揺らぐ「安倍1強」 地方重視へ政策を正せ

 今年の政治は波乱含みの様相だ。相次ぐ不祥事で通常国会は冒頭から大荒れが予想される。長期政権のおごりが表面化し「安倍1強」の土台が揺らぐ。政権が推進する自由化、規制緩和にもほころびが見える。農業・農村政策をはじめ地方重視へ政策を軌道修正するべきだ。

 政治状況は、安倍政権発足後初めて「大乱」の予想が強まっている。こうした中、難局突破へ衆院解散、総選挙が年内にあるとの見方が出てきた。制約は7月から9月初めの東京五輪・パラリンピック。それを避け、早ければ補正予算成立後。または東京都知事選の6月18日告示、7月5日投開票を踏まえた衆・都ダブル選。最も可能性が高いのは五輪後だ。現在の衆院議員の任期である2021年10月21日まで残り1年の時期と重なる。

 さまざまな不祥事で国民の政治不信は募る。政治状況が54年前、1966年の「黒い霧事件」と似ているとの見方もある。当時の佐藤栄作首相は自民党幹事長の更迭などで難局打開を狙ったが、結局、同年暮れに衆院解散に追い込まれた。

 歴史の巡り合わせを思う。安倍晋三氏の大叔父に当たる佐藤氏は連続での首相在任日数が2798日で歴代1位。安倍首相は7カ月後の8月23日、この記録に並ぶ。子(ね)年は波乱の年でもある。今年は庚子(かのえね)に当たるが、前回の60年前には、安倍首相の祖父・岸信介氏が安保改定の騒乱の中で退陣した。420年前の1600年、天下分け目の関ケ原の戦いも庚子だったことから、「大乱」の政局を予想する向きもある。

 首相の力の源泉は、国政選挙連勝の実績だ。勝利は政権強化に直結する。野党の非力さにも助けられた。半面、権力のおごりが不祥事につながる。自民党内が“1強圧力”で単色に染まり、政策の幅も欠いてきた。典型なのが成長産業化を前面に出した農政改革だ。

 だがここに来て、改革偏重を軌道修正する動きが表面化してきた。20年度畜産酪農関連政策決定で中小農家への配慮を明確にした。中家徹JA全中会長は、今月の理事会後の会見で「20年度予算案でも中小経営農家や中山間地への対応が拡充した」との見方を示した。

 3月に見直し時期を迎える食料・農業・農村基本計画策定に関連し、江藤拓農相は生産基盤の強化や規模を問わず支援する内容を盛り込む考えを改めて表明した。一方、安倍首相は年頭会見で生産基盤重視に言及したが、農政改革の継続も強調した。軌道修正が本物かどうかしっかり見極めねばならない。

 政権は、生産現場で安倍農政への不信が根強いことを改めて認識すべきだ。JAなどを核とした真の地方創生を推進しない限り、政府・与党が掲げる「農政新時代」の実現は難しい。試金石は基本計画の行方だ。産業政策と農村政策の均衡、生産基盤の強化に支えられた食料自給率向上などを明確にすべきだ。
 

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