「関係人口」の創出 農村に呼ぶ知恵共有を

 その地域に住んでいなくても継続して訪れる「関係人口」は、過疎化が進む農山村に活気を吹き込む可能性を秘める。地域外から人を呼び交流を定着させるには、受け入れ側の農山村が乗り越えなければならない課題は多い。経験や知恵、ノウハウを共有できるかが鍵を握る。

 国土交通省の推計では、全国で1828万人が関係人口として、日常の生活圏以外の特定地域を訪れている。ただ、東京都に住む関係人口のうち「農山漁村部」を訪問しているのは4・7%にすぎない。訪問先は市街地に集中し、住宅地が37・9%、商業集積地やオフィス街などが28・5%だった。農山村の魅力を伝え、関係人口として呼び込む方策が問われている。

 関係人口を増やすには、詳細なニーズの把握が欠かせない。関係人口の形態は多様だ。同省によると、地域おこしにつながる活動の運営に参加・協力する「直接寄与型」、援農を含む「現地就労型」、交流イベントに参加する「参加・交流型」、飲食や趣味の活動をする「趣味・消費型」などに分けられる。

 受け入れ側の農山村には、地域の将来像を描き、実現に向けてどのような層と、どう交流・協働するかを示すビジョンが必要だ。ビジョンの策定には、地域の幅広い層が参画することが大切である。関係人口など地域外の人との連携も想定される。

 またビジョンの実践には、地域の魅力を客観的に分析し、企画を立案、運営できる人材が必要だ。住民はもちろん、自治体や地域おこし協力隊、JAなど、地域に根差して活動する人や組織との協働が重要になる。

 もう一つ、避けて通れない課題が新型コロナウイルス対策だ。重症化のリスクが高い高齢者が多い農山村では、これまで続けてきた都市農村交流を中止したり、縮小したりするケースも少なくない。農山村体験に関わってきた地域からは「子どもの声が聞けなくなってしまい、寂しい」との声も聞かれる。

 交流を維持するのが難しくなっている中で、コロナ禍に対応した交流方法を探る動きが出てきた。直接対面しなくても、画面越しに話ができるオンライン交流が始まっている。

 課題を乗り越えるには、それぞれの地域で解決策を模索するのにとどまらず、全国規模でアイデアを共有することも重要だ。知恵を出し合い、ノウハウを磨く場づくりが求められる。

 関係人口の創出・拡大に向け、官民連携の全国協議会として政府主導で設立した「かかわりラボ」には、300超の自治体やJA全中などの民間団体が参加。インターネット交流サイト(SNS)を通じ、会員間の交流も始まっている。

 会員間の情報交換は、優れた企画や運営手法を生み出すきっかけにもなる。関係人口に対応する各地域の体制づくりと取り組みに役立つよう、政府には同協議会での情報交換をより活発にしていくことが求められる。

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