[菅農政 見直しか継承か](下) 解散風 鍵握る農村票 野党 受け皿示せるか

 65%(朝日新聞)、64%(毎日新聞)、74%(読売新聞)……。報道各社の世論調査で、菅義偉内閣の支持率は軒並み6、7割に達した。「今なら勝てる」(自民党中堅議員)。臨時国会を10月にも召集、日英経済連携協定(EPA)などを承認した上で解散する──。高い支持率を背景に与党内からは早期解散への期待の声が上がる。

 首相自身は新型コロナウイルス対応を優先し、解散には慎重な姿勢を示す。「(専門家の判断で)完全に下火になってきたということでなければなかなか難しい」。14日、党総裁選出後の記者会見ではこう語っていた。だが、政府によるイベントの人数制限緩和などを受け、「下火」を判断する環境が整いつつあるとみる向きもある。

 仮に解散となった場合、菅内閣の死角となりかねないのが農業・農村票だ。菅氏は「安倍政権の継承」や「規制改革」を前面に出して高支持率を得たが、この二つの言葉に農業関係者は敏感になる。安倍政権では、規制改革推進会議を通じ、「現場の意向を軽視した改革が多かった」(西日本のJA関係者)との考えが根強いからだ。

 直近2回の参院選では農村部を多く抱える定数1の「1人区」で自民党が苦戦。2016年には東北・甲信越9県で1勝8敗と大きく負け越し、19年も3勝6敗だった。今年は主食用米の需給緩和が懸念される中、同党農林議員からは「米問題への対応が選挙に直結する」との声が上がる。

 15年7月以降に11回行った日本農業新聞の農政モニター調査では、安倍内閣の農業政策を「評価する」と回答した人が3割を超えたことがない。

 しかし、野党の農業政策も浸透しているとは言い難い。直近の同調査(今年4、5月)で野党の支持率はトップの旧立憲民主党でも7・8%。「安倍1強」の背景には離合集散を繰り返し、批判票の受け皿になれなかった野党の失態もある。

 菅政権誕生と時を同じくして、もう一つの「選択肢」を目指し、旧立憲民主、旧国民民主両党などによる新たな立憲民主党ができた。枝野幸男代表は農政の対抗軸として戸別所得補償制度の復活を掲げ、米以外にも対象を広げる方針を示す。

 だが「聞こえはいいが現実的なのか」(九州地方の園芸農家)と冷ややかな見方もある。この7年8カ月、野党は同制度の対象拡大については予算面を含め、精緻な制度設計をしてこなかった。

 野党共闘にも課題を残す。新・立憲民主党に、野党農政を主導してきた旧国民の玉木雄一郎代表らは合流せず、新たな国民民主党を結党した。

 秋田県の農家出身の菅首相が「地方重視」も強調する中、政権奪取した旧民主党のように農村の支持を獲得できるか。野党にも政策や方針の「継承」だけでなく、「見直し」が求められている。
 

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