赤字を表出させたことは、現診療体系の経済的脆弱(ぜいじゃく)性を明らかにした」と指摘。疾病治療重視から予防重視への転換を提言した。中山間地で同病院が進めた「いきいき生活支援」事業が背景にある。住民や各団体、病院関係者らで研究会を設け、ロコモ・メタボ・認知症予防教室や配食・栄養サービスを展開した。

 また、早川名誉院長は、在宅医療も「個々の家族によるケアより、地域で看取(みと)るという考え方が必要になる」とし、地域包括ケアシステム構築への意識改革を促す。同システムは、医療・介護・予防・住まい・生活支援を総合的に行う体制のことだ。医療機関や福祉施設、行政やJAなど、多方面の連携が必要になる。

 学会でのシンポジウムや発表には、ITや情報通信技術(ICT)、人工知能(AI)の先進的な活用で「新型コロナ対策にいち早く着手できた」「前倒しで運用できた」との報告がある。ウイルスとの共存が必要な「ウィズコロナ」の時代には、オンライン診療・服薬指導や遠隔面会、電子カルテなどの導入が進むだろう。

 一方、コロナ禍での受診控えなどにより、医療機関の経営は減収と赤字が深刻だ。経営の維持には、国の緊急的な支援が必要である。「地域医療の在り方」は、その上での議論になる。病院が存続できなければ、地域医療も守れない。地域医療が存続し、地域の格差なく一定の医療サービスを受けられることは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)である「すべての人に健康と福祉を」「住み続けられるまちづくりを」に通じる。

 そして、目指すのは一人一人の健康寿命の延伸だ。今回、愛知県JAあいち海部女性部の加藤和奈部長(JA全国女性協会長)が同学会金井賞を受賞した。健全な食と農を地域につなぐ地産地消や食農教育活動、健康寿命を伸ばす「生涯現役健幸(けんこう)活動」、介護予防運動など地道で幅広い活動が評価されたことは意義深い。

 感染防止対策で同学会は初のウェブ開催となった。集まっての議論はかなわないが、オンラインでのやりとりが、日常的な対話の充実につながることを期待する。持続可能な地域づくりに厚生連病院が積極的に関わり、存在感を発揮してほしい。
 

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