与党農政に注文 公約順守し難局当たれ

 安倍政権の6年半を問うた参院選は、与党の勝利となった。だが、これは安倍晋三首相を強く信任した結果ではない。投票率は低迷し、1人区の接戦が目立った。自民党1強にともなう長期政権のおごりや弊害に対する農家の不信の表れで、農政公約を順守し、現場の意見に耳を傾けて難局に当たるべきだ。

 「勝ったものの謙虚に受け止めたい」。自民幹部は結果をこう受け止める。改憲を前面に掲げて論戦を挑み、自民、公明の与党に日本維新の会などを加えた改憲勢力で発議に必要な3分の2の獲得を目指した。東北など農村部が多い1人区には幹部を集中的に投入し、組織をフル稼働させた。それでも多くの選挙区で接戦となった。

 農協改革や米の生産調整見直しなどの改革や規制緩和。環太平洋連携協定(TPP)をはじめとする農畜産物のかつてない市場開放と、米国が早期合意を求める貿易協定交渉。農家の不信感を払しょくできず、不満がくすぶっていることが響いたとみられる。

 安倍政権は、自民1強と内閣人事局を通じた中央省庁の掌握により官邸主導の政策決定を推し進めてきた。その御旗には農林水産業の成長産業化や地方創生を掲げた。ところが人口減や少子化が農村部を直撃し、生産基盤の弱体化が進む。農地面積の減少にも歯止めが掛からない。生産現場の目線を忘れた強引な政策決定におごりやゆがみはなかったのか。現場に寄り添う姿勢で、農政運営を見直す必要がある。

 自民は参院選公約で、強い農林水産業に向けた産業政策一辺倒ではなく、「家族農業経営も含め地域の多様な担い手が活躍できる農山漁村を創る地域政策を、車の両輪として力強く推進」することを盛り込んだ。JA准組合員の事業利用規制の在り方については「農協組合員の判断に基づくものとします」とした。こうした公約をどこまで実行できるかが信頼回復の鍵となる。家族農業を含めた多様な担い手が活躍できる地域政策は、新たな食料・農業・農村基本計画にも反映させてもらいたい。

 立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党は32ある改選数1の1人区すべてで統一候補を擁立し、改憲や10月に予定される消費税率10%への引き上げには反対で足並みをそろえた。立憲民主など3党は戸別所得補償制度を公約の柱に据えるなど農政でも共同戦線を張った。だが、反安倍政権の票を集めきれなかった。巨大与党に対抗するには野党が結集しなければ勝てない現実が今回も示された。

 山本太郎代表率いるれいわ新選組がインターネット交流サイト(SNS)などで注目を集め、足がかりを得た。これは既存政党や今の政治への不信を象徴するものだ。見落としているものは何なのか。各党は声なき声に耳を傾けなければ次の衆院選で有権者から大きなしっぺ返しを食うことになる。
 

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