熊本豪雨被害 農地原形とどめず 肩落とす農家「支援早く」

豪雨で山肌が崩れ大量の土砂が流れ込んだ水田(5日、熊本県芦北町で、染谷臨太郎写す)

 熊本県など南九州を襲った豪雨の実態が5日、次第に明らかになってきた。川からあふれた水と土砂で、住民の生活は一変。農地や農業施設に大きな被害が出ている。(木村隼人、三宅映未)

 芦北町田川集落。水稲農家、溝上秀明さん(78)の水田には大量の土砂が流れ込んだ。変わり果てた光景に、溝上さんは「どうしていいか分からない」と途方に暮れる。

 5日、田川集落の土砂崩れ現場では自衛隊などの救助活動が終わり、朝から地元住民らが道路の復旧作業を進めた。溝上さんはその様子を自宅前で見守りながら、作業前は「辺り一面が海のようだった」と振り返る。尋常ではない雨の音に異変を感じたのは、4日午前4時ごろ。まだ薄暗い中、濁った水が家の向かいにある水田まで迫っていたが、暗い中では危ないと考え、じりじりとしながら時間を過ごした。

 午前5時。明るくなって外に出ると、家の前の水田は水があふれていた。付近では山の斜面が崩落。住居が巻き込まれるという、信じられない光景が広がっていた。

 所有する1ヘクタールの農地は、全てに土砂が流れこんだ。「昨年から始めた有機栽培米の収穫を楽しみにしていたのに」。溝上さんと家族は肩を落とす。「支援があるなら早く助けてほしい」と訴える。

 芦北町内のイチゴ農家、高峰裕介さん(47)の畑でも、近くの川が氾濫。育苗ハウス10アールなどが冠水した。高峰さんは変わり果てたハウスを見て「これからだった」と唇をかむ。ハウスは今年5月に建て直したばかりだった。

 軒高2メートルの育苗ハウスは、水没寸前まで水が流れ込んだ。だが、ハウス内の苗は高床の台に乗ったまま残っていた。高峰さんは、泥をかぶった苗を見ながら「残ってくれるとは。できるなら助けてあげたい」とつぶやいた。
 

JA施設に土砂流入


 熊本県芦北町のJAあしきた本所では付近の佐敷川が氾濫し、1階部分に土砂が流入した。パソコンなどは泥水に漬かり、書類などが散乱。隣接するJA農産物直売所「ファーマーズマーケットでこぽん」では外にあった大型冷蔵庫が横転した。駐車場部分も土砂で埋め尽くされた。
 
氾濫した川の水や泥をかぶったJAあしきたの本所。窓口に設置した新型コロナウイルス対策のパネルも漬かった(同)
 
 同JAは5日午前、JA本所に災害対策本部を立ち上げた。管内の犠牲者に黙とうを捧げた後、まずは本所の内部や敷地内に流入した土砂の撤去を早急に進めることを決めた。さらにJA施設の復旧や状況調査、共済部門への対応を進めるためにLA(ライフアドバイザー)チームを稼働させることなどを確認した。6日から全職員で復旧作業をする。JAの千々岩巧組合長は「総力を結集し、諦めずに前を向き復旧に当たる」と力を込めた。

 JAくま災害対策本部は、5日朝から職員が被害状況を確認。前日断念していた人吉市などを巡回した。JA施設では斎場や農業用倉庫に流入した泥をかき出した。本店を含め、各支店では電話回線の不通が続いている。「安否や状況を確認する手段が限られている」(同JA)状況だ。

 JAやつしろ管内では、坂本支所付近に土砂が堆積している。詳細な被害の確認が困難な状況だ。同JAは6日、災害対策会議を開く予定。


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