[あんぐる] いと“おかし” 金沢の正月菓子

正月菓子「福徳せんべい」の中には、金花糖でできた人形などが入っている。「落雁 諸江屋」では例年約10万個を作る(金沢市で)

 石川県金沢市では、新年の食卓を個性豊かな正月菓子が彩る。愛らしい人形やおみくじが入った米菓や、加賀藩前田家の家紋である梅の花をかたどったもなかなど、200年以上受け継がれてきた縁起の良い菓子が新春に花を添える。

 砂金袋や米俵、打ち出の小づちの形の皮を割ると、招き猫やだるまが顔を出す──。同市には「福徳せんべい」と呼ばれるこの菓子を、お年玉と一緒に子どもに渡す習わしがある。

 皮の材料は県産のもち米。中には金花糖でできた人形や、粘土を焼いて作った小さな人形など30種類のいずれかが入っており、何が出るかは開けてのお楽しみだ。

 江戸時代の1809年に、加賀藩12代藩主の前田斉広が、金沢城二の丸御殿の新造祝いに職人に作らせたのが由来という。現在は1849年創業の老舗「落雁 諸江屋」が受け継ぎ、毎年12月から1月にだけ販売する。太平洋戦争中には、金型を床下に隠して守り抜いた逸話も残る。

 同店7代目の諸江隆さん(60)は「昔はもらった子どもが正月に人形をすごろくの駒にして遊んだ。帰省する孫に買い求める年配客が多い」と話す。
 
加賀藩前田家の梅の家紋をかたどった「福梅」作りで活気づく菓子店。1917年創業の柴舟小出では従業員が次々と皮にあんを詰めていた

 同市には、他にも加賀藩前田家の家紋「剣梅鉢」をかたどったもなか「福梅」や、おみくじ入りの米菓「辻占(つじうら)」など、郷土愛あふれる楽しい菓子が多い。

 こうした文化が根付いたのは、加賀藩の藩主が代々、茶道を奨励したことが背景にある。茶と合わせる菓子が庶民にも広まり、季節の行事などに欠かせぬ存在になった。

 県内の菓子店約300店でつくる石川県菓子工業組合事務局の薮猶八さん(65)は「金沢では、正月に限らず菓子は欠かせない。四季を通して人々の生活に深く関わっています」と話す。(富永健太郎)

「あんぐる」の写真(全4枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます    

おすすめ記事

あんぐるの新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは