[新型コロナ] 持続化給付金「売り上げ実績なし」は対象外 はざまで立ち尽くす 開業目指し投資 回収の道険しく

夢を抱いて農家レストランを開業する予定の岡田さん。「国の支援もなく、どうすればよいのか」と訴える(兵庫県丹波市で)

 4月から農家レストランを開業する予定だった新規就農者や農家民宿を創業したばかりの農家らから、国の事業者支援「持続化給付金」の対象とするよう求める声が上がっている。開業前だと、給付金の条件となる売り上げの減少を以前と比較することができず、現状では支援を受けられない。6次産業化を目指し投資をしてきたが、開業が遅れて収入が途絶えた上に、給付金がもらえず、“制度のはざま”にいる状況だ。専門家からも「新規開業者を救う道を検討するべきだ」との指摘がある。

 1・2ヘクタールでブルーベリーや、トマトなどの野菜を作る兵庫県丹波市の新規就農者、岡田美穂さん(37)は新しいキッチンカウンターを前に、険しい表情で「この先、どうしたら良いのか分からない」と嘆く。

 西宮市に住んでいた岡田さんは3年前に、母の実家のある丹波市に移住した。農の魅力を発信したいと、農家レストランを起業しようと一念発起して計画を練り、4月に開業する予定で数百万円投資し、準備を続けてきた。ちらしも配布し、近所の人をプレオープンに招待していた。しかし、コロナ禍で、店は開くことができないまま。味が定着していない中でのテークアウトは「リスクがある」(岡田さん)と考えて実施していない。

 持続化給付金を申請しようと考えたが、開業予定だった人は対象外。レストランで計画していた月20万円の売り上げがゼロに。6月以降のオープンを目指すが、今後の集客も見通せない。岡田さんは「生活費にも困る状態。6次化に向けて動いていた新規就農の農家に支援の手がないのは、悲しい」と途方に暮れる。

 中小企業庁によると、「持続化給付金」は2020年3月までに創業している個人や法人が対象で、前年同月比などからの売り上げの減少額を上限とし法人は最大200万円、個人事業主は同100万円受給できる。農家や農業法人も対象だ。ただ、4月から起業した人や起業予定者は、売り上げ減の比較ができないために、対象とならない。同庁は「比較対象がないと難しい」と説明する。

 鳥取県琴浦町では地元住民らでつくるNPO法人が3月29日、かやぶき古民家を改修して農家民宿をオープンした。しかし、客はなく売り上げはない。国は1~3月の開業者にも対象を広げたが、3月に開業しても実績がなかったため、給付金の対象外。オーナーの金平坦さん(77)は「開業に1000万円近くかけた。従業員を雇っていないので実損はないが、せっかく準備してきたので、国の補償が少しでもあると本当にありがたい」と期待する。

 静岡県浜松市で農家民宿カフェを6月から仲間とオープンさせる久米ゆきさん(35)も「本当は4月にオープンする予定だった。前向きにみんなで乗り越えようとしていており、国の支援があればうれしい」と話す。
 

<ことば> 持続化給付金


 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外出自粛などの影響で売り上げが急減する事業者に対して、事業の継続を支える給付金。政府は当初対象外だった2020年1月から3月の新規開業者にも給付を認めるなど現場の声を受けて範囲を広げてきたが、開業予定者や創業したばかりの人、売り上げの基準が前年同月比50%未満の人らは対象外となる。
 

「救済策は必要」


 持続化給付金の対象外となる創業者らにも支給を求める声は、各分野からも相次ぐ。国会でも5月下旬、野党議員らが開業したばかりの対象外の人らにも給付するよう求めている。

 埼玉県草加市など、一部の自治体では創業したばかりで売り上げが元々少なかった人も独自に支援するなど、“制度のはざま”で苦しむ人への支援策を講じる。同市では創業間もない事業者らを対象に、50万円を支給する。
 

 中小企業に詳しい立教大学の山口義行名誉教授


 持続化給付金の支払いスピードが非常に遅いといった課題もあり、政府は危機に対応できていない。新規に商売した人に対しては前年同月比以外の比較基準で支援する必要があるが、同じ体制で審査するとさらに時間がかかる。窓口を別にして、まだ事業が本格的に始業していない人も救っていくべきだ。
 

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