鳥インフル福岡で 香川以外は今季初 兵庫も疑い
2020年11月26日

鳥インフルエンザウイルスの検出を受けて防疫活動が進む発生農場(福岡県提供)
農水省と福岡県は25日、同県宗像市の肉用鶏の農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。今季9例目で、福岡県では初めての発生となる。県は同日早朝から、この農場が飼育する約9万3500羽の殺処分を開始。移動制限区域などを設置し、周辺では車両消毒などの防疫措置を始めた。また農水省は同日、兵庫県淡路島内の養鶏場で簡易検査陽性の鶏を確認したとして、ウイルスの遺伝子検査を進めていることを明らかにした。
福岡県によると、24日午後1時40分、発生農場が死んだ鶏の増加を県中央家畜保健衛生所に通報。農場には12棟の開放鶏舎があり、死亡鶏が見つかったのはこのうち1棟だった。農場での簡易検査で午後4時30分に10羽中9羽が陽性と判明。同衛生所で25日、高病原性の疑いがあるH5亜型の疑似患畜と確認した。
この農場の半径3キロ圏内の移動制限区域には、養鶏農家1戸が1万7000羽を飼育。半径3~10キロ圏内の搬出制限区域内では、6戸が計12万4000羽を飼う。
農水省は25日、鳥インフルエンザ防疫対策本部を開催。野上浩太郎農相は「既に発生した県だけでなく、全都道府県を通じて飼養衛生管理基準の順守を指導していきたい」と強調した。
今季の高病原性鳥インフルエンザはこれまで、香川県内の養鶏場で1~8例目が発生している。
感染が確定すれば福岡県では初、九州全体では約4年ぶりの発生となる。関係団体やJAグループは感染拡大を防ごうと、緊張感を高めている。
JAグループ福岡は25日、家畜伝染病対策本部幹事会を開いた。委員ら5人が集まって発生状況や経過を共有。十分な情報収集や、県から人的支援の要請があった場合の対応などを確認した。
発生農場で飼う鶏の一部は、トリゼンフーズ(福岡市)の銘柄鶏「華味鳥(はなみどり)」として、出回る予定だった。
福岡県養鶏協会の深町敏生常務は、県内で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜が見つかったことを受け、「(香川県の事例があり)気を引き締めていた直後の発生だ。正直言って驚いた」と漏らす。
会員の農家らは「覚悟はしていた。自分たちでできる対策を徹底していく」と受け止めているといい、深町常務は「冷静に対応するように農家に伝えている」と話す。
同協会は、福岡県の農家28戸や飼料メーカーなど養鶏関係者が加盟する。鶏舎敷地内への石灰散布や、防鳥ネットに破れがないかの確認をするよう会員に通知。「緊張感を持ちながら予防対応してほしい」としている。
農研機構は25日、今月5日に香川県三豊市、8日に東かがわ市で発生を確認した今季1、2例目の高病原性鳥インフルエンザウイルスが、昨年冬に欧州連合(EU)で流行したウイルスとほぼ同じであることをに明らかにした。10月に北海道紋別市で野鳥のふんから見つかったウイルスともほぼ同じだったことから、渡り鳥が海外から持ち込んだとの推測を強める結果が出た。
今季1、2例目の農場の死亡鶏から分離した鳥インフルエンザウイルスは、H5N8亜型の高病原性と確認。両ウイルスは99・5%以上同じ遺伝子だった。2019年冬にEUの家禽(かきん)や野鳥から分離したウイルスとは、香川県の2農場のウイルスを比べたところ、98・4%以上の高い相同性があったという。
動物衛生研究部門は、渡り鳥がEUからウイルスを運んできたと推定する。香川県の2農場のウイルスと、北海道紋別市で10月に見つかったウイルスを比べたところ、99・1%合致した。そのため、ウイルスはEUから渡り鳥の営巣地であるシベリアに運ばれて、渡り鳥の間で拡散された後、日本に運ばれたとみている。
H5N8亜型のウイルスは今季世界的に拡大しており、今月だけでも10カ国で確認されている。こうした状況ついて、同部門越境性感染症研究領域では「マガモなどの渡り鳥は鶏と違って、感染してもすぐに死ぬわけではない。野鳥が感染した状態で排せつを続けるなどして、ウイルスが拡散しているのではないか」と推測する。
今回解読した遺伝子情報は、近日中に公共遺伝子データベースで公開する。同部門は今後、ウイルスの家禽への感染性や、ウイルス排せつなどを精査していく予定だ。
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があるが、鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスが引き起こす疾病だ。日本では高病原性鳥インフルエンザと低病原性鳥インフルエンザ、鳥インフルエンザの三つに分類している。
発生が疑われる養鶏場を調べる場合、簡易検査でA型インフルエンザウイルスかどうかを判定する。A型の場合、その後の家畜保健衛生所などによる遺伝子検査で、H5亜型、H7亜型など高病原性が疑われれば、疑似患畜として殺処分を始める。その後、詳細な遺伝子分析により、さらに詳しくウイルスの型が確定する。
福岡県によると、24日午後1時40分、発生農場が死んだ鶏の増加を県中央家畜保健衛生所に通報。農場には12棟の開放鶏舎があり、死亡鶏が見つかったのはこのうち1棟だった。農場での簡易検査で午後4時30分に10羽中9羽が陽性と判明。同衛生所で25日、高病原性の疑いがあるH5亜型の疑似患畜と確認した。
この農場の半径3キロ圏内の移動制限区域には、養鶏農家1戸が1万7000羽を飼育。半径3~10キロ圏内の搬出制限区域内では、6戸が計12万4000羽を飼う。
農水省は25日、鳥インフルエンザ防疫対策本部を開催。野上浩太郎農相は「既に発生した県だけでなく、全都道府県を通じて飼養衛生管理基準の順守を指導していきたい」と強調した。
今季の高病原性鳥インフルエンザはこれまで、香川県内の養鶏場で1~8例目が発生している。
「冷静に…」防疫を徹底 福岡
感染が確定すれば福岡県では初、九州全体では約4年ぶりの発生となる。関係団体やJAグループは感染拡大を防ごうと、緊張感を高めている。
JAグループ福岡は25日、家畜伝染病対策本部幹事会を開いた。委員ら5人が集まって発生状況や経過を共有。十分な情報収集や、県から人的支援の要請があった場合の対応などを確認した。
発生農場で飼う鶏の一部は、トリゼンフーズ(福岡市)の銘柄鶏「華味鳥(はなみどり)」として、出回る予定だった。
福岡県養鶏協会の深町敏生常務は、県内で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜が見つかったことを受け、「(香川県の事例があり)気を引き締めていた直後の発生だ。正直言って驚いた」と漏らす。
会員の農家らは「覚悟はしていた。自分たちでできる対策を徹底していく」と受け止めているといい、深町常務は「冷静に対応するように農家に伝えている」と話す。
同協会は、福岡県の農家28戸や飼料メーカーなど養鶏関係者が加盟する。鶏舎敷地内への石灰散布や、防鳥ネットに破れがないかの確認をするよう会員に通知。「緊張感を持ちながら予防対応してほしい」としている。
ウイルス渡り鳥拡散か 欧州由来と酷似 農研機構
農研機構は25日、今月5日に香川県三豊市、8日に東かがわ市で発生を確認した今季1、2例目の高病原性鳥インフルエンザウイルスが、昨年冬に欧州連合(EU)で流行したウイルスとほぼ同じであることをに明らかにした。10月に北海道紋別市で野鳥のふんから見つかったウイルスともほぼ同じだったことから、渡り鳥が海外から持ち込んだとの推測を強める結果が出た。

動物衛生研究部門は、渡り鳥がEUからウイルスを運んできたと推定する。香川県の2農場のウイルスと、北海道紋別市で10月に見つかったウイルスを比べたところ、99・1%合致した。そのため、ウイルスはEUから渡り鳥の営巣地であるシベリアに運ばれて、渡り鳥の間で拡散された後、日本に運ばれたとみている。
H5N8亜型のウイルスは今季世界的に拡大しており、今月だけでも10カ国で確認されている。こうした状況ついて、同部門越境性感染症研究領域では「マガモなどの渡り鳥は鶏と違って、感染してもすぐに死ぬわけではない。野鳥が感染した状態で排せつを続けるなどして、ウイルスが拡散しているのではないか」と推測する。

ウイルス型 三つに分類
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があるが、鳥インフルエンザはA型インフルエンザウイルスが引き起こす疾病だ。日本では高病原性鳥インフルエンザと低病原性鳥インフルエンザ、鳥インフルエンザの三つに分類している。
発生が疑われる養鶏場を調べる場合、簡易検査でA型インフルエンザウイルスかどうかを判定する。A型の場合、その後の家畜保健衛生所などによる遺伝子検査で、H5亜型、H7亜型など高病原性が疑われれば、疑似患畜として殺処分を始める。その後、詳細な遺伝子分析により、さらに詳しくウイルスの型が確定する。
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ベトナム人を直接雇用 正職員1人、作業員2人 JAゆうき青森
青森県のJAゆうき青森は、ベトナム人3人を同JAでは初の職員として雇用した。雇用したのは正職員1人と作業員2人。いずれも日本人職員の高齢化に伴い、次世代の職員として知識や技術の継承を担う。3人はJA所有の寮「耕心館」で、外国人技能実習生ら18人と共同生活を送りながら、酪農振興センターで乳用雌子牛の育成や飼養管理、草地管理の業務を行う。
正職員として雇用されるのはヴー・ディン・ザンさん(24)。……
2021年01月25日
内閣支持が急落 コロナ対策で成果必要
日本農業新聞の農政モニター調査で菅義偉内閣の支持率が急落し、政権発足から3カ月余りで不支持率が上回った。新型コロナウイルス感染拡大防止対策と農業政策ともに評価が低いことが反映した。支持の回復には、感染防止と、農家を含む事業者の経営支援を最優先し、成果を上げることが不可欠だ。
農政モニター調査は昨年12月中下旬に行った。内閣支持率は44%で、発足直後の9月の前回調査から18ポイント下落し、不支持率は56%で同20ポイント上昇した。不支持は、首相の指導力のなさや信頼できないことなどが理由だ。新型コロナの感染拡大防止に向けた対応を「評価しない」との割合も高まり、7割になった。経済回復を重視し、感染防止対策が後手に回ったと国民から見られているといえそうだ。
農業政策でも「評価しない」(45%)が「評価する」(26%)を上回る。新型コロナ対策の経営支援も「評価しない」が6割で、評価するの2倍近い。
年が明けても感染拡大に歯止めがかからず、政府は11都府県に緊急事態宣言を再発令するに至った。飲食店の営業時間の短縮などで農畜産物の需要減少が心配され、すでに花きや高級果実は値を下げている。政権への信頼の低下が感染防止対策の不徹底につながり、感染者の増加が政権への不信感を生む。
こうした負の連鎖の中で農業経営も打撃を受けている。調査では、農業生産をしている人のうち、感染拡大の影響が続いているとの回答が5割を超えた。
負の連鎖を断ち切るには、時短営業を行う飲食店などへの十分な支援を含め感染防止対策に最優先で取り組み、併せて農畜産物の需要減少などで影響を受けた農家を徹底して支え、目に見える成果を出す必要がある。
首相肝いりの農林水産物・食品の輸出額5兆円目標の達成を巡っては「達成できない」と「過大だ」が4割を超え、やや懐疑的といえる。一方で「対策次第」が3分の1だった。輸出に農家が積極的になれるかどうかは、政策にかかっている。
日米貿易協定や環太平洋連携協定(TPP)、日欧経済連携協定(EPA)といった大型貿易協定については、程度に違いがあっても、9割近くが国内農業に「マイナスの影響がある」と予想する。影響の把握・分析をきめ細かく行い、必要に応じて対策を拡充・強化しなければ農政不信につながりかねない。
また、21年産主食用米の需給対策について「評価する」は1割強にとどまり、「課題があり見直しが必要」が4割近かった。米政策の改善では、転作推進のメリット拡充や生産費を補う所得政策の確立、生産資材の価格引き下げと米の消費喚起を求める声が強い。過去最大規模の6・7万ヘクタールの作付け転換を実現するには、米価下落への危機感の共有と対策の丁寧な説明で農家の理解を得ることが重要だ。併せて、農家視点での現行政策の検証も求められる。
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2021年01月21日

直売所連携で協定 農産物の需給拡大へ 徳島7JA県など
徳島県内の7JAと県、中国四国農政局は21日、県産農産物の需要と供給を拡大するための協定を徳島市で結んだ。直売所間で連携を進め、効率的な物流網の構築や、相互に農産物を直売所で販売する体制をつくる。新型コロナウイルスの影響で都市圏の販売が振るわない中、地産地消へ回帰するための足掛かりとする。……
2021年01月22日

みどりか麺 佐賀県伊万里市
佐賀県伊万里市は、県内有数の小ネギの産地。「みどりか麺」は、同市産小ネギの規格外品など未利用資源を練り込んで作った乾麺だ。
小ネギを使った麺というアイデアは、地元高校生の農産加工品研究によるもの。JA伊万里と地元企業が共同開発し、商品化した。ゆでた麺は鮮やかな緑色でさっぱりとした味わい。「ネギが苦手な人にも食べやすい」と好評だ。
ラーメン、パスタなどさまざまな方法で楽しめる。JAは「伊万里産小ネギを好きになってもらいたい」と力を込める。
JA管内の直売所などで販売している。1箱(2束)486円。問い合わせはJA営農畜産部、(電)0955(23)5560。
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2021年01月25日

特定生産緑地移行 都市農業振興へ勝負の一年 行政と連携集中対応 JAグループ
30年間の営農継続などの条件で税制優遇措置を受ける生産緑地の多くが2022年に指定30年を迎える。JAグループは都市農業振興に向け、同措置を引き続き受けられる特定生産緑地への移行を進める考え。指定30年を過ぎると移行はできないため「21年の取り組みが鍵を握る」とし、JAに集中的な対応を呼び掛ける。神奈川県のJAはだのは管内の農地保全を目指し、申請支援に力を入れる。(石川知世)
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2021年01月21日
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大雪被害の新潟県を視察 営農再開へ支援強調 農相
野上浩太郎農相は23日、昨年12月からの記録的な大雪で農業被害が発生した新潟県の南魚沼市と上越市を視察した。両市で倒壊した育苗ハウスを視察後、上越市で行政やJA関係者、農家らと意見交換。春の営農に向けた支援を求める要望があり、野上農相は「施設の撤去や再建、種子や苗の確保、果樹の植え替え、畜産被害の対応などの支援が必要だ」と述べた。
南魚沼市では、JAみなみ魚沼の育苗ハウスを視察。……
2021年01月24日
富山で鳥インフル 14万羽殺処分 16県目
農水省と富山県は23日、同県小矢部市の採卵鶏農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。県は同日から採卵鶏約14万1000羽の殺処分など防疫措置を始めた。高病原性と確認されれば今季38例目で、同県の農場での発生は初めて。全国では16県目となる。
発生農場では、22日に約2000羽の死亡を確認して通報。23日午前8時に高病原性の疑いがあるH5亜型と判定した。県や自衛隊など720人態勢で殺処分を始めた。県によると、3、4日かかる見通しという。
発生農場から半径3キロ圏内の移動制限区域には養鶏場はないが、半径3~10キロの搬出制限区域には4戸が約72万3000羽を飼育している。
同日は宮内秀樹農水副大臣が新田八朗知事とウェブ会談で対応を協議。鳥インフルエンザ防疫対策本部で、野上浩太郎農相は飼養衛生管理基準の徹底を訴え、勧告や命令を経ても「基準を順守しない者に対して、県による命令違反者の公表を実施するよう国が指示するなど、家畜伝染病予防法に基づく措置を厳格に適用していく」と強調した。
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2021年01月24日
食料供給確保へ連携 気候変動にも対応 閣僚宣言を採択 ベルリン農相会合
世界の90の国・国際機関が参加したベルリン農相会合が22日夜、テレビ会議形式で開かれた。新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動への対応が世界的な課題になる中、食料供給の確保に向けて連携を強化することで一致。食料価格の乱高下につながる輸出規制などの措置の制限、持続可能な農業生産に向けた国内農政の改革など、各国に求める行動をまとめた閣僚宣言を採択した。
同会合は、ドイツ政府主催で2009年以降、毎年開いている。今回のテーマは「パンデミック(世界的大流行)や気候変動の状況下で、いかに世界の食料供給を確保するか」。日本から出席した野上浩太郎農相は、人と家畜に共通する感染症を含めた「将来のパンデミック防止」の分科会で議長を務めた。
閣僚宣言では、新型コロナ禍の中で食料供給に努める農家らに「深い感謝」を表明。一部の国が食料の輸出を規制したことを念頭に、「貿易の不必要な障壁や、世界の食料供給網に混乱を生じさせてはならない」「食料価格の過剰な乱高下につながりかねない、いかなる措置も行われないよう注意する」などと明記した。
持続可能な食料供給と気候変動への対応の両立を重視する方針も打ち出した。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の目標達成に向けて、「市場と規制措置を含む国内政策を実施する」と表明。化石燃料の使用を削減する生産方法や作物の開拓を支援する。新たな技術は、特に小規模農家が導入しやすい価格にする必要性を強調した。
野上農相は、鳥インフルエンザなど越境性の動物疾病の感染拡大が食料安全保障のリスクを高めるとの考えから、人や動物の保健衛生を一体的に見る手法が重要と指摘。農林水産業の生産力向上と環境保全を両立するため、技術革新と投資を促す必要性を訴えた。こうした考え方も閣僚宣言に盛り込まれた。
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2021年01月24日
輸出で地方空港を活用 米から野菜へ転換支援 首相
菅義偉首相は22日の参院本会議の代表質問で、農林水産物・食品の輸出拡大のため「輸出対応型の集荷施設を整備するとともに、地方空港の活用を進める」と述べた。公明党の山口那津男代表への答弁。米政策を巡っては余剰米の買い上げを否定し、需給均衡に向けて「野菜などの高収益作物への転換を支援していく」と述べた。共産党の小池晃書記局長への答弁。
輸出拡大に関して、首相は「(輸出向け)産地の育成と合わせ、集積拠点や効率的な輸送ルートといった物流基盤の強化が重要だ」とも述べた。……
2021年01月23日
緊急事態で農産物価格低下 「生産者を下支え」 農相
野上浩太郎農相は22日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令の影響で、花きなど一部の農産物の価格が低下しているとの認識を示した。「生産者の下支えを図りたい」と述べ、2020年度第3次補正予算の事業で販売促進を支援する考えを示した。
野上農相は、緊急事態宣言による外出の自粛や飲食店の営業時間の短縮で、ホテルや贈答向けのメロン、外食向けの大葉・ワサビといったつま物の需要が減少し、「価格が下がり始めている」と述べた。……
2021年01月23日

配合飼料高騰 長期化に農家恐々 負担増へ先手置き換え急ぐ 食べ残し削減徹底
トウモロコシや大豆など穀類相場の高騰で、国内で配合飼料の供給価格が上昇しているため、畜産現場に長期的な影響が及ぶ可能性が出てきた。JA全農によると、1~3月期の配合飼料供給価格は昨年10~12月期に比べ、全国全畜種総平均で1トン当たり3900円値上げされている。産地は、年内は高値が続く可能性があるとして、代替飼料の活用など新たな対策を模索し始めた。(関山大樹、中川達己)
北海道中標津町のTMR(完全混合飼料)センター「とうほろDairyCenter」は、配合飼料に大豆やトウモロコシなどを混ぜた混合飼料を作り、地域の酪農家の乳牛約1250頭に供給している。だが、飼料や原料を貯蔵する12個のタンクのうち現在、大豆だけが空の状態だ。
今冬、大豆を取引するメーカーに1トン当たり5000円の値上げを打診された。従来通りに飼料生産をした場合、年間400万円の負担増になる。代替策として、飼料の主要なタンパク源を加熱大豆から、タンパク含有率のやや低い「コーングルテンフィード」に置き換えた。
センターは大豆の他、トウモロコシ、しょうゆかす、配合飼料なども使う。代表の竹村聡さん(57)は「このままだと値上がりでさらに経費が増えるため、タンパク源を替えて早めに対策を打った」と説明する。
芽室町で肉用牛約4000頭を飼養する大野ファームは月700トンほど配合飼料を購入しており、飼料高騰前に比べ、毎月210万円経費がかさんでいる。代表の大野泰裕さん(56)は「配合飼料はすぐ置き換えられるものではないが、長期的に影響が続いた場合を考え、国産で置き換えられるものがあれば少しずつ替えていく」と見据える。
九州でも畜産農家が対応に苦慮する。飼養頭数50~100頭規模の養豚農家が多い宮崎県のJA都城では「豚の餌の食べこぼしを減らすなど、餌を無駄にしないこれまでの対策を継続し、徹底するよう呼び掛ける」(養豚課)としている。
穀類の国際価格の基準となるシカゴ先物相場では20日(米国現地時間)、トウモロコシが1ブッシェル5・22ドル。大豆も1ブッシェル13・70ドル。昨年1月の同相場はトウモロコシが同3ドル台、大豆は同8ドル後半~9ドル台で推移しており、今年は高値が続く。
相場高騰は昨年8月以降、南米や米国など主産地での高温乾燥や暴風雨による生育不良が原因。中国で飼料用の需要が増え、旺盛な輸入が続くことも影響した。
米国農務省が1月12日に発表した需給予測では、今年8月末の大豆の期末在庫は全需要量の3・1%と極めて低い水準に落ち込む見込み。穀類の需給逼迫(ひっぱく)が続けば、国内の配合飼料供給価格が高止まる可能性がある。
一方、1~3月期の配合飼料安定基金の補填(ほてん)額の決定は4月中旬を予定。発動されれば、5月末に支出される。
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2021年01月22日

千葉 アヒルで鳥インフル 出荷先6道府県 処分完了
農水省と千葉県は21日、同県横芝光町のアヒルふ卵農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認し、約8000羽を殺処分した。今季37例目となる。アヒルのひなの出荷先である疫学関連農場は北海道、宮城、茨城、埼玉、大阪、奈良の6道府県9農場に及び、同日に各自治体が約6700羽の殺処分を終えた。
発生農場が20日、産卵率の低下を県に通報。農水省によると、産卵率低下は高病原性鳥インフルエンザでも起きる症状で、防疫指針にも記載がある。21日に遺伝子検査で高病原性の疑いがあるH5亜型と判定された。
千葉県は発生農場で防疫措置を実施。同農場から半径3キロ圏内の移動制限区域には5戸が約17万羽を、半径3~10キロ圏内の搬出制限区域には25戸が約126万羽を飼う。
疫学関連農場では、発生農場が7日間以内に供給したひなを疑似患畜とし、同じ鶏舎などで管理するアヒルを殺処分した。疫学関連農場周辺では、移動制限・搬出制限区域を設けていない。
出荷先も殺処分 拡散防止へ厳重警戒
アヒルのひなの出荷先道府県では、ひなを疑似患畜として同日中に殺処分を完了。当該農場の家禽(かきん)の移動を禁止するなど、対応に追われた。
埼玉県は同日、県内2カ所に出荷されていたアヒル2159羽の殺処分を終えた。対象は行田市の879羽、春日部市の1280羽。2月5日まで2農場の全ての家禽の移動を控えるよう求めた他、農場の出入り口を1カ所に制限し、農場外に物品を搬出しないよう要請した。
茨城県も、かすみがうら市の1農場、古河市の2農場で計2884羽の殺処分をした。対象外の約8600羽は移動を禁止し、14日間の健康観察を経て異常がなければ、2月5日にも解除する。
年間700万羽を加工する茨城県の食鳥処理会社の関係者は「ウイルスを持ち込まれては加工処理も止まってしまう。改めて処理道具の熱処理や出入り口、車両の消毒など、予防対策を徹底していくしかない」と話す。
北海道は、赤平市の農場のアヒルのひな637羽を疑似患畜と決定し、21日午前1時44分に殺処分を完了した。同農場では食用アヒル約4000羽を飼養。ひなは19日に到着し、単独の鶏舎で飼っていた。
道は21日、家畜伝染病予防法に基づき同農場に対し、家禽などの移動を禁止し、毎日の死亡羽数を空知家畜保健衛生所に報告するよう命令した。
宮城県は、角田市の養鶏場が15日に導入したアヒル517羽の殺処分と農場の防疫措置を、21日朝までに完了した。養鶏場では約7000羽のアヒルを飼っており、殺処分対象外のアヒルも検査と経過観察を行う。移動制限区域などは設けず、周辺鶏農家へ情報提供をした。
奈良県御所市の農場では21日、全205羽の殺処分・防疫措置が完了した。同農場ではアヒル約2000羽を飼養。当該のひなは複数ある鶏舎の1カ所で飼っていたため、残る家禽とは接触がないという。
大阪府も、府内の農場が購入したひな326羽を殺処分し、21日午後0時45分に防疫措置を終えた。府内の農場での疑似患畜確認は今季初めて。府は警戒の強化を呼び掛ける。
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2021年01月22日
生物多様性保全戦略 流通・消費者も一体で 来年度改定へ新項目 農水省
農水省は、生物多様性の保全方針を示す戦略を2021年度中に改定する。5月に中国で開かれる生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、新たな世界目標が決まることを踏まえる。これまで3回の有識者検討会を開き、ビジョンや目次案などを議論。現行戦略は生産者向けの記述が中心だったが、新戦略は流通、消費まで関係者一体となった取り組みを促す内容となりそうだ。
同戦略は07年に初めて策定し、農薬や肥料の適正使用、農業生産工程管理(GAP)の普及といった施策の展開を盛り込んでいる。今回が2回目の改定で、COP15を受けて決める国家戦略にも反映させる。これまでの議論で、30年に向けた戦略のビジョンは「農山漁村が育む自然の恵みを生かし、環境と経済がともに循環・向上する社会」とする方向となった。
18日の検討会第3回会合では、目次案などを議論。現行の戦略は生産者向けの記述が中心だが、同省は新たに流通業者、消費者向けの項目の新設を提起。環境に配慮した農産物の調達や、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの削減などを促すとした。
農林水産関連のコンサルティングなどを手掛ける、いきもの株式会社の菊池紳代表取締役は「流通業者が生物多様性に関わるには、それに取り組む生産者から優先して調達するのが一番」と指摘。生産者との連携を記述するよう求めた。立教大学特任教授の河口真理子氏は「生物多様性を守る最前線にいる生産者を応援しないと何も始まらない。リレーをつないでいるのが流通、小売りという位置関係も書いてほしい」と強調した。
次回の会合は3月上旬を予定。戦略本文などを検討する。
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2021年01月22日
米、輸出へ「新JAS」 23年産めざし検討会議 農水省
農水省は20日、農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会を開き、農産物検査や米の流通に関する見直し項目について、今後の具体的な検討の進め方を示した。米の輸出拡大や高付加価値販売に向けた新しい日本農林規格(JAS)の制定については、2023年産米からの実現を目指して、検討会議を設ける。……
2021年01月21日
家伝法の課題検証を 鳥インフルで自民、PT設立へ
自民党は20日、鳥インフルエンザ等家畜防疫対策本部(本部長=江藤拓前農相)の会合を開いた。議員からは、県による対応水準のばらつきの是正や、十分な埋却地の確保の徹底に向け、国の対応強化を求める意見が出た。江藤本部長は「法律の問題点はないのか」と述べ、現行の家畜伝染病予防法(家伝法)の課題の検証が必要との認識を表明。プロジェクトチーム(PT)を立ち上げて議論する方針を示した。
高病原性鳥インフルエンザは今シーズン、15県36事例が発生し、過去最多の604万羽が殺処分された。……
2021年01月21日