米の適正量大幅減 危機感共有産地全体で

 2021年産米の需給均衡には、過去最大級となる10万ヘクタール規模の生産調整の強化が必要だ。米価の安定には、需給改善の見通しを市場に早期に示すことが重要である。まず、需給状況の厳しさを産地全体で共有したい。その上で、産地の取り組みとメリットの拡充で、転作拡大の実効性を高めなければならない。

 需給緩和への危機感から農水省は、需給見通しを例年より1カ月以上早く示した。人口減に新型コロナウイルス禍が加わり需要が大きく減少。一方、20年産の作付けは過剰気味で作柄も良かった。結果、生産量が需要量を上回り、来年6月末の民間在庫量を221万~227万トンと予測。米価が2年で60キロ4000円以上下がった14年産当時の水準に膨らむ。そこで21年産の適正生産量を、20年産の生産量から56万トン減らした。新潟や北海道の生産規模に相当する。

 20年産の概算金や相対取引価格は今のところ小幅下げにとどまっている。しかし過剰感を払拭(ふっしょく)できなければ、再生産が困難な水準にまで大きく下落しかねない。JAグループは、20万トンを来秋以降に持ち越す計画販売に取り組む。効果を上げるには、21年産の生産を適正量に抑える必要がある。

 大幅な転作拡大の実現には全国での取り組みが不可欠だ。大事なことは、JAグループ・商系問わず生産者、集荷業者、卸、実需者、行政など米の関係者全員が一緒に、難局を乗り越える方策を考えることだ。20年産で抑制が不十分だった産地は、要因の検証が重要になる。

 今後、各県の農業再生協議会が生産の目安を設定、提示する。しかし「実際どこまで減らせるのか」と困惑の色が濃い。主食用米を飼料用や加工用、他の作物などに切り替えるか生産者が判断する基準は、やはり手取りだ。主食用と遜色のない収入を得られるかが鍵を握る。

 国による経済的な後押しが要る。政府・与党は検討を急ぐべきだ。同省は、産地交付金を含む水田活用の直接支払交付金の21年度予算概算要求額を、20年度と同じにした。果たして、大規模な転作拡大に対応できるのか。地域・生産者に目安を提示し、それに応じた作付けを呼び掛けるには、支援策をセットで示す必要がある。予算の増額もためらってはならない。

 コロナ禍による業務需要の減少も需給緩和の要因だ。しかし補正予算の編成時には表面化しておらず、現状では効果的な改善策がない。感染状況によっては需要がさらに減る懸念がある。追加対策の検討が急務だ。

 生活不安がコロナ禍で広がる中での財政出動には、国民の納得感が欠かせない。パックご飯や輸出などニーズのある分野への米の供給拡大、飼料用米、麦・大豆といった戦略作物や野菜をはじめ高収益作物への転換、生産コストの低減──。こうした、食料自給率の向上と米の需給と価格の中長期的な安定につながる取り組みを求めたい。
 

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