農村政策の検討 現場実態把握し丁寧に

 各省庁が取り組む中長期の地域政策の鍵は「多様な人材」だ。食料・農業・農村基本計画の見直しに向けて農水省も、農村の活性化に多様な人材を活用する方針を打ち出した。具体的政策に落とし込むには、現場の実態把握や分析を踏まえた丁寧な論議が必要だ。

 同省は10月末、基本計画を検討する審議会に農村政策の方向を示した。農業の多面的機能は、担い手だけでなく小規模農家や農家以外の人を含めた「多様な地域住民全体により支えられている」と強調。また、農村の活性化には「多様な人材を巻き込んだ地域課題の解決」などが必要だとした。

 内閣官房が担当する2020年度から5カ年の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の検討でも、いろんな形で地域とつながりを持つ「関係人口」などの人材育成を重視する。

 にぎわいのある農山村の現場では、従来の住民だけでなく、移住者や関係人口などさまざまな人々が地域づくりを進める。複数の仕事を組み合わせた「多業」で若者が生計を立てるなど働き方も広がる。こうした多様な人材を受け入れ、育む視点が地域政策には欠かせない。

 これまでは人口など数値だけを重視して地方の危機を強調する傾向があった。総務省の「自治体戦略2040構想」研究会が18年にまとめた提言では、高齢化率がピークとなる40年ごろには中山間地域などでは支え手を失い、集落機能の維持や、市町村によって行政サービスの維持が困難になると報告した。

 しかし、過疎・高齢化が進んでもにぎわいのある地域は各地に広がる。例えば、長野県北部にある飯山市西大滝集落は、住民は46戸86人で高齢化率は5割、20歳未満は2人だけだ。それでも、普段は地域の外で暮らす子どもが消防団を担ったり、移住者や地域のファンが祭りや運動会を手伝ったりして集落を支える。

 50年までの国土の姿と課題を考える国交省の審議会で、政策研究大学大学院の家田仁教授は「頭数だけの人口を基に将来予測するのはやめよう。人のぬくもりや関係性など、数字だけでは見えてこないものを大切にする時代だ」と呼び掛けた。貴重な提言である。

 基本計画の農村政策の検討で、多様な人材を重視する農水省の方針に共感する人は多いだろう。しかし、近年の農政は産業政策に偏り「田園回帰など農村で起きている実態の把握や現状分析といった基盤がない」との指摘がある。10月に中山間地域フォーラムが開いた研究会での野中和雄副会長の発言だ。国は重く受け止める必要がある。

 実態把握なしに、「多様な人材」「関係人口」といった言葉を並べるだけでは本質的な具体策にはつながらない。農村活性化の取り組みに役立つ実のある農村政策を示せるかは、現場を踏まえた十分な分析と議論ができるかにかかっている。
 

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