やぐら大根干し 後世に 日本農業遺産めざす 宮崎市田野町

干し大根作りに精を出す松山さん(宮崎市で)

 宮崎市田野町で「干し大根」の出荷作業が最終盤を迎えている。大きなやぐらを組んでダイコンを寒風にさらすのは、地域を代表する景観であり、食文化。JA宮崎中央や田野町商工会、県、市などでつくる協議会は「日本一の干し大根と大根やぐら」の日本農業遺産認定を目指した活動を強化している。(木村隼人)
 

作業体験で盛り上げ 大学生バイト農家に紹介も

 
 やぐらは、10月後半から農家が1週間かけて組み始める。JA干し大根部会で部会長を務める松山一男さん(62)は全長66メートル、高さ6メートルのやぐらを2基用意。結束機で2本1組にしたダイコンを12月から手作業で干した。1基に約2万6400本を掛け、通常は2週間ほどさらす。

 松山さんは「この時期は『霧島おろし』と呼ばれる北西の風が強く吹き、早く乾く。変色しにくく、味も凝縮される」と同町産の良さを語る。干し大根は選別した後、JA食品加工場で漬物などに加工する。

 今シーズンの干し大根は、1月後半の雨で出荷が遅れたものの味に影響はないという。部会全体では77人が1262トンを出荷する。関西地方の老舗料亭でも使われ、味は高く評価されている。

 南九州地域は都市部までの流通経路が長く、日持ちする加工食品の生産が盛んだった。同町も、昭和初期から戦後の一時期まで「千切り大根」を中心とする産地として発展。夏季は葉タバコ、冬季はダイコンを生産するなど、通年で畑地を有効活用した営農を続けてきた。

 
大根やぐらの全景(宮崎市で=「日本一の干し大根と大根やぐら日本農業遺産推進協議会」提供)
 
 1960年代から鹿児島県の大根やぐらを参考に、たくあん用の生産が始まった。風土に合わせて、鹿児島県がやぐらの片面だけに干すのに対し、両面に干している点が特徴だ。

 JAなどは「日本一の干し大根と大根やぐら日本農業遺産推進協議会」を2017年4月に設立した。大根やぐらを中心とした伝統的な営農体系を守っていくことが目的だ。遺産認定を機に、農業振興や地域の活性化も目指している。18年に初めて申請したが、かなわなかった。20年度、認定に再挑戦する。

 20年度は地域を巻き込んだ取り組みを強化する。既に地域の子どもたちに大根やぐらや漬物の文化を伝える活動を始めた。地元の小・中学校の児童や生徒による、干し大根の作業体験や漬物作り体験などが行われている。

 協議会の会長を務める、JAの栗原俊朗組合長は「大根やぐらの景観は後世に残すべき地域の伝統。国内外からも評価されている。JAも冬の重要作物である干し大根を作る部会を応援していく」と意気込む。

 協議会事務局の同市田野総合支所の担当者は「認定に向けて活動を強化すると同時に、伝統農法を守る支援もしていく」と話す。干し大根の作業は12月~翌年1月が繁忙期。労働力確保のため、市は宮崎大学の学生が開発したマッチングアプリを活用し、アルバイトとして登録した学生に農家を紹介するなど、農家と学生をつなぐ支援をしていく方針だ。


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