20年産大麦の豊作 需給改善へ支援を急げ

 大麦の豊作が続き、販売に苦慮する産地が目立つ。播種(はしゅ)前契約が基本で、新たな売り先を見つけるのは容易ではない。大麦の振興は食料自給率向上に欠かせない。生産意欲の減退を招かないよう、需給改善に向けた支援を国は急ぐべきだ。

 農水省によると、大麦と裸麦を合わせた2019年産の生産量は22万3000トンで、前年産を27%上回った。20年産の統計はまだまとまっていないが、各産地の動向を見ると、豊作となったケースが少なくない。

 麦茶などに使われる六条大麦の産地、JA兵庫南では、ここ2年豊作が続く。19、20年産の10アール収量は共に400キロを超え、16~18年産の平均(218キロ)からほぼ倍増。同JAによると、好天に恵まれたことや麦踏みの回数を増やすなど栽培管理を工夫したことが奏功した。

 豊作は歓迎すべきだが、手放しでは喜べない事情がある。大麦は一般的に、収穫前年の秋ごろに結ぶ播種前契約で販路が決まる。契約数量にはアローワンス(一定の幅)を設け、作柄が変動しても取引量がその範囲内に収まればよい。ただ、アローワンスは上下20%程度の幅で設定されることが多い。それを超えた分の売り先を産地は見つけなければならない。新型コロナウイルス禍による需要の減少もあり、容易ではない。

 同JAでも19、20年産ともにアローワンスを大幅に上回り、新たな販路の確保が必要だ。今夏から、大麦麺や大麦グラノーラといった加工品の開発にも乗り出した。しかし需要をどこまで増やせるか不透明感が強い。

 新たな食料・農業・農村基本計画で国は、食料自給率を30年度に45%に引き上げる目標を設定。達成するため、大麦・裸麦についても生産を23万トンに増やす目標を掲げており、増産が必要である。国は、19、20年産での需給緩和が産地の衰退につながらないようにすべきだ。

 国による必要な支援は何か。検討課題の一つが、用途変更を後押しする対策だ。同JAは、六条大麦を肉用牛の飼料として活用することを検討した。しかし、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)を受けるには主食向けに販売する必要があり、飼料用は対象外となってしまうため断念した経緯がある。

 豊作時の「出口対策」も検討課題だ。みそなどに使われる裸麦産地を抱えるJAグループ愛媛は今月、豊作で売り先確保が難航しているとして、調整保管・市場隔離などを実施するための対策を自民党に要請した。

 また輸入品から国産に切り替えるための需要拡大対策も重要だ。麦・裸麦の自給率は、豊作だった19年度でも12%である。

 コロナ禍の影響もあって米の需要が減少し、需給緩和が懸念されるため政府・与党は例年より前倒しで米対策を論議。21年産では米の生産調整の大幅な拡大が必要となる。大麦の需給安定対策を、短期と中長期の両方から早期に示すべきだ。

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