国を守るということ 食、水、電気 支援急げ 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏

 千葉県南房総の知人から想像を絶する過酷な状況を聞いて、言葉を失った。早急な復旧を念じる。農林水産業の甚大な被害は、どうしたらいいのか、途方に暮れる。

 自分が何もサポートできないでいて申し訳なく、それでもあえて言いたいのは、この深刻な事態が十分に共有されておらず、こういうときこそ国が迅速に思い切った大規模な救援活動を展開すべきかと思うが、それが全く見えてこないことに、この国の危機を感じる。東京電力だけの責任かのように眺めている場合ではない。

 現地からは筆者のところにも、「牛乳工場が動いていない。搾乳できない農家、搾乳しても行き先のない牛乳、牛舎倒壊、牛死亡、廃業する農家。かなり悲惨です。国の対策室がいまだにないのでは?」「今現在も停電が続いて、満足に水も飲めない家畜の世話に奔走している農家が数多くいます。早くに自家発電を手配した農家も、せっかく搾乳した牛乳を集乳してくれず、廃棄している状況です。集乳車が来ないのにどこからも連絡が来ない。農家は憤りと不安を禁じ得ない」といった切実な声が寄せられている。

 国を守る、国民、市民を守るということは、米国から言われて何兆円もの武器を買い増すことで達成できるのではない。兵器・軍備の充実が国家安全保障ではない。このような緊急事態に、人々に食料、水、電気、その他のライフラインを迅速に確保できる安全保障体制、普段から、その基礎となる国内の農林水産業をしっかりとサポートする体制が問われる。そして何よりも、即座に動く意思がリーダーにあるかということが問われる。

 国民をごまかすのに労力を使っている暇はない。日本を米国の余剰穀物の最終処分場とするのが戦後の占領政策だったが、今回も米中紛争の「肩代わり」に米国穀物の大量購入を約束し、後付けで理由を探して国民向けに稚拙なごまかしを展開している。

 粗飼料用トウモロコシの害虫被害(実際には軽微といわれている)を理由に、単純には代替できない濃厚飼料の追加輸入で対応するのだと説明したり、上乗せの購入でなかったら米国が激怒するのは当たり前なのに、国民には「前倒し」購入で追加輸入ではないと言ってみたり、深刻な災害に直面し、そんなことに時間を費やす罪深さに気付くべきである。

 残念ながら、「今だけ、金だけ、自分だけ」は、日本の政治・行政、企業・組織のリーダー層にかなり普遍的に当てはまるように思われる。国民、市民を犠牲にしてわが身を守るのがリーダーではない。「わが身を犠牲にしても国民を守る、現場を守る」覚悟を示すのがリーダーではないか。真に「国民を、国を守る」とはどういうことなのかが今こそ問われている。現地の皆さん、頑張ってください。申し訳ありません。

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