豚熱発生から2年 終息への長期展望示せ

 豚熱の発生から9日で2年となった。予防的ワクチンの効果もあり、飼養豚では新たな発生が半年ほど抑えられている。ただ感染したイノシシが見つかる範囲は拡大を続けている。経営的にも精神的にも農家の負担は大きい。ワクチン接種の中止が可能となる状況など、終息への長期展望を政府は示すべきだ。

 8日時点での最後の発生は、58例目となった3月の沖縄県での事例だ。それを含め、殺処分は97農場で16万5000頭を超える。豚へのワクチン接種推奨地域に指定された25都府県の農場数は、全国の48%に当たる約2000戸。飼養頭数は40%の約364万頭にも上る。

 26年ぶりの発生が分かった2018年9月当時、これほどの影響を予想した人はほとんどいなかったのではないか。日本への侵入を警戒していたのは、その1カ月前、中国でアジア初の発生が判明したアフリカ豚熱だった。豚熱にはワクチンがあり、何よりも国際獣疫事務局(OIE)の認める清浄国として制圧しているはずだったからだ。

 しかし清浄国認定も、農家が家畜保健衛生所に豚熱の疑いを通報して2年となる3日の段階で失われている。貿易に関して政府は、2国間の協議により、豚熱発生による影響は少ないと説明する。とはいえ清浄国に対して輸出を促進し、非清浄国に対して輸入を拒む材料として、清浄国であることは重要だ。

 終息への道のりが不透明な中で農家は、ワクチン接種費用などのコスト負担に加え、豚熱と新型コロナウイルス両方の感染防止でかなりの緊張感を強いられている。行程表を示すなど、展望を見いだせる対応を政府には望みたい。発生農家の早期再建への支援も引き続き必要だ。

 今も不安要素はある。それまでの発生地域から遠く離れた沖縄県で1月、発生が広がった。食品残さが発端とみられる。厳格な加熱処理を再徹底しているが、どこで発生してもおかしくないと言える、疾病の恐ろしさを改めて痛感する出来事だ。

 関東では最近、家畜の盗難が相次いでいる。防犯カメラの映像を見ると、当然ながら犯人には防疫意識などあろうはずがない。しかも、盗まれた子豚は、豚熱のワクチン接種前の豚舎から連れ出されているようだ。それを考えれば、犯人が豚熱に感染した野生イノシシのふんに接していた場合など、農場が汚染されてしまうリスクがある。

 新型コロナの影響で人や物の国際的な動きが大幅に減少しており、アフリカ豚熱や口蹄疫(こうていえき)などの強力なウイルスが海外から侵入するリスクは下がっているように思われる。新型コロナの流行自体ももちろん望ましいことではなく、対応策が整備されれば再び訪日外国人が増加するだろう。

 今のうちに、農場の改修や消毒、着替えの手順など、これまで手を付けられなかった農場の防疫関連措置を見直し、強化しておくべきだ。

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