特別な夏休み 本物の食農に触れよう

 子どもたちの元気な声が聞こえない。新型コロナウイルスの影響で自宅に閉じこもりがちになっていないだろうか。短い夏休みだが、熱中症に気を付けて野外に連れ出し、少しでも農業や自然に触れる時間を持たせてやりたい。

 農村はいつになく静かな夏休みを迎えている。例年なら親戚が帰省したり、海や山でキャンプを楽しんだりして学校生活から解放される頃だ。しかし今年は3月から臨時休校となり、授業が再開したのは5月中旬以降だった。文部科学省によると、休校の長期化で公立学校の夏休みを短縮する自治体は9割に上っている。

 登校できず不規則な生活を強いられてきただけに、成長期の子どもたちには心身への影響やストレスが心配だ。かといって旅行に出掛けたり、混雑する所に行ったりするのは避けたい。こんな時こそ野外で過ごす時間に充ててはどうか。インターネットやオンライン授業などでは体験できない自然観察に力を注ぎ、身近な生き物に目を向けてみよう。

 新型コロナの感染拡大で食農体験に影響が出ている。JAが率先して取り組んできた交流イベントや農業体験も「3密」になるとして中止に追い込まれている。現場では新たな食農教育の在り方を模索中だ。提案したいのが家庭での食農体験である。夏は生き物観察や作物を育てるのにぴったりの季節だ。田畑は植物の成長や虫との関係を体感できる教育の場である。子どもたちに農業に興味を持ってもらう機会と捉えたい。

 キュウリやトマトの成長を書き留めたり、野菜の葉に付いている虫はどんな種類なのかを調べたりできる。作業日誌に記録するのもいい。日誌を書くことで作業を覚え、経過を見つめ、植物の成長や虫との関係など畑で科学を感じ取ることができる。絵日記なら観察記録のように活用できる。知らない虫や植物を見つけたら、図鑑を持ち出して調べてみよう。観察し書き留める習慣は、他の教科にも役に立つ。子どもたちの農業理解や食べ物を見直すきっかけを大人が手助けしてあげたい。

 カブトムシ、クワガタムシは夏休みの定番昆虫だ。クヌギやコナラの雑木林を歩けば捕らえられる。朝早く起きて田んぼに行けば、水稲の開花の瞬間に出合えるだろう。周辺にどのような虫がいるかを調べれば、多くの生き物が支え合っている生態系に興味や関心を持つきっかけになる。

 収穫した野菜は子どもたちに料理を任せ、食卓を飾ってみるのもいい。新鮮な野菜のおいしさ、育てる苦労や驚きを家族と分かち合える。自前の畑やプランター、または野菜苗1本でもいいので、管理を任せると責任感が生まれる。食農・自然体験を積むことはその後の生き方や生活に影響を与える。夏休みは学校では学べない本物の食と農に触れる貴重な機会である。

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