生き返る廃校 地域活性の拠点に 広がる活用5000校

教室で生ハムになる豚肉を熟成させる三浦代表(青森県大鰐町で)

 思い出の場所が生まれ変わる──。少子化や農村離れから毎年約400校の小・中・高校が閉校する一方、廃校を活用して新たな事業を開設する動きも広がっている。全国約5000の廃校が、福祉施設、加工場に生まれ変わっている。雇用創出、地域活性化の拠点として期待がかかる。(高内杏奈)
 

生ハム加工 木造で通風良好


 黒板の前に豚の骨付きモモ肉がずらりとぶら下がる。青森県大鰐町の旧大鰐第三小学校の廃校舎だ。(有)エコ・ネットが運営するおおわに自然村では、年間約100頭の豚を肥育し、教室を使って生ハムに加工している。

 三浦浩代表は「窓が多く、木造のため通気性抜群。教室があることで部屋が区切られており、工程ごとに場所を分けられる」とメリットを語る。1教室にモモ肉の塊200本(1本約10キロ)をつるして、熟成させる。

 教室の札は当時のまま残している。「参加者にどこか懐かしさを感じてほしい」(三浦代表)と考え、職員が使っていた「給湯室」は事務所に、「職員室」は冷蔵室にした。

 2016年に生ハムの本格出荷を始め、現在は年間500本に上る。県内の飲食店や東京のホテル、インターネットで販売し、売れ行きは好調だ。生ハム作りの体験会「生ハム塾」も開く。参加料は3万円を超すが、2年後には約10キロの生ハムが受け取れるとあってリピーターも多い。

 三浦代表は町に相談し、事業を提案。同町も廃校の利活用を進めていたため、建物は無償で提供された。「塾のための広い場所を探していたので廃校はぴったり。施設はそのまま活用できるため、初期費用を抑えられた」と話す。

 養豚の肥育業務3人、加工に1人の地域住民が働き、雇用の創出につなげている。
 

植物工場 農福連携 実現


 秋田市で農福連携を実践する障害者福祉サービス・スクールファーム河辺は、14年に廃校を植物工場に改修し、運営する。

 同市と大仙市の精神・身体・知的障害者ら26人が週5日、介護福祉士ら職員7人の支援を受けて花き・野菜の栽培に取り組む。

 教室は発光ダイオード(LED)で照らされ、バジル、エディブルフラワーなど10種類を通年栽培している。現在は年間約800パック (1パック 20グラム)を県内外のホテルや飲食店に出荷する。

 曽我祐一代表は「廊下が広く、階段に手すりが付いているなど、身体障害者が生活しやすい」と利点を話し、「卒業生が見学に来るなど、思い出の場として愛されている」と笑顔を見せる。

 11年に秋田市教育委員会が市内の廃校舎を有効利用しようと事業者を公募。障害者雇用を実現できるとして同法人を選び、無償で廃校舎を提供した。
 

閉校毎年400校 多彩に利用を 文科・農水省も応援


 文部科学省のまとめ(18年5月時点)によると、廃校になった全国の小・中・高校や特別支援学校で現存する施設は6580校。そのうち8割近い4905校が再利用されている。一方で残りは活用の用途も決まらず、放置されている。

 同省は廃校活用の利点として①初期費用が抑えられる②既存施設のため早期に事業を始められる──などを挙げる。
 

 10年からは、活用が決まっていない廃校と活用希望者のマッチングを行う「みんなの廃校プロジェクト」を展開する。ホームページで全国の廃校の位置や貸与・譲渡条件や各省の補助制度を掲載し、施設の活用事例集も作成。「地方公共団体と希望者のマッチングの役割を果たし、利用を進めていく」(施設助成課)。廃校のマッチングイベントを20日に東京都港区で開く他、19年度中に大阪府と福岡県でも開く予定。

 総務省や農水省でも、農業体験・生産加工施設への転用や農業者ら地域住民の就業の場の確保となる取り組みに対して、補助金制度を設けている。

 廃校利用のメリットとして、地域密着度が高いことも大きい。文科省は「地元住民にはもともとなじみがある場所。事業者にとっては廃校を利用しているということだけで宣伝効果が高い」と説明する。半面、地域に由縁のない事業者が廃校を利用する場合は、地元自治体や住民の理解を得ることが不可欠だ。

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは