和牛遺伝子 精液、受精卵流出に危機感 産地で進む保護対策 全国先駆け条例化 鳥取県

 和牛遺伝子の中国流出未遂などを受け、和牛産地を抱える自治体は不正流出の防止対策を強化する。国も、精液などの流通管理の厳格化を目的に家畜改良増殖法改正案を提出する構え。流出未遂では、国内の畜産農家が精液と受精卵の持ち出しを手助けしたことも分かった。和牛の血統を貴重な遺伝資源として、地域が一体となって管理・保護する取り組みが重要になっており、危機感も背景に自治体の動きが加速している。(鈴木薫子)

 全国で人気が高い種雄牛を抱える鳥取県は、国内初となる独自の保護条例を年度内に定める方針だ。8月下旬には県家畜改良協会が、県外から持ち込まれた繁殖雌牛に、県内で人工授精をした家畜人工授精師に対して、一定期間の精液譲渡の停止処分を下すなど、産地一体で保護を強化する。

 調べで妊娠牛は、県外へ出され、子牛を生産していた。同協会が家畜人工授精師と交わした譲渡契約に反する行為として処分。ただ、人工授精師は違反行為と認識していなかったとしている。

 今回に限らず、同県は、他県への遺伝資源の販売を認めていない県基幹種雄牛「白鵬85の3」などの受精卵や精液の県外流出を確認。個人が精液や受精卵を県外に転売した事例が見つかった。北海道や九州では同牛の産子が生まれ、種雄牛が誕生した事例もあった。

 「白鵬85の3」は2017年の第11回全国和牛能力共進会宮城大会で肉質が評価された。今年7月の県内市場の和牛子牛の1頭平均価格は97万円と全国最高値を付けた。

 今後、産出される種雄牛などの遺伝資源も流出すれば「子牛市場の優位性が下がり、県内農家の収益が下がる」と県畜産課は危惧する。

 保護条例の制定に向け5月に検討を始め、8月下旬に骨子案を示した。案では「白鵬85の3」など優秀な基幹種雄牛を「特定種雄牛」とし、精液と、同牛を使った受精卵の流通を県内に限定。精液と受精卵の所有者には使用報告書の提出を毎月義務付けるとした。罰則も定める予定で、来年2月の議会に上程し、今年度内に公布、施行したい考えだ。

 徳島県は、県内畜産農家が中国への和牛精液などの不正持ち出しの流出元となったことを受け、独自ルールを作成。県内農家を対象に、農場の所在地や精液と受精卵の購入元を県に届け出る内容を盛り込んだ。県産和牛のDNAが父牛と一致しなかった問題が起きた宮城県は、適正な人工授精業務の実施を定めた要領を近く制定する方針だ。

 国も取り締まりを強化する。農水省は20年度から「家畜遺伝資源管理保護室」(仮称)を設置する。遺伝資源の流通管理適正化や保護強化を担い、法制度と合わせ省内の体制を整備する。

 鳥取県和牛生産者連絡協議会の木嶋泰洋会長は「産地の財産である和牛遺伝子を保護することは農家の所得に直結する」と保護強化の必要性を訴える。
 

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